第4話 邪竜さんに魔王にされた件~邪竜さんカッコいいし、みんな優しいしまぁいっか……
「では行くぞ」
「はい……って、えぇ???」
なぜお姫様抱っこなの?
これならさっきのドラゴンさんの姿で背中に乗せてくれた方がよくない?主に私の心的に!?
近い。近いよドラゴンさん!
カッコよすぎて私の心、もう死にそうだよ?
到着まで保たないよ?
そう思ったのも束の間、気付けばなにかお城みたいな場所の広間にいたの。
えっ?転移?
ここどこ?
「ここは我の城だ。君が人間のようだったからいずれ迎えに行くときのために作らせたんだ。人間はこういうのが好きなんだろう?」
「えっと、ありがとう」
敷き詰められた大理石。
ふかふかな絨毯。
趣のある柱に、天井の絵画。
中央にはまさに玉座と言うべき豪華な椅子。
各所に施された飾りや意匠はとても美しく、夢のような場所に仕上がっていて、『えっ?誰が作ったの?』という驚きでいっぱいだった。
「今はまだ少ないが、君が戻ったんだ。すぐに魔物で埋め尽くされるようになるだろう」
「はっ?……はぁ……」
そもそも私、なんで人間世界にいたの?
いや、人間みたいだったからって言ってたわね。
あと私の中で"魔"の力が成長したとも。
もう十分になったから来てくれたの?
あの森でどうやって探すつもりだったの?
普通あんなところに私みたいにか弱い女の子は入らないよ?
って、なに?……
「君が可愛らしく育ってくれて良かった」
なにキスしてるの!!!?
私、ヘンリー王子からは平凡顔ってずっと言われてたんだけど!?
って、なにキスしてるのよ!!!?
あなた育ての親とか、親の親友とかそう言う立ち位置なんじゃないの?
「戸惑う顔も可愛いな。まぁ、君はここでゆっくりしてくれればいい」
「はぁ……」
これって囲われたってこと?
そういえばドラゴンには光るものとかを集める癖があるって聞いたことが……。
「もちろん、何かしたいならしてもいい。君がいた国を亡ぼすとか」
「いや、いらないです。しなくていいです」
「しかし君は酷い扱いを受けた。邪悪な聖属性を埋め込むなどと。許せん」
なにか私とは感覚が違うんだと思うけど、ドラゴンさんは怒っているようだった。
それでも滅ぼしてほしいとは思わない。
それをやってしまうと、今まで助けてきたことすら全て無駄になるから。
「その……王族や神殿に思うところはあるけど、一般の人たちのために働いていたし、感謝もされていたから」
「ふむ……。では、その二つを……」
「いいからね?そんなことしなくて」
「わかった。ではなにかやってみたいことがあるか?」
「えっと……」
そんなに近寄らないで欲しい。心が乱されて考えられなくなるから。
自然に抱き寄せるとか、このドラゴンさん、どういうつもりで?
「来たばっかりでまだ考えられないなら、時間はあるのだしゆっくりすればいい」
「はい。そうさせてもらえると嬉しいです」
「そうか。では、部屋に案内させよう。おい!」
「お呼びでしょうか、クラウヴェルク様」
「魔王の娘、エリーナ様だ。丁重におもてなしせよ」
「わかりました。不肖アゼル、誠心誠意お仕えいたします。おぉ神よ。この身にまた魔王様にお仕えする栄誉を賜るとは」
「うむ」
そうして案内された部屋でくつろがせてもらった。
人間の王城のようにお付きの人たち……いや、モンスターなのかな?あまり外見が変わらないからよくわからないけど。
「君のために人や人と見た目が近いものたちを用意している」
えっと、モンスターはわかるけど、人はどうやって採用したの?怖くて聞けない。
「あと、君の力を感じているのか、続々と集まってきている。楽しみだな」
なにが?ねぇ、なにが楽しみなの?
あれだよね。人間世界に対して宣戦布告だ!ってやらないよね?
それに私は魔王の子であって、魔王じゃないよね?あんまりたいした力ないよね?
なのになんでこの城の人たち、みんな私に魔王様って呼びかけてくるの?
怖いんですけど!ねぇ!?
そんな風に戸惑いながらも、実際は居心地がよかった。
あぁ、私って本当に魔王の子供なんだなと実感した。
魔王じゃないよ!?そこを曲げるつもりはないけど。むしろドラゴンさんこそ、魔王と言っていいんじゃないかな?
そしてドラゴンさんが私の部屋に入ってくる。
……それは別にいいんだけど、入ってくるなり抱きしめてキスして体のいろんなところを障るのはちょっとやめてほしい。
顔を近づけてくるのも……。
私の平穏を乱して楽しいわけ?
「報告だが、すでにかつての勢力を超えたようだ」
「はっ?」
「君の力が素晴らしいからだな。ここにいてくれるだけで慕われているし、モンスターの力が増しているようだ」
「はっ?」
「あと、君がいた国だけど、聖女の力を操っていたということで王家が打倒され、神殿も解体したらしいぞ?まぁ、噂を流したのは我だが」
「はっ?」
「君が人間世界を滅ぼそうと思っていないことは知っているからそれをやるつもりはない。でも、ここは君の居場所だし、君を慕うやつはたくさんいる。ここで一緒に暮らそう」
「はい……」
こうして私は超かっこいいドラゴンさんと一緒に末永く暮らしました。
めでたしめでたし