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大陸記~王国騒乱~  作者: 龍太
二章 道化師団
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休憩時間 東の戦い

「いやぁ。東部はいいですね。すぐに人が逃げていきますし」

「軽口が叩けるとは成長したものだな双子の妹」


 術式が雨のように振っていた。幸いなのはここが森の中で、周りに一般人がすでに居ないという事だろう。

 先ほどまで話していた者はこの出来事を伝えられない置物になっている。


「解体の旦那、それ現実逃避してるだけっす」


 兄の方が壁を作りつつ、術式を展開して相手へと放っているが、この状況なら足止めが目的だろう。

 判断は出来るものの、突破は難しい。その原因が二人と共に居るムーディルだ。


「どうせ我は動くつもりはない。奴の目的が足止めならば、向こうに襲撃をかけるのが前提であろう。ならばこちらも同じようにしていれば良い」

「そうっすけどね。向こうは平気っすかね? これ、もしかしなくても帝国騎士っすよ? 俺らに張り付いてるのが二人。事前の調査結果通りなら向こうに行ってるの五人じゃないっすか?」


 ウィニス副将軍とダラング、そしてヒロムテルン。その三人で五人の騎士を相手にするのは荷が重いだろう。

 一番の問題点はヒロムテルンが参戦すると二対一対五という構図になることだろうか。


「構わぬだろう。死ぬならその程度。我らとて遊んでいるわけではない」


 軽く術式を紡ぎながら本を読んでいるムーディルが言っても冗談にしか聞こえない。

 それでも片手間で防いでいるのは見事と言うほかないが。

 本気でやっても、おそらく殺すことは出来ないだろう。これでもムーディルは帝国騎士をなめているわけではない。

 ただ押しの一手がないだけだ。もしもルカかイニーがこの場に居ればやる気も出るのだろうが、居るのは双子のみ。


「罠としての術式は仕掛けておく。近寄られたらすぐに知らせろ」


 それだけ言って本へと没頭する。この場合、ムーディルがもしも捕まったときはムーディルだけは死なないだろう。死ぬ方を懇願するような場所が待っている。

 理解しつつここまで悠々としているのは頭の螺子が飛んでいるからか。それとも捕まらないという確信でもあるのか。内心を一切見せないその姿に、二人は少しばかり怯えながら今行なえる全力を出す。


「ウィニス副将軍たちが来るまで耐えるぞ!」」

「う、うん! 死にたくないし!」


 術式を展開し、相手の術式を防ぎながら特務と騎士は術式戦を行う。



 そして、他の三人は。



 死闘を繰り広げている。


「実力は中の上、だと言うのに連携の上手さは一級か! 寝る前に毎夜激しく互いの相性でも調べているのだろうな!」


 男の騎士二人が鎧の重さを感じさせない動きで剣を振るう。一人は横から、もう一人は上から。

 時間差のない一撃をウィニスは上から来た一撃を回避し、横から来た一撃を受け流す。

 遊んでいるわけではない。術式を展開しようにももう一人居る男が的確に邪魔をしている。そのせいで攻勢に回る機会が訪れないだけだ。

 更に、騎士の一人は単体で眼帯を外したヒロムテルンと対等に渡り合い、もう一人の騎士はダラングを術式で抑え込むのに徹している。

 僅か七人の部隊にしては、予想以上に洗練された実力者たち。

 それでも、特務が揃っていれば敵ではなかっただろう。ウィニスを二人で抑える手並みはなるほど見事だ。ヒロムテルンと対等に渡り合うのも賞賛に値する。ダラングを術式戦で抑えているなんて見る眼を疑う。

 だが、逆に言ってしまえばそれだけの戦力を費やさなければ抑えきれない事と同義。

 どこか一つでも欠ければその場で逆転が決まっている構図だ。

 後ろの一人が何かを行なったとしても、覆されるようなことにはならないだろう。


「意味なく遊び続けるつもりか帝国騎士! 肥満の兵たちとてしばらくすれば此処に来るぞ!」


 どこかで足止めされている三人のことを最初から除外して言葉を発する。すでに一般人は何人か逃げている。となれば駐屯している軍がこちらへ来るのが先だろう。

 曲刀を一振り。予備動作を伴わない瞬速の一刀は鎧を紙切れのように切り裂くだけで終わる。

 その隙を特務の面々ならば見逃さないだろう。しかし帝国騎士は見逃した。

 攻撃を行なうにも、どこか甘い。ならばこの状況、膠着状態こそが騎士たちにとって望ましいことだと言う証明になる。

 理由は何故か。


「ヒロムテルン・ドランクネル! 玩具を片付けられない子供か貴様!」

「死ね」


 声をかけると同時に三つの術式弾がウィニスの羽を破り、痛みに僅か眉を潜める。

 この状態で声をかけることが失策。攻撃を喰らうのは失態だ。今ので死ななかったのはヒロムテルンが目の前に居る騎士に苦戦しているからに過ぎない。

 おそらくこの場で最も強い騎士。隊長格なのは間違いがない。

 しかし、その騎士を捨石にするのほど策略があるかと言えば、否。


「すでに企みは費えたというのに、何故粘る?」


 東部の都市を破壊しようとした大規模術式陣はすでにウィニスらの手によって破壊された。解析については、すでに帝国騎士らが破壊に感ずいた時に七割以上が消滅している。

 こうなった以上、本来ならば逃げるべきだ。誰が考えてもそうするだろう。 

 だと言うのに逃げない理由。


「……私たちの実力を測るため、か?」


 口の中だけで呟く。精神系術式による干渉は後方の騎士によって潰されているため本当に呟くだけになっているが。

 実力を測るぐらいなら、ここで攻めればいい。そうすればダラングぐらいなら沈めることは不可能ではない。

 やや大きい被害があるだろうが。


「媚びて尻でも振っているのかダラング・ハーベー!」

「私はもう少し簡単に潰れた果実のようになる敵の方が自然に好きね」


 膠着状態を維持しながら、騎士たちは決して退こうとはしない。逃げた先には月へと上る階段が待っているとでも言うように決して退こうとしない。

 苛々としながらも特務は相手をし続ける。



 そしてしばらく経った後。軍が駆けつけた同時、帝国騎士たちは自殺した。


肥満の兵 …… 仮にルビを振ると ピラック共 とかになる。つまり鈍重で遅い無能者という意味。別にそんな事ないけど口が悪い副将軍。


帝国騎士との戦い …… 制限時間なくやるとすると最終的に特務が押してた気がする。



そろそろ書くスピードに投降が追いつきそうです。

単純計算あと三日ぐらいは持つと思いますけど。連日投降できない時はお知らせします。

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