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大陸記~王国騒乱~  作者: 龍太
一章 王都の戦い
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舞台裏(エピローグ)

 夜中。リベイラは急患が出たという事で病室から出ていったために此処に居るのは一人だけ。

 棚の裏に首だけで生きている人間が居るのは知っているが、特に何もしてくる事は出来ないので構わない。しかしやけに肌寒さを感じるのは気のせいか。


「……? こういう日には何か起きそうなもんだが」


 警戒のために剣へと手を伸ばし、横にある土が入った袋を確かめる。もしもの事があろうとも数秒程度なら生き残れるだろう。

 病室でも気を抜けないのは八軍の風潮だと考えれば悪くはない。


「やけに肌寒いな」


 背筋が粟立つような緊張感。何も起きないはずだと言うのに直感は警鐘を鳴らす。

 だが死が迫っているような感覚はない、ちぐはぐな状況。

 夜が明けるまでなら緊張状態を維持し続ける事は容易いが、可能な限り疲れを残しておきたくはない。


「炎なら幾らでも点けるが」


 意識を逸らしたわけではない。瞬きをしたわけではない。

 だと言うのにその男は目の前に当然のように存在していた。


「冗談だ。墓碑職人。王国という名の舞台に返り咲いた事に祝辞を示そう」


 全身に火が回っているような焦燥感。見えない手に掴まれているような圧迫感。


「代替可能だとしても貴様は再び舞台に立った。一度、妬みを嫌い降りた男とは言え素直に感心する。死者を背負う墓碑職人、精々派手に動き世界という名の舞台へ上りつめろ。それが貴様にとっておそらく、最善だろう」


 この男が、いや。この方が存在するだけで世界が乾燥し暗鬱に包まれる。

 だと言うのに、威圧も圧迫も焦燥もあると言うのに。

 決して死だけは予感させない不気味な存在。


「国王、陛下」

「道化。山脈。夜。信奉。血。お前はどこまで見通せるだろうか。俺ですら見通せない先まで見通す事が出来るか」


 緋色の髪は燃え盛る炎の如し。瞳は血のような紅色。二十台半ばに見える容姿は同じ人間かと思える程に整っている。

 しかし皮肉気に歪められた口元が、全ての生物を格下だと思っているかのような眼が、何百年も生きいる事を感じさせる貫禄が、端正な容姿をして近寄り難い雰囲気を纏わせる。

 国王にして二十座が七座。持て余す憂鬱と詩人に評された炎王ファジル。


「どういう」

「二年。それがお前に許された時間だと思え。その間に俺は三度動く事になる」


 三度。これは、何か、俺の手に余る事だ。

 許された二年以上に、陛下が動かざる負えない事態が起きる。それは確実に俺の手に余る。


「いったい」

「今回の件は保留とする。功を掴め」


 ふっと蜃気楼のように姿が掻き消え、感じていた全て無くなる。

 背筋の冷たさも、乾燥した空気も、全てが夢であったかのような現実。

 事実であった事は全身に浮かぶ汗が証明している。


「……あれは全部見透かされてたな」


 実質、アインスベを唆したという事実も。

 今回の件で不都合を処理したかったという裏も。おそらくは他に手を伸ばしている事も。

 全てを見透かした上で許した。

 言うならば情報を流したニアスを知った上で放置していたリーゼと同じように、国王もまた全てを知った上で泳がせていたのだろう。


「見通すことが出来るか、ね」


 国王がリーゼに望むのは重い。実力ではともかく、先を見通す事だけはあの国王を越えるという事。

 知っている限りでも百年以上を生きている存在を前にそれ以上を予測する。

 可能だとは思わない。しかしやらなければ――


「灰の月へ登ってる気分だな」


 登った所で待つのは死、戻ろうとした所で登る道は崩れている。

 生き残るには突き抜けるしかない。

 理性は不可能と告げている。思考は生き残る保険を考え続ける。

 本能は逃亡を促し、心は諦めを示す。

 無意味だと知りながら足掻くのは意志か、それとも遺志か。


「……努力はするか」


 可能な限り生きるため。

 生きて死者を継ぐため。

 継いで、その後に――



 何も残らないとしても。



二十座が七座 …… 十座が七座と呼ばれることもある。一~十までが一区切りされるレベルの強さ。十一~二十でまた一区切り。二十人以上居る。また数字の数で強さが決まっているわけでもない。二十座と呼ばれる者が二座を妥当する可能性も普通にある。ここら辺の強さになるといかにして相手の強さを下げるかの戦いになってきてしまう。


持て余す憂鬱 …… 十座が七座。術式を組み上げる速度とパターンの多さは大陸でも最高峰。得意術式は四大術式と呼ばれるものを除いたほぼ全て。特務が全員で当たっても数秒で殺さずに無力化することが出来るぐらい強い。ここらの戦闘シーンは書きたくない。




というわけで一章、王都の戦い終了いたしました。


読んで下さった皆様ありがとうございます。分かりにくいところや何でこうなったん? という所は多分にあると思いますが、大体は文章力の不足です。文章力たったの5、ゴミめ。とか言われちゃうかもしれませんね!


この後はちょっと気楽なノリで書いた番外編を2、3個投稿してから二章に入ろうと思います。


二章は目算で4分の1程度しか進んでいないので、投稿が遅くなると思います。


とは言え11月17日か18日の0時には投稿の方を再開しようと思ってます。


書いてる部分までいったら更新速度は三日に一回とかになると思いますが、気長にお待ち下さい。


あとは一章についての感想的なナニカでも後で活動報告に書いておきます。

それではここまでお読み下さってありがとうございます。

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