亡霊6
「やれやれ、何時から気づいていたんだ?」
髭の男はコーヒーを音を立ててすすり、レイラに聞いた。
「ドーナツ屋でだな。車に戻った後、
買い物のメモ用紙にアンタ達につけられていることを書いておいて、
それをマーレンさんに渡した、それだけさ。」
「ふふっ・・・新しい車の模様、なかなかに気に入ってるよ」
髭の男はドアがボコボコに凹んだ車を指差し再びカップに口をつけた。
「どういたしまして、それで仕事というのは・・・?」
レイラが聞くと髭の男の隣に座っていた若い男が写真と、
小さく折りたたまれた地図を机の上に出す。
写真には、茶髪で7、8歳くらいの女の子が海辺で麦わら帽子をかぶり、
満面の笑みでこちらを見ている。
「この女の子は、俺たちのボスの娘だ。君たちに頼む仕事は、
この女の子を敵の組織から救出してほしい。」
そういうと若い男は写真と地図をレイラに渡し、
コーヒの香りを嗅いだあと一口飲んだ。
「なるほど、誘拐か・・・」
「そういうことだ。敵のアジトはここから1Kmほどの隣町にあるビルで、
警備は厳重、武装もしている。我々では救出することは困難だ。
そこで有名な君たち、「幽霊と天使」に仕事を頼むことにしたんだ。」
若い男がそう説明した後、隣の髭の男がポケットから紙とペンを取り出すと、
その紙に数字を書き込んでいった。
「報酬はこんなもんでどうだ?」
髭の男はレイラにその紙を渡す。
紙には、先程受け取った報酬の約2倍の金額が記されていた。
「・・・悪くない金額だな、引き受けさせてもらう。」
「そうかい、それじゃよろしく頼むよ。
今うちの組織は混乱していてね、統制がとれてないんだよ。」
髭の男は煙草をポケットから取り出したが、
店の壁の禁煙マークを見つけ溜息をつき、煙草をポケットに戻した。
「なんせ、さっき俺たちのボスが敵の組織に殺されたんだ。
胴体を真っ二つにされてね」
そういうと髭の男は、生温くなったコーヒーを一気に飲み干した。