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家政婦の私、『部屋のおそうじ』と勘違いして『Sランクモンスターの掃除』を引き受けてしまいました……。

作者: シマッシマ

とにかく掃除がしたい。

そう思った私は、掃除の依頼を片っ端から調べた。


私の特殊能力(掃除という単語だけ光って見える力)を駆使し、ギルドのボードから全ての掃除依頼を集めた。


「馬小屋、パン屋、トイレ……なんか違う。報酬の量は関係ないんだよなぁ……」

「嬢ちゃん、何を探してるんだ?」

「お掃除の依頼を探しているんです」

「へぇ、その若さで腕(戦闘力)に自信があるのか!いい事じゃないか」

「ありがとうございます!小さい頃から鍛えてますから(掃除スキルを)」

「ならこれなんかどうだ?……なんてな、冗談だよ」


そう言って私に見せてきた紙に目を当てる。

チラッと見えた『王宮集合』という文字。

即決だった。


「私、その依頼やります!」

「『かなりの量なので覚悟しといてください』らしいが……本気か?」

「逆にやる気が湧いてくるってもんですよ」

「がっはっは、そこまで言うんなら止めねぇ。頑張れよ」


私は早速その紙を受付まで持っていくと「誤字や脱字がありましたか?」と質問された。


「いえ、この依頼受けたいのですが」

「は!?……あーーし、失礼。この依頼にはランクの証明書が必要ですが……」


やはりな、と思った私はすかさず取り出した。

お掃除用ランク証明書を。


「え、え……全てSランク……依頼達成率100%!?評価S!?」


その声を聞いた隣の受付嬢の「その子、一度見つけたやつ(汚れ)は絶対に見逃さないタイプで、人当たりもいいから評判なのよ」という言葉がとどめをさし、依頼の許可を得た。


「日程は1週間後。王都の正門にいる兵士に『掃除の依頼をしにきました』といえば通してくれます」

「わかりました!」


私は基本暇なので、日程なんて関係ない。

それに、依頼内容に対して報酬の量が見あっているかも関係ない。

私はただ、掃除をしたいだけなのだから。


「早速王宮に行く準備をしなきゃ!」

面倒くさがりの私が詳細を確認することはなかった。



◇◆◇



王宮にて。


マッチョ、マッチョ、ゴリマッチョ。


え、なんで?力仕事がメインだった?


「嬢ちゃん、まだ若いのによくこの依頼を受けようと思ったな。さては訳ありか?」

「私はただお掃除が好きなだけですよ!」

「がははは、そういう狂ってるやつ大好きだぜ」


楽しみだなぁ、こんな頼もしそうな人達とお掃除ができるなんて。


20代ぐらいのイケメンが前に立ち、場を仕切り出した。

あの人がリーダーか!清潔だなぁ、きっとお掃除もうまいんだろうなぁ。


「今回は危険なミッションだ。こちらから相応の装備を出そう」


彼はそう言って王家の剣と鎧を並べた。


多分高いところも掃除するんだよね!だから落ちても大丈夫なように鎧を用意してくれた。うん。きっとそうだ。

剣はあれだよ、いらない物を解体するために使うんだよ。


私達は馬車に乗せられた。

「え、王宮の掃除じゃないんですか?」

「王宮のどこにモンスターがいるってんだよ」

「モンスター?」


汚れのことを『モンスター』って表現をする新種のタイプだろうか。個性があって好きだよ。

考えてみれば確かにそうか。王宮はメイドさんが毎日掃除してるだろうし、わざわざ外部の人間を使う必要はないよね。


じゃあ私達はどこに連れて行かれてるんだろう?

ま、到着したらわかるか。それまで暇だし、近くの家政婦さんと雑談しとこ。


「今日はよろしくお願いします!掃除って気持ちいですよね!」

「お前さんわかってるじゃねぇか。最初は見渡す限りウロチョロしてやがるのが、片付いた後には綺麗さっぱり姿を消す。あの感覚が癖になるんだ」


すご!この人きっと、雑菌を肉眼で見る事ができるんだ!


「すごい実力なんですね!今までどんな特訓を積んでこられたんですか?」

「今思い返すと、実技よりも体の弱い箇所を徹底して鍛えてる時間のほうが長いかもな」

「長時間(汚れと)格闘した時は、体の節々が痛くなりますからね」

「そうなんだよ!さてはお前さん、結構できるな?」

「それなりには!」


穏やかで、それでいて真剣な方々だな。

お掃除してる姿を見るのが楽しみだよ。

もちろん私自身も活躍するよ!



馬車が止まった。


「始まるんですね」

「あぁ、無事に帰ろうな」

「はい!」



リーダーが全員を集め、お掃除の説明をしてくれた。


「依頼書に記載されてる内容だが、念のために確認しておく。今回掃除する対象は、とにかく凶暴なやつだ。馬車の通り道に沿って掃除してくれ」


『おう』


通り道を掃除するってことは、馬車が通れないほどゴミが散乱してるってことだよね……。そりゃあマッチョな人が集まるわけだよ。


「それじゃあ早速そこの馬車から装備を──」


リーダーさんの背後に、体長3メートルはある熊が口を開けて迫っていた。

不幸にも全員の注目が馬車に集まったタイミング。

気づいたのは私だけ。


いや、幸運だったとも言えるだろう。

この私が気付けたのだから。


「伏せて!!」



ピシュッ



熊の悲鳴が響いた。


「なんだ!?」

「熊!?」

「まさか、あの子が騎士団長様を守ったのか!?」


ん?騎士団長?


「なんでゴミ掃除にわざわざ騎士団長様が来られたのですか?」

「Sランクモンスターのことをゴミだなんて、実力に見合ってクレイジーなやつだな」


あれれ、なんだかおかしいぞ。


「馬車が通れないほどゴミが散乱してるので、それを片付けにきたのですよね?」

「待て、君はなんの話をしている?我々はこの森のモンスターを駆除しにきたのだぞ?」


「え、え、ぇええええええ!?すみません!すみません!私てっきり道のお掃除をするのかと」


『どんな間違え方だ!?』


「依頼書に書いてあっただろう?道に凶暴なモンスターが出現して困ってるって」

「それより、どうやって依頼の許可を取ったんだよ!ランク証明が必要だろ?」


「え、あ、あの、その、掃除って言葉が入ってたので詳細を見ずに依頼を受けてしまって、ランク証明は間違えてお掃除ランクを提示してしまいまして……」


「そ、それってまずいんじゃ…」


依頼の資格がないのにも関わらずに参加しちゃった!?もしかして裁かれる!?


「ま、まぁ、なんだ?この子がいなかったら今頃俺は死んでるわけだし、ここは聞かなかった事にしておかないか?」

「いいんですか!?」

「命の恩人だからな」

「ありがとうございますっ!!」


あれ、ってことは……ここにいる人達全員ハンターなのおおおお!?

なんで今まで気づかなかったんだ?

気づけるところ沢山あったよね??


「ところで……さっきの魔法は一体なんなんだ?」

「私オリジナルの汚れを落とす魔法です。収納魔法に洗剤の原液をそのまま入れて、取り出す時に穴を限界まで小さくすることで勢いよく飛ばしています!」


「やってる事Sランク冒険者のそれじゃねぇか。お前何者だよ!」

「ただの家政婦…じゃなくて結構凄めの家政婦です!!」

「こんな家政婦がいたら家にドラゴンが侵入しても守ってくれそうだな」


ハンターさん全員が大爆笑だった。

そんな幸せも束の間。


ドン、ドン、ドン、ドン


地面が揺れた。


横を見ると、いや、もはや横とかじゃない。

上だ。


「ドラゴンだアアアアアアアア!!」


これがドラゴン!?この世の生物とは思えない大きさだよ!?

10年間放置された屋敷から出るほこりの量レベルだ(?)



この巨体が俊敏に動いて、鋼鉄をゼリーのようにグチュグチュに潰すってマジですか?


「おい、嘘だろ、まさかドラゴンブレスを撃とうとしてないよな……」

「冷静になれ、ドラゴンブレスが放たれる時は周囲の影が消えるだろ?こんなふうに」

「いや、こんなふうにじゃダメだろ!影が消えてるって!!」



今逃げても間に合わない。

戦うしかないよ。



『私が』



「落ち着いてください。大丈夫。きっと大丈夫です。自慢ですが、掃除の依頼でSランク以外取った事ないですから!」

「これは部屋のお掃除とは一味も二味も違うぞ!!」


岩を溶かす炎の攻撃ぐらい止めれる。

パンを焼く「いしがま」に火がついた状態で中を掃除できる私なら。


「ストレージ・ゲート!」



ドオオオオオオオ



ドラゴンブレスを収納魔法で別空間に送り続ける。

そのゲートはドラゴンへと近づいていき、やがて通り抜けた。


「ドラゴンの頭がねぇ!!」


「おいおい、あいつまさか」


「ドラゴンをお掃除したのか!?」


「そんなわけないじゃないですか!普通に殺しただけですよ!どちらかと言うと殺菌です殺菌」


なんかドン引きされた。



色々あって無事帰還し、私が騎士団長様の、いえ、バイズっちの嫁になったことはまた別のお話。



***



今回の件で、人間は思ったよりも簡単に勘違いをする事を学びました。

些細な誤解から、大きないじめに発展することもあるのではないでしょうか。


今一度、自分の思っていること、妄想が、自分の勘違いなのではないかと考え直す機会を作ってみてください。


大丈夫です。


きっとあなたも『心のお掃除』ができるようになります。


主人公より。


「あれ!?私の名前は!?」

ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます!


もし少しでも面白いと思っていただけましたら、画面を少し下にスクロールした場所の


「☆☆☆☆☆」をタップして「★★★★★ 」色をつけてもらえると、私はあなたの想像した7倍喜びます!



下のタイトルは、私の書いた長編(になる予定)の作品です!

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[良い点] 最後の口上(***以下)がなければ 文句なしに☆5つだったのになぁー (すみません 個人的な好みを押し出して) でも そこに至るまでは ほんと面白かったです!
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