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三高生活委員カツオ  作者: けいティー
第3章 農聖王編
15/24

第15話 君の名前は「殿水まはる」

今回から第3章に突入です。

 何も無い暗闇。どこまでも続く底なしの闇。そこから逃れるかのように私は目を覚ましました。

 そこはとある研究所のような施設。私の方に視線を感じます。その視線の主は白衣を着たマッシュルームヘアの男性でした。

「目が覚めたかい?おはよう」

 その男性は私に言いました。しかし私はまだ状況を理解出来ておりません。何と返答しようか困っていると、

「君の名前は「殿水(とのみず)まはる」。君は今この世界に誕生した、わたくしによって作られたアンドロイドだ」

「アンドロイド…」

「そう。そしてわたくしはリゼオンだ。よろしく」

「よ、よろしくお願いいたします」

「ようやく目が覚めたか」

「おはようございます。そして初めまして」

 部屋の奥から現れたのは2人の女性、しかも右側にいる女性は私と同じ声をしています。

「オレはギャラクスだ」

 左側に立っている、赤みがかったお団子ヘアの女性はギャラクスさんというそうです。

「私は殿水まゆりです。あなたの双子の姉、ということになっています。」

「双子の姉?」

「そうだよ。あ、そういえばまだ自分の姿を見てないでしょ。はい、これ」

 リゼオンさんは私に手鏡を渡してくれました。殿水まゆりさん、もとい私の姉との相違点は髪と瞳の色でしょうか。姉の方がやや青みがかっているように見えます。

「信じていただけましたか?」

「はい、お姉様」

 お姉様の笑顔に私も笑顔で返します。

「とりあえず上手くいったみたいだな」

「まあね。まあここからが本番なんだけども」

 リゼオンさんは私とお姉様に指示を送ります。

「殿水まゆりと殿水まはるは戦闘用に作られたアンドロイドだ。そこで2人にはわたくしたちと共にとある組織の壊滅の為に働いてもらう。戦闘用アンドロイドに頼むということはお察しの通り、その組織の奴らと戦うことになるだろう」

「戦いですか…、私もまはるも戦闘経験はありませんが…」

 お姉様はリゼオンさんに問いかけます。

「君たち2人は問題なく戦えるさ。本能的にインプットされている戦闘スキルによってね。気付いた頃には敵をボッコボコだよ」

 リゼオンさんはジェスチャーを交えながら話して下さいました。

「そろそろ時間だ。行くぞ」

「まあ過度に心配する必要は無い。大丈夫」


 私たちは組織壊滅の為、そのアジトまで車で移動します。ギャラクスさん曰く、その組織というのはこの世界『アティカシア』各地に拠点を置き、全盛期には数百万人の信者を抱えていた宗教組織なのですが、世界を崩壊させる程のかなり危険な思想を持っていたようで、世界のあちこちで破壊活動を行っていたとのことです。現在は風前之灯といった状況だそうですが、残った信者による破壊活動は未だに続いているそうです。

「ここが奴らのアジトだ」

 アジトに到着し、私たちは車から降ります。するとその時、私を目掛けてどこからか弾丸が飛んできました。私は咄嗟に弾丸を掴み、粉々に握り潰しました。

「これが私の力…」

 弾丸を握り潰した右手には少し焦げた後が付いていました。しかしそれ以外は無傷です。

「流石アンドロイドだ」

「まはる、素晴らしいですよ」

「流石わたくしが開発したアンドロイドだね」

 私を褒めているようで自画自賛しているリゼオンさんはともかく、ギャラクスさんやお姉様にも褒められました。

「おい、何なんだソイツは…」

 私目掛けて弾丸を射出したであろう宗教的なローブを羽織った男性が姿を現しました。手にしているのはライフルでしょうか。明らかに危険な人間であると判断可能です。

「この子たちはアンドロイド、君たちなんか屁でも無いよ」

「フッ、なるほどな。だがこっちだって」

 宗教的コスチュームの男性が指を鳴らすと、信者と思しきローブを羽織った男女が次々と現れました。その手にはやはりライフルを持っています。

「オレたちを待ちぶせしていたようだな。だが!」

 ギャラクスさんは手にした竹刀で信者たちを一閃、次々と薙ぎ倒していきます。

「私たちも行きましょう」

「はい、お姉様!」

 私はお姉様と共に敵陣へ突っ込んでいきます。

「君たち纏めてお縄だ!」

 リゼオンさんが地面に手を置くと、植物のように鎖が生えてきました。

「ちょっと大人しくしていなさい」

 信者は鎖で縛られ、身動きが取れないようです。他の信者が助けようとしますが、彼もまた鎖に捕まってしまいます。

「残念だがわたくしの鎖は少々特殊なんだ」

 一方、私の方ですが、リゼオンさんの言っていたことはあながち間違いではなく、気付いた頃にはボッコボコにしていました。

 ふと手を見てみると剣のような形状に変化しておりました。無意識に戦闘モードへと移行していたのでしょう。

「あ、言い忘れてたけど信者を死なせてはならないよ。生け捕りにするんだ」

「それは問題ありません」

 いつの間にかお姉様は信者を拘束しておりました。仕事が早いです。それとリゼオンさん、そのような重要事項は事前に言っておくべきです。

「すまないね。ギャラクスの方は終わったかな?」

「とっくに終わっている」

「よし、奴らを投獄しよう」

 こうして私の初任務は終わりました。

 そして時が経って、

「今度別の世界へ異動することになったんだ」

 リゼオンさんはA4用紙を見ながら言いました。

「別の世界?」

 何のことだかさっぱり分かりません。私は問いかけます。

「このアティカシアとは違う、いや『アティカシアの対となる世界』とでも呼ぶべきか。そこへ行くんだよ」

 ギャラクスさんが補足します。

「今後はまはるとわたくし、まゆりとギャラクスに分かれて行動することになるんだ。赴任する学校が違うからね」

「学校?」

「どうやらまはると私はそれぞれ生徒として、リゼオンさんとギャラクスさんはそれぞれ先生としてあちらの世界の高校に潜入するらしいです」

「お姉様はいつからそれを…」

「私も先程知ったばかりですよ」

「そうなんですね。それであちらの世界の高校というのはどんな所なのでしょうか?」

 私は不安でした。未知なる世界へ飛び込むことに。

「それはもう、楽しいところだよ。多分ね、行ったことないけど」

 なかなか適当な返答です。

「大丈夫。わたくしがいるからね」

「お姉様は不安ではないのですか?」

「私は非常に楽しみです。まはるも楽しまないと損ですよ」

 お姉様は向こうの世界についていろいろ調べていたようで、ニコニコしながら話して下さいました。


 そして別れの日。

「ギャラクス、まさか君とこんなにも長く行動を共にするとは思わなかったよ」

「何だリゼオン、オレと離れるのが寂しいのか?」

「べ、別にそういう訳では…」

「まはる、また会いましょう」

「お姉様こそ、お元気で」

 私たち4人は別行動を取る為、私とリゼオンさん、お姉様とギャラクスさんに分かれました。別行動といっても赴任先の学校は比較的近く、会いに行こうと思えばいつでも会いに行ける距離にありました。

 初めて来た別の世界。空が青く、気持ちが良いです。

「リゼオンさんはこの世界へ来るのは何度目なのですか?」

「両手で数えられるレベルだ。それからこの世界では高校教師の『土崎(つちざき)湊斗(みなと)』だ」

「これは失礼いたしました」

 私とリゼオンさん、いや土崎先生がこの世界へ来た理由、それは秋田県立第三高等学校の生徒が連続で失踪している事件を追う為です。どうやらこの事件にはアティカシアの超能力者が大きく関わっている可能性が高いと見られています。そして今、私たちはとある方の元へ向かっています。先生曰く、私たちの協力者らしいです。

「久しぶりだね、厨川君。元気にしていたかな」

 集合場所の公園へ行くと、日本刀を携えた七三分けの男性が立っていました。

「待ちくたびれたぞ」

 彼の名前は厨川(くりやがわ)醍醐(だいご)。この春、私と共に第三高等学校へ入学する、いわば同級生です。私が生まれる前、土崎先生が以前この世界を訪れた際に、瀕死の重傷を負っていた厨川さんを助けた(正確には『改造人間』として蘇生した)のだそうです。厨川さんは無口でクールですが、頼もしい仲間です。

 この高校に入学してからというもの、鹿平(かびら)勝雄(かつお)さん、四ッ谷(よつや)ななかさん、神代(じんだい)(さき)さん、そして杉宮(すぎのみや)理音(りおん)さんや生保内(おぼない)神彦(かみひこ)さんなど様々な方とお会いすることが出来ました。


 そして今、私は短い一生を終えようとしています。16歳の高校1年生であることはあくまでも設定、実際は生まれてから数年しか経っておりません。

 先程ゴーターが放った攻撃を食らってしまい、私はもう動くことが出来ません。

「殿水さん!しっかり!」

 私を呼ぶ声が聞こえます。鹿平さんの声です。

「殿水まはるはもう助からない。諦めるんだな」

 その邪悪な声、ゴーターが言っているようです。

「貴様、許さん!」

 厨川さんがゴーターに立ち向かっているようですが、もうその光景を見ることは出来ません。今まで僅かに見えた景色ですが、今はもう何も見えなくなりました。再び暗い闇の中へと誘われています。聴覚はまだ生きているので、恐らく厨川さんの日本刀が当たる音であろう金属音が聞こえます。

「まはる!」

 土崎先生もこの場に駆け付けて下さったようです。あれ、だんだんと聞こえなくなってきました…。

 何か話しているというのはうっすら分かる程度になりました。どうやら私は胸部から腹部にかけて深刻なダメージを負ってしまったそうです。

「このゲームはこの辺にしよう。三高生徒、教師諸君、近々また会うことになるだろう」

 ここでゴーターの声がぷっつりと切れました。彼は姿を消したのでしょう。

 意識もだんだんと遠のいてきました。戦闘用アンドロイドとして、鹿平さんを守れたのであれば私は大きな役目を果たしたといえるでしょう。人間は人の手によって作られるアンドロイドとは違う、嘘偽りの無い個性や感情を持っています。そして人間は私のようなアンドロイドとは違う、自然の摂理の中で生まれた存在です。鹿平さんたち人間には命を大切に生きて欲しいです。そしてどうか私が救った命を大切にして下さい。最期に殿水まゆりお姉様に会いたかったです…。さようなら…。

キャラクター紹介!

(15)大鳥桜おおとり さくら

所属:秋田県立第三高等学校3年1組

誕生日:12月3日


 一人称「ワタクシ」、ツインテールと丸眼鏡がトレードマークの小柄な女子の生徒会長。お嬢様のような口調で話すことから、名家の出身だとか思われているようだが本人は否定している。

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