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三高生活委員カツオ  作者: けいティー
第2章 三高祭編
12/24

第12話 熾烈!運命の戦

「オレは三城(さんじょう)赤土(あかつち)、赤土沖太(おきた)だ。」

 卓球場を急襲し、僕と殿水まはる、そして大砂川信太を名指ししたその赤髪ツンツンヘアーの男はそう名乗った。『三城』というのは僕や殿水さん達が通っている高校『秋田県立第三高等学校』から程近くにある旧女子高『秋田県立三城高等学校』のことである。しかし何故三城の生徒(見た目からして恐らくそう)がこんなことをするのか疑問だ。僕や殿水さん、大砂川くんのことを知っているのも引っ掛かる。他2人はどうなのか知らないが、少なくとも僕は赤土と面識は無い。

「何故私たちの名前を知っているのですか?」

「確かに、気になるな!」

 この口振りを見るに、殿水さんや大砂川くんも彼とは初めましてのようだ。

「とある人物からの指令だ。『鹿平勝雄、殿水まはる、大砂川信太を消せ』とな。」

「とある人物?それは誰だ?」

「教える訳にはいかない。まあこれから死ぬんだったら教えても良いかもしれないけどな!」

 赤土は僕に向けて発砲した。僕は反射的に目を閉じる。


「おい、嘘だろ…。」

 赤土の声が聴こえ、恐る恐る目を開けてみると彼は愕然としていた。とりあえず僕は生きているようだ。

 序でに左手に何かを握っている感触がある。握りこぶしの隙間から白煙が僅かに出ている。手を開いてみると、そこには銃弾があった。人間用戦闘腕章恐るべし。身体能力を大幅に向上させるこの腕章、これが無ければ僕は凶弾に倒れていただろう。

「流石土崎先生が開発した腕章ですね。」

 感心している殿水さん。この状況でも相変わらずの冷静さだ。

「う、撃てー!」

 赤土は目出し帽の2人の男に命令し、自身は一歩下がったところにポジショニングする。

 目出し帽の男たちが放った弾丸も先程と同じように、僕の手の中でその威力を失っていた。手が勝手に動き、人間離れした反射神経で次々と弾丸を手掴みしていく僕。これ後で能力を使った副作用とか来たら嫌だな…。

「くそっ、標的変更!オレは大砂川をやる、お前は殿水、お前は鹿平だ!」

 赤土の指示により、目出し帽の男が武器をナイフに持ち替え、僕に迫ってきた。もう一方の目出し帽は殿水さんと、赤土は大砂川と交戦している。

 他2人はまあ大丈夫だろう。問題は僕だ。向かってくるナイフを対処出来るのだろうか。そんなことを深く考える暇など無く、目出し帽のナイフは僕の腹部ギリギリを突いた。体が勝手に動いた感覚があるので腕章による能力だと思う。

 ナイフは進行方向を変え、今度は斬りかかるように振りかざしてきた。僕は振り下ろされる腕を掴み、相手からナイフをあっさり奪い取った。

「もう勘弁したらどうだ?僕に勝つことなど不可能だ。」

 強者らしいセリフを吐いてみる。ちょっとヒール感を意識してみました。

「うるさい!返せ!」

 相手の目出し帽は再び拳銃に持ち替え、僕に向かって射撃を行う。しかし今の僕にかかればこんなもの造作もない。弾丸を全て切り落とし、じわじわと相手に詰め寄っていく。

「おい…やめろ…!」

 拳銃を捨て、尻もちをつく目出し帽。

「先程の威勢はどこへ行ったんだかなあ。」

 僕はナイフを捨て、相手が捨てた拳銃を粉々に踏み潰した。僕の勝利は確定したと言わんばかりに相手の目出し帽を剥ぐ。その正体は驚きの人物だった…となれば面白かったが残念ながらナイストゥーミーチューな人物だ。


 こちらの戦いが落ち着いたのでふと他2人に目をやると、コテンパンにしているようだった。

「殿水まはる、対象を撃破しました。」

 目出し帽を剥がされ、気を失っている男の隣で殿水さんは淡々と言った。しかしこれは『撃破』という言い方が正しいのだろうか…。

「よくやった!」

 赤土の頭部に彼から奪い取った拳銃を突き付け、笑顔で言う大砂川くん。絵面がサイコパスです。

「くっ…。」

 赤土は抵抗することなく座っていた。

「俺様や鹿平勝雄、殿水まはるを消すように命令されてお前は俺様たちを襲撃したんだよな?」

「…ああそうだ。」

「その命令した人物は誰だ?」

「…。」

 赤土は黙秘する。

「言わないのであれば俺様が排除する!」

 大砂川くんは引き金を今にも引きそうな勢いである。赤土は悪人といえども普通の人間だ。いくらなんでもやりすぎだろうと僕が止めに入ろうとした時、

「待て。そんなことをしたら手がかりが全て消えちまうぜ。」

「…まあそうであるな…!だがこの拳銃は下ろさんぞ!」

「好きにしたら良い。しかしこのままだとオレがやられるのも時間の問題だな。」

 赤土はこんな状況でも随分と冷静だ。

「まあな!さて本題に戻ろう!もう1度聞くが俺様たちを消すように命令したのは誰だ?」

 大砂川くんの問いに赤土は案外あっさりと答えた。

「異世界アティカシアの超能力者の男、ゴーターだ。」

「ゴーターか…!知らんな!鹿平勝雄、お前は知ってるか?」

「僕は異世界のことに関しては専門外だよ。殿水さんなら知っているんじゃないの?」

「ゴーター…。残念ながら私のデータベースにはありません。しかし同じ異世界出身の土崎先生なら何か知っている可能性が高いと思われます。」

「なるほど。じゃあ後で先生に聞いてみるか。」

 僕と殿水さんのやり取りをよそに、大砂川くんによる尋問は続けられていた。

「ではそのゴーターとやらは何が目的で?」

「さあな、それは知らん。」

「本当か?嘘は付くなよ!」

「本当だ!本当だって!!オレは報酬の為に、ゴーターはお前らを消すという目的の為に、利害の一致で協力しただけだ。それ以外のことは何も…。」

「…お前の言動を見れば分かる!どうやら本当らしいな!だが俺様たちを狙う存在がいるとなると再びゴーターと契りを結んだ暗殺者、またはゴーター本人が襲いかかってくるかもしれんな!こちらもHSMで情報を共有する!鹿平勝雄たちも生活委員会で情報を共有しておけ!」

「ああ、了解した。」

 しかし大砂川くんは随分と対応が手慣れているな。暑苦しい熱血改造人間かと思っていたが、これは有能キャラですな(何目線?)

「では最後に1つ!ゴーターはどこにいる?」

「それも知らん。」

「そうか!もう良い、他に持っている武器全て置いて立ち去れ!」

 赤土は拳銃の他にもナイフ、スタンガンなどを持っていたらしく、その全てを置いて目出し帽を被っていた男たちと共に退散した。

「これで一件落着、ではありませんね。」

 殿水さんはやや不安そうな目をしていた。

「そうだな。」

 今の僕にはこれくらいしか声をかけることは出来ない。ゴーター、彼は一体何者なのだろうか。何となく決戦の時は近いような気がする。

「勝雄!お前やるじゃねえか!」

「こんなに強かったなんて知らなかった。」

 杉宮くんや生保内くんは僕たちの戦いの一部始終を目撃していたらしく、僕らへ拍手をして称賛を贈っていた。

「2人共、いつから見てた?」

 僕は2人のもとへ駆け寄って問う。

「そりゃあもう最初からよ!なあ、神彦!」

「凄かったよね。鹿平くんも凄かったけど殿水さんも凄かった!あと大砂川くんも!」

 興奮気味で2人は語っている。

「そうかそうか!ありがとう!」

 大砂川くんも満更ではなさそうでやや浮かれているように見える。

「杉宮さん、生保内さん。このことをここだけの秘密にしてもらえませんか?」

 殿水さんは真剣な眼差しで2人を見ている。

「わ、分かった!秘密だな?」

「りょ、了解したよ。」

 何とも怪しい返事だ。その時、殿水さんは2人の手を握って目を合わせた。

「ど、どうしたんですか殿水さん…?」

 何故か敬語になる杉宮くん。それもそうだ、美少女に至近距離から見つめられているのだからな。生保内くんの方はというと、緊張して固まっていた。

「了解していただけたのは嬉しいですが、念のため。ご了承下さい。」

 そう言うと直後に殿水さんの両目からまばゆい光が放たれた。僕は反射的に目を覆う。


 光が収まり、目を開けてみたものの何か変化した様子は無かった。

「今何したんだ?」

 僕は殿水さんにこっそり聞いてみる。

「記憶操作です。先程の戦いを見ていたのでその記憶を抹消しました。」

「なるほど。ちょっと可哀想だがしょうがないよな。」

 僕のカッコいいシーンがあの2人の記憶から消えているというのは何とも残念なことだが、異世界だの超能力者だのといった話を部外者に聞かれてしまっては面倒なことになる。まあそんな頓痴気な話など信じそうに無いとは思うのだが…。まあ部外者である2人を守る為、ということもあるか。

「あれっ、俺たち今まで何してたんだ?」

「確かに。あれっ?」

 2人の言動を見るに確かに記憶から消えているようだった。

「さて!卓球をやるぞ!生保内神彦、勝負だ!」

 戦いの直後だと言うのに大砂川くんはろくに休みもせずまた動くらしい。

「良いよ!やろう!」

 今度は生保内くんと大砂川くんによる、これまた別の戦いが繰り広げられることとなる。人間対改造人間(勿論大砂川くんが改造人間であることは対戦相手の生保内くんは知る由もない)なので、普通に考えれば大砂川くんのぼろ勝ちといった構図が目に見えている。果たしてどうなのだろうか。


 生保内くんと大砂川くんによる、試合形式での勝負が始まった。3セット先取で勝ち、使う球は公式戦で使われるプラスチック製の球という、思ったより本格的なものだ。

 最初は生保内くんからのサーブ。卓球経験者のガチなラバーが付いたガチなラケットから、強烈な回転球が打ち出された。大砂川くんは難なく返球、生保内くんの返球も低く、攻撃を仕掛けることが出来ないままラリーが続く。しかし途中で大砂川くんの返球が甘く、やや高めに球が上がった。卓球ガチ勢の生保内くんはそれを見逃すことなく、台の横に回り込んで強烈なスマッシュを叩き込んだ。

「すげえな…。」

 杉宮くんは2人のハイレベルな戦いを間近で見て、驚愕していた。

「見事だ!」

 大砂川くんも相手である生保内くんを称賛した。

 そのようにして始まった第1セット。次に生保内くんが放ったサーブでは、4球目で大砂川くんがフォアドライブを打ち込んで1-1に持っていった。

 そのままデュースまでもつれ込み、最後は大砂川くんがミスしたことでこのセットは生保内くんが勝ち取った。2、3セット目も同様に激しい攻防が繰り広げられたものの、どちらも大砂川くんに軍配が上がった。そして4セット目でもデュースになったが、制したのは大砂川くんだった。

「いやあ強かった…!ぼくちんももっと上手くならないと。」

「ナイスゲームだった!またやろう!」

 2人は固い握手を交わした。これぞスポーツマンシップである。

「次は鹿平勝雄、お前と勝負だ!」

「えっ…?」

 負ける気しかしないぞ…。

キャラクター紹介!

(12)殿水とのみずまゆり

所属:秋田県立三清学園高等学校1年A組

誕生日:10月3日

 一人称「私」、殿水まはるの双子の姉として作られたアンドロイド。双子である為、顔や能力は妹と同一となっている。やや青みがかった瞳と髪が妹との数少ない相違点である。HSMのメンバーの1人。

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