表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三高生活委員カツオ  作者: けいティー
第4章 夏休み編
28/28

第28話 勝雄Ⅱ:いざ秋田市へ

 地元の友人とひとしきり盛り上がった日の翌日、何だか疲れが取れていないような気がするものの、僕は秋田行きの普通列車に乗った。相変わらずの空気輸送っぷりに最早何とも思わず、電車はフェーン現象により灼熱地獄となっている盆地をひた走る。

 いつも通学で見慣れた田園風景。夏真っ盛りということもあり、これから頭を垂れる稲穂になるであろう『稲穂予備軍』が風に揺られているが、ここで「いとをかし」と思って一句詠むほどの教養は残念ながら僕にはない。どちらかというと理系だ。


 そんなこんなで高校最寄り駅に到着したが、今日はここでは降りない。僕はこれから終着の秋田駅へ向かうのだ。実を言うと僕は秋田県民でありながら、ここから先の地域へは電車に乗って行ったことがない。秋田方面へ行くとなると、家族で車移動しか経験が無いからだ。車窓からはどんな景色が見えるのか楽しみだという期待と、どうせ田舎なんだから同じ一面の田園風景なんだろうという諦めが半々の状態である僕と、この駅から乗り込んだその他大勢を乗せて再び電車は動き出した。


 同じ田園風景でもどこか特別感のある景色を見ながら、高校最寄りの3駅先にあっという間に到着した。この駅は新幹線も停車するくらいの規模があり、ここから乗客がさらに増える。そして今回僕と秋田行きを共にするメンバーと合流する。

「勝雄くん!」

 黒ぶちメガネのポニーテール、背丈の低い彼女は夏らしい格好(ファッションには疎いから表現が難しい)をして僕が座っているところへやってくる。四ッ谷さんだ。

「四ッ谷さん、おはよう!」

「おはよう!」

 因みに今は朝の9時40分頃である。

「四ッ谷さん、ここ座る?」

「え、座ってて大丈夫だよ。気にしないで」

 かなりの乗客が乗り、席は全て埋まっていた。僕が乗った時は空気が満タンだったのにな。

「僕ずっと座ってたからさ、そろそろ立ちたいんだよね」

「じゃあお言葉に甘えて」

 四ッ谷さんが席に座り、僕がつり革に掴まって立つ。通勤シートだから座り心地がめちゃくちゃ良い訳ではないが、まあ立ちっぱなしよりはマシだろう。


 今、僕は四ッ谷さんの前につり革を掴んで立っている訳だが、こうして四ッ谷さんを見るとそんじょそこらの女子高生より可愛いような気がする。今日初めて四ッ谷さんのプライベートな姿を見て、制服姿とのギャップにより補正がかかっている可能性も否めないが…。

「ん?どうしたの…?ずっと見られると…その…」

「あ、ごめん」

 無意識に彼女を注視してしまっていた。気を付けよう。


 秋田駅は四ッ谷さんが乗った駅から7駅先。その間ポツポツと会話をしながら時間は過ぎていった。そして僕たちは遂に秋田駅に降り立つ。

「じゃあ早速行こうか」

「うん!」

 僕たちは秋田駅にほど近い商業施設へ向かう。ここでの目的は日曜あさ9時から放送している大人気特撮シリーズ『農免ファーマー』のポップアップショップで限定グッズを購入するためである。普段東京にあるショップに行かなければ買うことが出来ないグッズを期間限定ではあるが、この秋田で買うことが出来るのだ。


 ポップアップショップが開かれている商業施設の前に行くと、大きな農免ファーマーが描かれたパネルがあった。

「遂にだね」

 四ッ谷さんの声量が130%ほどアップした。値は適当なのは言うまでもない。

「そうだな。行こうか」

 僕たちは商業施設内へと足を踏み入れる。外の熱気とは対照的なキンキンに冷やされた屋内、本来ならばここで「涼しいー」などと言うタイミングだろうとは思うが、そんなことをしている暇は無い。早く農免ファーマーショップ名物の農免ファーマー立像にご対面しなければ…!


 やや駆け足気味で向かった先には、農免ファーマーの立像が鎮座していた。今回は会場が秋田ということもあって、農免ファーマーシリーズの中でも続編が作られるほどの人気作である『農免ファーマーオウズ』の立像である。何故秋田で『オウズ』なのか、それは主人公を演じた俳優さんの出身地が秋田だからだ。

 この立像のリアルな質感は、ここに来て見なければ分からない。見事な『農免ファーマーオウズ たとば耕耘』の立像である。因みにさらっと出てきたが『たとば耕耘』とは農免ファーマーオウズの基本形態で、たけのこ、とうもろこし、馬鈴薯の力で戦うのが特徴だ。


 それはさておき、僕と四ッ谷さんはポップアップショップを物色する。限定カラーのソフトビニール製フィギュア、限定スマホケース、限定の変身ベルト、いろいろと魅力的なものがあるが、緊縮財政である僕の予算は限られている。

 スマホケースに関しては僕が持っている機種が非対応のため論外、変身ベルトは財政破綻まっしぐらの価格帯、となるとソフビか、いやもっと実用的なものにした方が良いのか…。と思案していると、

「あれ、勝雄くん、まだ買ってなかったの?何かで悩んでる?」

 四ッ谷さんは既に『農免ファーマー』の柄が付いた大袋を2つ持っていた。

「四ッ谷さんは何を買ったの?」

「Tシャツとタオル、それからフィギュア付きボールペン、あとソフビとスマホケースとベルト!」

 四ッ谷さんは僕が悩んでいた3択全てを購入しただけでなく、Tシャツ、タオル、ボールペンまで…!

「…全部でいくらだったの?」

 レシートを見せてもらったが、それはそれは恐ろしい金額だった。つまり、ウン万円の買い物だ。

「何でそんなに買えるんだ…?」

「今日のためにお母さんからお小遣い貰ったのと、今年の一銭も手を付けていないお年玉を全部使っちゃった」

「す、すげえな…」

 これ以上の感想は出てこなかった。僕もお年玉はまだ残っているのだが、四ッ谷さんのように勇気を出して大枚をはたくことは出来ない。というか大枚をはたけるほどのお年玉など最初から無かった。僕だけでなく家族も揃いに揃って緊縮財政である。


 結局僕が買ったのは農免ファーマー柄のトートバッグ1点のみ。これでもかなり良い値段はした。今度はもっとお金を用意しておかないとな。

「そろそろお昼だね」

 四ッ谷さんに言われ、スマホの時間を確認すると11時45分だった。

「昼はどこで食べる?」

「あそこのカフェ、良いんじゃないかな?」

 四ッ谷さんが指差した先には、洋風で洒落たカフェがあった。


 店内に入ると、これでもかと言うほどのコーヒーの香りに圧倒される。学校の職員室もコーヒーの香りが充満しているが、こちらとはまた違う。カフェの方が良いコーヒー豆を使っているんだなと感じる、そんな高貴な香りだった。勿論インスタントのコーヒーも良い香りだし美味しい、ということもインスタントコーヒーの名誉の為に補足しておく。


 僕たちはコーヒーとフレンチトーストをお供に一息つく。僕はアイス、四ッ谷さんはホットだ。真夏なのにホットというのは理解しかねるが、あれか?真冬にこたつに入りながらアイスクリームを食べるあれ。それに似たものなのかもしれない。

 何だか意識高い系の人種のようなランチタイムをしている気がする。ノートパソコンを開いて仕事をしている人や、僕たちと同じくらいの年頃の女の子たちが楽しそうにおしゃべりしている様子が目に入る。秋田市の学生は羨ましい、こんな洒落たカフェでランチを食べて遊ぶのが毎週のように出来てしまうからな。ただし、財政のことは考慮していない。


 それにしても、オシャレなカフェでコーヒーを啜る四ッ谷さんは何とも様になっている。『冬だったらメガネが曇るんだろうなあ』などと至極当たり前のことを心の中で述べていた。そして僕は無意識のうちに、まるで絵画のように四ッ谷さんを眺めてしまっていた。

「か、勝雄くん…、あんまりこっちを凝視されると…」

 四ッ谷さんは照れながらこちらを見て言った。

「あ、ごめん」

 これ以外の返しがいまいち思い付かない。


 四ッ谷さんと農免ファーマーを始めとする特撮や、アニメの話をしながらのまったりランチタイムは過ぎていき、次に向かったのは四ッ谷さんのご希望により、駅前アーケードの中にあるアイスクリーム専門店だ。…やっぱり真夏にホットコーヒーで暑くなったからじゃないか…?

 アイスクリームなら先程のカフェにもメニューにあったのだが、四ッ谷さんが食べたいフレーバーがその専門店にはあるらしく、だから向かったのである。


 店内に客は僕たち2人だけだった。ふと四ッ谷さんを見ると少し嬉しそうだ。やはり人が多いところは苦手なのかな。

 僕たちは窓側の席に座り、紙の容器に入れられたアイスクリームを食べる。四ッ谷さんは僕と同じようにアイスクリームを食べているはずなのだが、何だか様子がおかしい。顔が赤い気がする。

「四ッ谷さん?体調悪い?」

「いいい、いや、そういう訳じゃないけど…。ななか、何か変かな?」

「顔が赤いよ、熱中症?」

「え、そんなに…?」

「何となくね。まあ大丈夫なら良いんだけど、ちゃんと水分と塩分摂った方良いよ。熱中症寸前だったら困るし」

「あ、あのね、勝雄くん…」

 顔を赤らめた四ッ谷さんはこちらを見て言った。さっきもこんなシチュエーションがあったような。

「ん?何?」

「ななかね、勝雄くんのこと…ずっと前から…す…」

 四ッ谷さんの発言を突如として鳴り響いた爆音が遮る。


 店内の窓ガラスが割れ、僕たち2人に降りかかった。

「お客さま、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」

 店員がこちらに飛ぶが如く駆け付けてきた。

「大丈夫です」

「な、ななかも、平気です…」

 あの爆発は何だったのか。外に出て、爆発音が聴こえた先を見てみると、それはそれはリッキーノくらいのサイズはあろうかという大きさのロボットが、アーケードの大屋根を破壊して立っていたのだ。

「ごめんあそばせ、秋田市民の皆様」

 ロボットから声がする。リッキーノのように意思を持ったロボットなのか?

「そしてごきげんよう、生活委員会の皆様」

 ロボットから1人の女性?いや女性にしてはガタイが良いような…。どちらかというと骨格は男性っぽい人が現れた。


「アテクシは拾参使(じゅうさんし)の第13大使・十三岱(とさんたい)ですわよ」

 彼?いや彼女?はそう名乗った。

キャラクター紹介!

(27)山台万葉やまたい まよ

所属:秋田県立湯南高等学校1年C組

誕生日:1月20日


 一人称「アタシ」、勝雄の小学校、中学校の同級生。セミロングの髪が特徴的な普通の女子高生である。小中学校時代は勝雄と合わせて「ツナマヨコンビ」と呼ばれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ