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三高生活委員カツオ  作者: けいティー
第1章 生徒失踪編
3/22

第3話 秘密~兵器と全員集合~

「これは…腕章…ですか?」

 僕はその秘密兵器とやらを見て、念のため土崎先生に確認をした。

「その通り、腕章さ。でもただの腕章ではない。人間の戦闘能力を向上させる特殊な腕章だ。これを着けると厨川くんみたいな力を使うことが出来る。」

「ほんと何だべが…。」

 半信半疑で腕章を着ける鏡くん。

「とにかく着けてみてくれ。」

 土崎先生に言われるがまま、僕も腕章をつける。

「お二人とも、似合っておりますよ。」

 そう優しく殿水さんは声を掛けてくれた。これは素直に喜んで良いことなのか。

「うーん、(つえ)ぐなった感じなんもさねすど。」

「確かに、何も変わらない。」

「着けたぐらいじゃ何も変化しないのは当たり前だ。実際動いてみれば分かる。」

 土崎先生がそう言うので、とりあえず適当に体を動かしてみる。…何だか体が軽い気がする。

「動きやすくなったんじゃないかな?」

「はい、素早く動けるような感じがします。」

「言われでみれば、んだすな!」

「じゃあ次は目の前にある机をチョップで真っ二つにしてみてくれ。」

 何という無理難題を…と普通ならば思うかもしれないが、今は土崎先生特製の腕章を着けている。意図も簡単に真っ二つ出来るはずだ。出来なければ体が軽いのは気のせいということになる。僕は思い切り机に向かって腕を振り下ろすと、机は真っ二つどころか粉々になった。鏡くんも僕と同様の結果となった。

「予想以上の力があるみたいだ。これでどんな敵が来ても安心だな。」

 土崎先生は贅沢なフルコース料理を平らげたかのような満足げな表情を浮かべ、当たり前のように超能力で机を元通りにした。

「あと2人、何としてでもこれを渡さないと。ということで今日は解散だ。以上!」

 土崎先生の一声で委員会はお開きとなった。先生は真っ先に教室を飛び出していく。

「自己紹介、した方が良いでしょうか?」

 殿水さんは何ともにこやかな表情で僕に訊ねてくる。

「全員揃ってからにしよう。」

「それもそうですね。」

 僕の提案に殿水さんは頷いた。特にすることも無いので僕たちも解散、帰路についた。


 次の日、金曜日の朝、僕は昨日の委員会に来なかった神代さんが所属しているクラス、1年5組を訪れた。別に頼まれた訳では無いが、気軽に話せそうなのはこっちだからだ。隣の教室なので行きやすくて助かる。今は8時前、流石にもう来ているはずだ。5組の教室を廊下から覗くと、教室の最奥の席に特徴的なショートボブを確認した。神代さんである。

「ごめん、神代さんを呼んできてくれないかな?」

 僕はたまたま近くにいた、5組の生徒に頼んで神代さんを呼んでもらうことにした。教室の入り口から呼んでも良いが、変に注目を浴びてしまうからな。あっさりと僕の要求に応じた神代さんは5組の教室の入り口までやって来た。開口一番、

「何の用?」

「あのなあ、まず『おはよう』だろ。」

「何で朝からあんたに説教されないといけない訳?」

「お前が挨拶をしないからだ。」

「挨拶しないことって犯罪か何かなの?」

「最低限のマナーだ。」

 このままだと全く本題に入れそうに無いので、僕は流れを打ち切って本題に入る。

「昨日何で委員会に来なかった?」

「あの土崎っていう教師、信用ならないのよ。生徒失踪事件とか異世界への入り口とか、クスリでもやってんじゃないの?」

「クスリをやっているかどうかは知らないけど、土崎先生は嘘はつかないと思う。」

「勝雄は何を根拠にそんなこと言えるの?」

「今日の委員会で土崎先生から詳しい話がある。その話の内容こそ僕が土崎先生を信じる根拠だ。」

「へぇ…。」

「ということだ、応援練習終わり次第特別教室に来ること。」

 まもなく予鈴が鳴るので、僕は5組の教室を立ち去る。


 昼休み、僕は同じクラスの杉宮くんに誘われて一緒に弁当を食べることとなった。

「ここだけの話なんだがな…。」

 弁当を食べながら杉宮くんは、気持ち少し小声で秘密の話をし始めた。

「何?」

「俺の知り合いから聞いたんだが、応援団長、行方不明になったらしいぞ。」

「え?本当に?」

「ああ、俺が一番信頼している情報筋からの情報だ。」

 君は週刊誌の記者気取りか?

「家出…とか?」

「さてどうなんだか。ってか団長いないってことはつまり、今日の応援練習無かったりして!」

「昨日は酷いとばっちりを食らったからね。もう勘弁してもらいたいところだ。無ければ無いで良い。」

「無いと良いよなあ。そもそもあの応援練習、時代に合ってないとつくづく思うぜ。」

「確かに。時代錯誤も良いところだ。」

 僕と杉宮くんの願いが届いたかと言うと…それは残念ながら叶わなかった。放課後、昨日と同じように応援練習が始まった。

「今日は団長がいないから、副団長の俺が代理だ!休んでいる団長のもとに届くように、全力で声を出していけ!」

 白い鉢巻きを着けた男子の副団長は、団長に負けず劣らずの声を響かせる。そして僕たち1年生は「押忍!」と答える。やはり団長は欠席していることになっているんだな。

 これで団長が居なくても応援練習は普通に行われることが判明した。行方不明という情報が本当となるといつ復帰するか分からないし、応援練習最後まで団長不在かもしれない。まあそんな先のことを考えていても仕方ないので、僕はがむしゃらに声を出す。


 今日は前に摘まみ出されることなく、平穏に応援練習の時間は過ぎ去った。しかし僕は応援練習が終わっても帰れない。そう、この後委員会があるのだ。僕は終わり次第特別教室へ向かうと、そこには4人の生徒の姿があった。厨川くん、殿水さん、鏡くん、そして昨日来ていなかった四ッ谷さんが来ていた。

 僕は軽く挨拶をし、鏡くんと殿水さんの会釈、厨川くんと四ッ谷さんの無反応を確認して空いている席、というか委員会初日と同じ席に無意識についていた。左隣にはこれまた初日と同じ席にいる四ッ谷さんがいる。今日はこの間とは違って俯いている。

「昨日は何か用事でもあったの?委員会に居なかったけど。」

 僕は四ッ谷さんに話しかけてみることにした。彼女の声を全然聞いていないから、気になっただけだ。彼女は声を発することなく、首を横に振って答えた。

「言いにくい理由なんだよな、ごめん。」

 これ以上昨日のことについて深掘りすることは止めた。どうにかして四ッ谷さんとコミュニケーションを取りたいのだがどうすれば良いのだろうかなどと考えていると、教室の引き戸がガラガラと開いた。何とも気だるそうにやって来たのは、神代さんである。

「…来てやったわよ。」

 随分と不服そうに呟いた彼女は僕の右隣の席についた。程なくして土崎先生もやって来る。

「やっと全員集合だな。ちゃんと来て偉いぞ。」

 土崎先生は教卓から全員の顔を確認して嬉しそうに言った。

「四ッ谷さん、神代さん。君たちに大事な話とプレゼントがある。」

 土崎先生は昨日僕と鏡くんに話したことと同じ話を彼女らにした。そして2人に秘密兵器・腕章を渡し、2人はそれを腕にそれぞれ着けた。このような感じで詳細については割愛したが、昨日の放課後、今日の朝と全く同じ展開となった。厨川くんの教室破壊、殿水さんのバズーカ生成、土崎先生の教室修復、彼女らの机チョップ…デジャブだ。

「これで本格始動ということで、自己紹介をしてもらおうかな。」

 僕に関しては顔写真入りの名簿を見たので、全員の顔と名前が一致しているが、他の人は同じ名簿を見たのだろうか?まあこれから自己紹介をするのでそれで覚えてもらいたいところだ。

「じゃあ1組から。」

 土崎先生はトップバッターに、よりにもよって厨川くんを指名した。クラス順となると仕方ない気もするが。特に先生に対して意見することなく、黙って厨川くんは起立した。

「1年1組、厨川醍醐。改造人間だ、宜しく。」

 順々に起立して自己紹介をしていく。

「1年2組の鏡北登です。秋田が大好きで、ずっと住み続けでなと思ってらっす。よろしぐ。」

「…1年3組…四ッ谷ななか…です。よろしく…お願い…します…。」

 随分と小さい声で、隣にいるのに微かにしか聞こえない。

「1年4組の殿水まはると申します。これからよろしくお願いいたします。」

「1年5組の神代咲です!楽しいことが好きです!よろしくお願いしまーす!」

「1年6組の鹿平勝雄です。趣味は特撮やアニメ作品の鑑賞です。よろしくお願いします。」

 僕の自己紹介常套句を言ったところで、隣にいた四ッ谷さんの表情が少し変化したような気がした。

「はい、わたくしは皆さんご存知、土崎湊斗、超能力科学者だ。あ、これ生活委員会以外の人には秘密なのでよろしく。」

 非科学的な力を使う科学者の自己紹介も済んだところで、今度はこれからの活動について話し始めた。

「これからの活動としてはまず、生徒失踪事件の真相を探ること。先ほどの応援練習で団長が来ていなかったと思うが、彼は行方不明になった。昨日の応援練習以降、何かがあったらしい。他にも応援委員2名が行方不明となっている。」

 やはり杉宮くんの言っていたことは合っていた。さらっと先生は『行方不明』と言ったが、かなりとんでもないことだぞ。それなのに驚愕しているのは四ッ谷さんだけだ。声に出さないので分かりにくいが、静かに驚いていた。

「我々のゴールは犯人を倒すこと、失踪した生徒を見つけ出すこと。これが生活委員会の真の活動だけど、『委員会』だし学校側にもいろいろと還元してやらないとダメだから、表向きの活動としては挨拶運動をやろうと思っている。とりあえず来週いっぱいで応援練習が終わるから、その次の週にやる予定。」

「何日やるんだべ?」

「再来週の月曜日から金曜日だから、5日間。朝7時40分から8時までやるから、7時半くらいまでには学校に着くこと。」

「先生!いくらなんでも早すぎます!」

 神代さんは挙手して立ち上がる。

「1週間だけなんだから、頑張って早起きしてくれ。」

「えー…。」

 明らかに沈んだような表情の神代さん。僕からも心の中で早起き出来るように応援しておくよ、頑張れ。

「あと言い忘れてたけど、校内のパトロールもしてもらおうかと思っているんだ。失踪しているのはこの高校の生徒だけだし、生徒や先生の中に犯人がいたりして…。」

 不穏なことを口走る土崎先生。生徒や先生を疑えと…。犯人がこの中に居なければ良いがそれでは解決にはならない…。悩ましい。

「そして言い忘れてたことその2。委員長を決めようと思う。立候補する人はいるか?」

 唐突に委員長決めも始まった。こういう時、すっと手が上がればカッコいいよな…なんて妄想していると、

「いないので、鹿平くんに決まりました。よろしく。」

 土崎先生が勝手に決めやがった。本人の意向ガン無視かよ。委員長が決まったので拍手が起こる。完全に断りにくい空気だ。

「よろしくお願いします…。」

 とりあえずよろしくしてみる。もう諦めました。

「そして!またまた言い忘れてたことその3。来週の月曜日は応援練習後に校内パトロールをしてもらおうと思う。ということで来週もここに集合、今日は解散!今週お疲れ様!」

 そそくさと先生は教室を出ていった。相変わらず帰るのが早い。厨川くんたちも教室を出ていく。

「んだば、また来週だな!」

「ああ、じゃあね。」

 明日が休みで嬉しいんだろうな、鏡くんは満面の笑みだ。さて僕も荷物を取りに6組の教室へ戻ろうとした時、制服の袖を掴まれた。振り向いてみると、四ッ谷さんが俯いて僕の制服の袖を掴んでいた。何か言いたいことがあるのか…?

キャラクター紹介!

(2)厨川醍醐くりやがわ だいご

所属:1年1組

誕生日:10月5日

 一人称「俺」のクールな改造人間。髪の七三分けにはかなりのこだわりがあるらしい。

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