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大陸記~王国騒乱~  作者: 龍太
四章 最後の夜
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22話 そして舞台は次へと移る

 暗い部屋の中に二人の男が居た。傍にある麻袋には先日死んだ女、ダラングの首が入っている。


「よく見つけたものだね、君も。後でも付けられたかな」


 片方の男は道化の仮面を付けている。この世の全てを嘲笑するような。この世の全てを嘆くようなどこか歪な仮面。

 そして片方の男は縛られていた。ありとあらゆる術式で。鎖と縄で。


「いや、何でバレたんですかねぇ。ほら俺の変装を見分ける術なんてないはずなんですがねぇ。口調とか雰囲気とかですかい?」


 縛られる男の名はキーツ。リーゼの予測通り、シルベストの推測通り、ヲルトルを殺しダラングの首を持って帰還した男。

 決して誰かに気づかれるはずがないと意気揚々ともぐりこんだキールは、即座に捕まった。恐ろしいことに、二人の血族により。


「計画を知る彼は彼女の首を持ち帰ることはしないさ。そもそも、従者たる獣を失い逃げ帰るような柄でもないからね」


 失敗したなと内心で考えるがキーツは笑顔を崩さない。これ以上の失態を演じるわけにはいかないというように。

 生きて帰れるなど、思ってはいないが。


「さて。計画はもう佳境に入っている。後一押し、いいや、最後の一欠片。それを手中に収めれば、世界は変革される。もしかするれば、私の思いも成就する、かもしれない」


 軽い口調で、どこまでも気安く、道化は語る。声に感情はこもらない。声から何も感じられない。前に一度会話をした時はもう少しは感情があったと疑問に思うも、その答えを得ることは出来ないだろう。


「君も出来れば私たちの同志となって欲しい」

「目的によっちゃ、考えますよ」


 決してその気ではない言葉に、道化師が笑った、ような雰囲気があった。

 おそらくそれは気のせいだ。気のせいなのだろう。しかし。


「確かに、平等ではないからね。私たちは――世界に幸福を齎す」

「あ?」


 思わず素が出てしまう程に不釣合いな言葉だった。思わず笑いが漏れてしまう程に愚かな言葉だった。

 幸福などと、そんなものはこの世にないと言うのに。


「私たちは世界の不幸を刈り取る。そのために君の力を貸してくれるのならば、嬉しいのだが」


 キーツへ腕が伸ばされた。

 伸ばされて、しまった。

四章『最後の夜』これにて終了。

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