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大陸記~王国騒乱~  作者: 龍太
一章 王都の戦い
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番外 とある特務の一日

本編とは全く関連性のない適当な思いつきです

「頼む、お前ら日記を書け」

「けったいな事言うな、しかもいきなしよ」


 夜になったばかりの時間、全員が集まった状況でリーゼが突如そんな事を言い出した。


「大変そうね、自然と。とりあえず私は研究があるから行かせてもらうわ」


 笑うこともなく出て行こうとする姿をリーゼは呼び止め、溜息を吐き自分も面倒臭そうな顔をして頭を抑えている、つまりこれは。


「はは、将軍からの命令でな、それぞれの活動内容を日記形式にしろってお達しだ。だからやらないと将軍が直々に来ることになるぞ」


 ぞんざいに手に持つ手帳を渡す姿にはどこか哀愁が見られるも。


「……文句の一つは許されるか、予測」

「首の一つでも置いてもらえれば嬉しいんですがね」

「ねーねー、日記って何書けばいいの?」


 のんびりとしたルカの言葉だけが清涼剤だろう、他の皆は苛ついた顔で手帳を受け取った。


「隊長さんにでも聞け」

「喧嘩腰になるなよ。ルカ、日記は一日にあったことを覚えてる範囲で書けばいいんだ。だから、ヒロムテルンの分は誰か代筆してやってくれ、俺は御免だ」

「……段階的に説明してくれれば皆も怒らないと思うけれど、とりあえずわかったよ。夜にでもディルに頼むとしよう」


 頷きながら言葉を返す姿は流石のヒロムテルンでさえ理不尽を感じているようだ。だが、しかしやらないわけにはいかない。


「いいけれどね。願いの一つでも書いて出しておきましょう」


 うめき声を上げる皆は部屋から出ていき、面倒そうにリーゼも手帳を広げ溜息を吐く。


「くそ、金貨の一つでも貰わないと割りに合わないぞこれは」

 ははは、という乾いた笑い声と共にリーゼは机の突っ伏すのであった。




 ―――――――――――――――――――――――――――



○月×日  リーゼ


 今日はシーツを干せばよく乾くだろうと思うぐらいにはいい天気だ。問題は返り血で濡れるぐらいだろう。折角の非番なので元親衛隊の双子に干させるとしよう。

 なお、暴行を受けていたアイルカウは無視した。新兵らしかったのでそれで正解だろう。後ろから聞こえてきた悲鳴も聞かなかった事にする。

 後で書く報告書に頭が痛くなる。

 砦内で生ゴミのような餌を摂取しているとダラングの姿が見えた。珍しいこともあるもんだ。新入りらしき男に声をかけていた。報告書について考えると頭が痛くなる。

 飯を食べ終わり部屋においてある本を幾つか読むつもりだった。おりよく聖皇国の空想本を買ったばかりだった。イニーの姿を一階で見かけた時点で外に出る事に変更する。理不尽である。後で書く報告書を考えると頭が痛い。

 外に出るとヒロムテルンの姿が見えた。眼帯を外していないのに俺に手を振ってくる。知覚が異常だ。次の任務から考慮して危険な場所に行かそう。

 街中を歩いているとハルゲンニアスを発見する。女を口説いていたので犠牲者が出る前にさっき買った果物を投げた。普通に取られたが女はどこかへ去ったようだ。中指を立てられたが気にしないでおく。どうせ放っておいたら朝帰りで報告書を書かされる羽目になる。俺が。

 雑貨屋に入れば暗部の気配があった。中を見てみるとムーディルの姿を見つける。微妙に鼻息が荒かったので気配を可能な限り殺して頭を殴り外に居たハルゲンニアスに渡す。報告書を二枚ほど書かなくても良くなかった、ありがたい。

 夕暮れまでぶらぶらと警邏ついでに歩き、幾人かの不良を殴り飛ばす作業を行なう。今日は厄日か何かだろうか。

 城に帰る途中でユーファと出会った。マスターの店で酒を飲み交わす。

 砦に戻るとシルベスト将軍に酒に付き合わされた。無言の空間の中、シルベスト将軍、ウィニス副将軍と三人で酒を飲むのは胃に悪い。

 しばらくして自室へ戻る。部屋の中には真っ赤に染まったシーツがあった。よく干されているようだ。本などは無事だったのを確認してシーツを投げ出す。

 明日こそは平和一日であればいい。




○月■日 アイルカウ


 今日は仕事でゲンちゃんと一緒に外へ出た。

 何人か殺して傷付けてもらった。嬉しい。

 帰り道は少し迷ったけど傷付けてくれる人がいたから少しだけお礼をしてあげた。ゲンちゃんが迎えにきて褒められた。

 そのままゲンちゃんとご飯を食べて砦に帰った。

 今日は楽しかったので明日も楽しいといいな。




○月○日 ハルゲンニアス


 煙草を買うついでに女を引っ掛けにいったが、運の悪ぃ事に覇壁と会った。今日はもう駄目だなこりゃ。仕方がねぇから夜まで情報屋どもに顔を出して時間を潰した。

 歓楽街でヤク中共を掃除しつつヤクを見つける。手を出すのも面倒くせぇから放置。

 城へ戻ったら陛下とすれ違った。相変わらずおっかねぇ方だ。視線だけで死ぬかと思ったぜ。

 砦に戻る途中でヒロムテルンの狙撃を避けて砦内に逃げてから屋上に行って殴って眼帯を付ける。

 リベイラの世話になったついでに酒を一本くすねた。

 部屋に戻ったらルカがベッドの上で寝てやがったから叩き出す。

 酒を空けてから横になる。

 明日も今日みてぇなクソったれの日だろうな。




○月▼日 イニー


 通路で掃除をしました。

 地下に降りて掃除をしました。

 隊長さんの部屋前で掃除をしました。




○月◆  ダラング


 適当に研究をしたのだけれど失敗もせず成功もせずね。自然と悪くない結果しか出なかったわ。

 中々論文も纏まらないのは困りものね。

 息抜きに数人を殺したけど中々面白い結果が出たのでそれも研究対象にしたわ。

 麻薬の中和術式に改良を加えて快楽を倍にする術式にしてみたけれど、中和術式でなくなった事は残念でならないわね。

 部屋においてある物も整理しないといけないのでどうしましょうからし、私は見ての通り自然に片付けが苦手なのよね。

 掃除用の術式なんか開発できないわよね。けれどそのための術式陣なんかは考える価値ありかしら。

 明日もこんな一日であれば良いわね。




○月□  ムーディル


 解体の極みを求めるために解体方法を記した物を書き始める。前回は三日で飽きたが今回こそは平気だろう。

 太陽がいつの間にか中天に昇ったが篭ることに飽きてきた。とりあえず外に出よう。先日は隊長に邪魔されたが今日こそはあの店の物を解体しようと思う。

 外に出れば日差しが暑い。倒れそうになる。

 だが我は解体をせぬばならない。

 そう思って気が付けばいつの間にかリベイラの病室にいた。後頭部が痛い。何が起きたのか理解できないのだが。

 こうなる前に暗部の影を見た気がするが気のせいであろうか。

 部屋から出たら夜だったので適当に小物を解体しながら部屋に戻る。灯火がやけに暑い。風邪でも引いただろうか。

 帰る途中でダラングと会い研究のことで意見交換をする。だが途中で口論となった。謎である。

 部屋に帰る途中で曲者が居たので解体しておいた。隊長の部屋前だったがよしとしよう。

 隊長の嫌がる顔が目に浮かび楽しみの極みである。



○月☆日  ヒロムテルン



 いつもの通りに屋上に行くと風が気持ちよくて僕としては思わず頬が緩んでしまう。

 今日は目隠しを外さずに風を楽しんでいました。すると後ろから目隠しをとられまして。眼を動かしてそちらを見れば見ない顔だ。僕はとりあえずそいつを射殺して庭を歩いていた隊長を試しに狙撃してみる。見事に腕に当たった。

 ついでに足を狙撃しようとしたら後ろから蹴りを入れられた上に炎術まで放たれた。

 ようやく目隠しをされて僕は元に戻った。中々良いことだと思います。

 蹴りを入れてきたのはリベイラさんでした。この人は中々どうして勘が鋭いというかなんというか。死の匂いに敏感なのでしょうか。

 夜になるまで屋上に居ましたけど大したことはありませんでした。

 とりあえずは今日も良い一日でした。隊長の不運は残念ですが仕方がないと思っておきましょう。





○月△日 リベイラ


 今日は患者が多かったわ。特にナイフで傷つけられた人や、腕が折れてた人、身体に穴が開いてた人が多かったわね。治療がいはそれなりにあったというところかしら。

 あと久しぶりに街に出たわ。医薬品の元となる物を補充。ついでに雑貨屋によってきた。それぐらいといった所かしら。

 そういえばハルゲンニアスが女と一緒に居たわね。私の目からは男にしか見えなかったけれど。

 隊長は……どうにも胃が荒れてそうだったわ。後で薬でも処方しておきましょう。イニーは最近欲求不満みたいでよくナイフを振り回すので誰かに監視させましょう。

 ルカの傷はいつも通りだけれど薬の頻度を減らすことに決めたわ。無駄なものは切ろとのお達しも出たことだし。

 ヒロムテルンは……適当に殴っておけばよいわね。それで死ぬ確立はゼロに近いのだし。

 ダラングとムーディルの二人は常に健康だから私の出る幕がないわね。

 夜も患者は多く中々充実した一日だったわね。

 明日も皆が健康でありますように。


日記に入るまでは遊び心でしりとりやってみました。

地の文まで使ったのですが、いまいち良い出来ではなかった気がします。


会話分だけしりとり的なものでも今度書いてみようと思います。

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