一話 俺の義妹
ある日、俺に妹が三人できた。
「わー、あれかわいいー」「......」「...なに?こっち見ないでくれる?」
一人は中学三年、一人は高校一年、一人は俺と同じ高校二年である。
名前はそれぞれ水狗、葵、紫水という。ちなみに俺の名前は一家常。
なぜいきなり妹ができたのか、それは少し前の出来事だった。
◇◇◇◇◇
「お父さん再婚することにしたゾ」
その一言が始まりだった。
「いきなりだな」
「何事もいきなり起こるものさ(`・ω・´)」
なんだこの父親気持ち悪い。
「相手は?」
とりあえず尋ねてみる。
「美人さんだ」
「いや、そういうことじゃなくて」
というか真っ先にそれが出てくるあたり第一印象顔かよ。
「相手はシングルマザーだ。一応向こうの子《《たち》》にはすでに挨拶は済んでる。」
「俺なにも聞いてないんだが...」
「言ってないからな!はっはっはっ」
「...(눈_눈)」
「やめて、そんな顔でお父さんのこと見ないで。愛想つかさないで。」
「お前は女か!」
父親?これが?本当にこんな奴の息子だということに驚きを隠せない。
「というかいいのかよ、あれ。」
俺は仏壇の方を指さす。そこには一つの写真が飾ってあった。
「あぁ、お父さんは決心したんだ。このままじゃダメだってな。それにこれじゃ母さんにも顔向けできねぇしな。はっはっは」
表面上笑っているがそんなことはないのだろう。
...俺が小さいころ母親が死んだ。
小さいころ言っても小学校高学年だったはずなので、物心はばっちりあり、顔も覚えている。
あのとき俺は泣いていた。目の周りが赤くなっても、涙が枯れても泣き続けていた。
父親はそんな俺を優しく抱いて大丈夫と言い聞かせていた。
今思えばあれは俺に向けたものでもあり、父親自身にも言い聞かせていたのだろう。
だから今、この父親は大きな一歩を踏み出そうとしている。
「で、だ。常、お前に確認を取りたくてな。」
「何を」
「いや、再婚していいかどうかだよ。一応息子の意見を尊重しようと思って。」
「俺相手知らないんだけど。」
「一応だって言ってるだろ?」
息子の意見を尊重するとはなんだったのだろうか。
そんなことを思うが今から見に行くのはなんだか気が引けるし、今更再婚ダメだなんて言えないため。
「...好きなようにしろよ」
とそうつぶやいた。
それからとんとん拍子に話は進み、無事再婚も果たした。
一つ言えることは、結婚相手がほんとにとてつもなく美人だったことだ。なぜこんな父と結婚してしまったのか不思議でならない。
そしてそのときに初めて知ることになる。再婚相手のシングルマザーに三人の娘がいるということを。その三人が俺の妹になるということを。
「え、えっと、よろしく、ね?」
俺はぎこちなく挨拶をする。
「よろしく!ときお兄ちゃん!」「...」「...よろしく」
三人中二人が返事を返してくれた。
...上々じゃないだろうか。
「それじゃお父さんたちは用事あるから」
するといつの間にか玄関にいた父親が新母親を連れ家を出た。
「ちょ、おい!」
俺のそんな静止の声を無視して。
「.........」
それから少しばかり虚無の時間が流れた。
誰も一言も発さず、動きもしない。まるで静止画だった。
そんな中一人が動く、
「私、部屋に戻ってるから」
そう言ったのは先ほど返事を返してくれなかった、葵である。
葵は表情を一切変えず、真顔のまま部屋へと戻っていった。
「「「...」」」
またも虚無の時間が流れる。
「ちょ、ちょっと、」
すると三人の中で一番大きい紫水が話す。
「あんたのことはあの父親から聞いてる。それであんた、私と年同じらしいじゃない。なのになんであんたがお兄ちゃんになってるのよ。」
「んなもん俺の方が誕生日早いからだろ。ちなみに俺は7/2」
「はぁ!?私7/3なんだけど!たったの一日違いじゃない!私にお姉ちゃん譲りなさいよ」
紫水は声を荒げながら訴えてくる。
「やだよ。それに双子なんて先に出てきた方から兄、弟の順がつけられるんだ。それと比べてみろ」
たったの一日というが、24時間の違いだ。たったのなんて言うべきじゃない。
その時間で働くことができるし、趣味に使うこともできる。
「うぅ、なんだか癪に障るやつね。もういいわ、部屋に戻る。水狗もこんなやつ相手にしなくていいわ。」
そうして紫水も部屋へと戻る。
リビングには俺と水狗だけが残った。
「...」
「な、なぁ」
「...」
「み、水狗?」
「...」
俺は水狗に話しかけるが水狗の視線は窓の外を向いていた。
特に気を引くようなものはないはずなんだが。
「何かあるのか?」
俺は優しくそう尋ねる。
「んー?何も?」
そうして水狗は部屋に戻った。
「...何をしたかったんだ?」
考えてることがわからない。
紫水と葵はおそらく思春期とかそういうことだろう。だが水狗の行動についてはよくわからない。
「俺の知らない何かがあるようにしか。」
つい最近までは赤の他人、だが今は家族であり、俺の妹だ。俺にはそれを知る権利がある。
「...父さんどうにかしてくれよぉ」
そうして俺の妹と仲良くなろう大作戦が始まった。