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三高生活委員カツオ  作者: けいティー
第2章 三高祭編
10/24

第10話 直前!三高祭の準備

 翌日、僕は普段通り登校し高校の玄関に入ると、殿水さんと鉢合わせた。

「おはよう、殿水さん。」

「あ、おはようございます、鹿平さん。」

 朝から満面の笑みを見せる殿水さん。そんな彼女に僕は昨日のことについて聞いてみる。しかしいきなり直接というのは気が引けるので、先ずは昨日の野球定期戦の話題を振ってみる。

「昨日の試合凄かったね。」

「そうですね。野球の試合はなかなか見る機会がありませんから、新鮮でした。」

 おっと、あくまでも何事も無く最後まで試合観戦していたとシラを切るつもりなのか?僕はここでさらに踏み込む。

「どの辺りが良かった?」

「そうですね…。」

 殿水さんは少し考えた後、絞り出すように言った。

「…全部ですかね。」

 勿論僕はこのような回答で納得しないので、さらに掘り下げる。

「特にどの辺?」

僕はまだ高校生なので就活はしたことが無いのだが、圧迫面接とはこのようなことを言うのだろうね。僕のこの態度に彼女は何か勘づいたらしく「何が言いたいんでしょうか?」ときた。

「昨日さ、戦ってたよね。三清の奴らと。」

 この言葉に殿水さんの表情が少し曇ったような気がした。

「…見られていましたか。」

「彼らは何者なんだ?」

「どこから見ていました?」

「おそらく最初から。」

「でしたら説明不要でしょう。」

「僕はちゃんとした説明が聞きたい。彼らは何者で、何が目的なのか。」

「何故そこまでして聞きたいのでしょう。」

「またおかしな事件に巻き込まれていないか心配だからだ。僕たちは同じ生活委員、ちゃんと情報の共有はした方が良い。」

 そこへタイミングが良いのか悪いのか、土崎先生がやって来た。

「おはよう。」

 土崎先生も普段通りといった感じだ。

「おはようございます、先生。ちょっと昨日のことについて聞きたいことが…。」

「定期戦か?」

「いえ…。」

 僕は土崎先生に、昨日目撃したことを正直に話した。

「あー、あの3人組か。彼らは三清学園非公認組織HSM(ハスム)だ。」

「ハスム?」

「三高でいうところの生活委員会のようなものさ。お団子ヘアー特攻服がリーダーの向能代春香、本名はギャラクス。彼女はわたくしと同じアティカシアから来た超能力者で、三清の教師だ。そして薙刀の少年は大砂川(おおさがわ)信太(しんた)、彼は厨川くんと同じ改造人間で三清学園高等学校の1年生だ。」

 ここまでの説明で超能力者や改造人間など、かなりぶっ飛んだパワーワードが出てきているが、特に疑問だとは思わず受け入れてしまっているという自分の適応力に驚くばかりである。

 土崎先生はさらに説明を続ける。この順番だと殿水さんそっくりの女子生徒だな。

「そしてもう1人、殿水さんとそっくりな彼女の名前は殿水まゆり。殿水まはると同型のアンドロイドで、まはるの姉にあたる。彼女も三清学園高等学校の1年生だ。」

 自分の置かれている状況(異世界出身の超能力者、改造人間、アンドロイドが身近にいる)もなかなか奇怪なものであると第三者目線から見るとそう思うが、まさか我々と似たような組織とメンバーが三清にいるとは思わなかった。昨日の戦いを見て察しはついていたとはいえだ。何故こんなにもこの街には不思議な方々がいるのだろうね。

「まあそういうことだから、これからHSMとも協力することもあるかもしれないし覚えておいてくれ。この話は今日の委員会でもする予定だ。2人共、忘れずに来るんだぞ。」

 部活動と遜色無い程に活動をしている我ら生活委員会。今日も来るようにと釘を刺され、僕は1年6組の教室へ向かう。


「杉宮くん、おはよう。」

 教室へ入り、杉宮くんへ挨拶をする。彼は僕の方に目を向けること無く、一生懸命紙にシャープペンシルを走らせながら「おはよう」と返す。

「朝から何一生懸命に書いてるんだ?」

「これだよ。」

 そう言って杉宮くんが見せてきた紙には、びっしりと反省の意がしたためられていた。

「スマホ使っちまって、反省文書けと土崎に言われたんだ。」

 三高でスマホを使えるのは、先生からの特別な指示がある時や玄関周辺くらいである。それ以外の場所で使用すると反省文を書かされるというルールになっているのだ。

「それはお気の毒に。で、何でスマホ使ったんだ?」

「昨日定期戦の後に三高祭の準備をするからってので、手伝いに行ったんだ。そこでまあバレなきゃいっか精神で使ったら丁度土崎がやって来てよお。」

「どこで使う場面があるのさ?」

「あれだよ、ダンスパフォーマンスの音源流したんだよ。」

 三高祭では1年生は当日の各クラスによるダンスパフォーマンス、2年生は各クラスの教室での展示などといった所謂「アトラクション」、3年生は各クラスで出店(でみせ)をすることになっている。我々1年6組は今流行りのJ-POPの曲でダンスパフォーマンスを行う予定なのだが、一度も全員集まっての練習というものをしていない。本番まであと1週間強しかないのにだ。取りあえずクラスのチャットにはお手本のダンス動画が送られてきているのでそちらを何度か観たのだが、明らかに1週間という突貫工事では厳しく、本番では見ていられない程の出来になってしまうのは間違いない。

「今日、放課後暇か?」

 杉宮くんはシャープペンシルをマイクのように僕へ向ける。

「残念だけど今日も委員会で集まりがあるんだ。」

「勝雄も大変だな、いっつも委員会で。実は今日、皆でダンス練習をするんだよ。一度も練習してないだろ?だからなるべく来てもらいたいんだが…。」

「何時まで練習する予定?」

「それは実行委員様に聞かないと分からんな、ちょっと聞いてくる。」

 杉宮くんは立ち上がり、クラスメイトの実行委員の元へ行く。

「実行委員でもないのに随分と熱心だな。ってか、音源どうするんだろう。」

 などと1人呟いていると、後ろから声を掛けられた。

「鹿平くん、おはよう。」

「ん、お!おはよう。」

 その声の主は如何にも頭の良さそうなメガネで、髪型もどこぞのお坊ちゃんのようだ。彼の名前は生保内(おぼない)神彦(かみひこ)。クラスマッチの卓球ダブルスでペアを組むこととなっている。今まではあまり話すことは無かったが、最近になって仲良くしているクラスメイトだ。

「明後日暇かな?」

「ああ、何も無いけど。」

「じゃあ卓球場行こうよ。そろそろクラスマッチだし、練習しとかないとね。」

「OK!」

 僕は生保内くんの誘いを受け入れた。確かに三高祭も大事なのだが、三高祭の前にあるクラスマッチも重要だ。2人で集合場所と時間を決めたところで、杉宮くんが「5時半くらいまではやるらしい」と言いながら戻ってきた。

「何だ?さっきちらっと聞こえてきたが、卓球場に行くのか?」

「杉宮くん、君は地獄耳だなあ。」

 ニコニコしながら言う生保内くん。実を言うと今まで生保内くんはクラスで静かにしているタイプの生徒だったので、なかなか関わりが無かったのだが、ここ最近僕たちとつるむようになってから表情が明るくなり、社交的になったような気がする。

「俺も行って良いか?」

 杉宮くんは少年のような(高校生は少年なのかも)目の輝きで僕と生保内くんに訴え掛ける。

「良いけど、杉宮くんは卓球出来るの?」

 卓球場に行って卓球出来ないとなかなか辛いからな、一応聞いてみる。

「え、出来ないけど。」

 さも当たり前のように言われてもな…。

「出来なければぼくちんが教えるよ。」

「神彦ありがとう!心の友よ!」

 ということで卓球場へ3人で行くこととなった。


 この日の朝のホームルーム、担当は教育実習生の生鼻崎先生だ。

「えー、昨日の定期戦は如何でしたか?ワタシは顔を日焼けしました。」

 生鼻崎先生は薄ら笑いながら、顔の該当箇所を指差して言う。

「それと、放課後の三高祭準備についてです。最近放課後に特別な許可無くスマホを使用している生徒が散見されます。本校のスマホ利用のルールは知ってますよね?」

 生鼻崎先生は教室を見渡し、間を空けてから続ける。

「基本的に玄関前のみです。三高祭前で楽しいのは分かりますが、羽目を外さないようにちゃんとメリハリを付けて準備の方、よろしくお願いします。」

 朝、反省文を書いていた人(杉宮理音)を見たのでなかなかタイムリーな話題だ。

「あと今日は2時間目にワタシの研究授業があります。色んな先生が見に来るとは思いますが、いつも通り積極的によろしくお願いします。」

 生鼻崎先生は最後にそう言い残し、朝のホームルームは終わった。


 今日も2時間目に緊張しきった生鼻崎先生による研究授業があったこと以外は普段通り時は流れ、放課後となった。生活委員の溜まり場と化している特別教室の引き戸を開けると、厨川くん、殿水さん、四ッ谷さんが既に着席していた。

「お疲れ。」

 僕のこの言葉に厨川くんは沈黙、殿水さんはにこやかに「お疲れ様です」、四ッ谷さんは恥ずかしそうに会釈という形で返ってきた。いつもの席である四ッ谷さんの右隣に座る。座ってすぐ、四ッ谷さんは僕の左二の腕をつついてきた。

「昨日の配信観た?」

「配信?何かあったっけ?」

「かかる小坂の鉄路遊園(レールパーク)の3期放送直前スペシャルだよ。」

「あ、あれ昨日だったのか…!観てないな…。」

「アーカイブで残ってるから後で観てみて。」

「今日帰ったら早速観るよ。」

 前回も出てきたと思うが一応補足。『かかる小坂の鉄路遊園』とは第1、2期が10年以上前に放送された人気アニメである。そろそろ3期の放送が始まるので僕自身かなり楽しみにしている。最近は四ッ谷さんとこの話題をすることが多い。

「遅れたー!」

 などとデカい声で入室して来たのは神代さんである。僕の右隣の席に座る。ここがいつもの席である。

「勝雄はさ、クラスマッチ何出るの?」

「僕は卓球出るよ。」

「…それだけ?」

「そうだが。」

「はー、つまんな!学校行事はもっと楽しむべきよ!」

 僕は卓球が出来るだけで十分楽しいので、神代さんにそんなこと言われる筋合いは無い。

「そう言う神代さんは何出るんだ?」

「あたしはね、バレーとバドとソフト!」

「全部運動系か、頑張るねえ。」

「勝雄も男なんだからもっと体を動かしなさい!」

「『男なんだから』って何だよ。」

 という僕の呟きを拾わず、神代さんは僕にした質問を他3人にも振る。普通の人間である四ッ谷さんはともかく、普通の人間でない厨川くんとそもそも人間ですら無い殿水さんは運動会の時のようにチート級能力を発動するに違いない。因みに厨川くんは将棋、四ッ谷さんは囲碁に出るらしい。殿水さんは僕と同じ卓球だったので一応明後日の卓球場での練習に誘ってみることにした。…アンドロイドって練習必要なのかな?

 そんな雑談をしていたところに土崎先生がやって来た。今日の朝僕が聞いたことと同じ話をして解散という、随分とあっさり終わった。…今日はダンス練習があったな、いつもならここで帰れるのだがまあしょうがない。僕は1年6組の教室へ向かう。

キャラクター紹介!

(10)向能代春香むかいのしろ はるか

所属:秋田県立三清学園高等学校1年A組担任、学園非公認組織 HSMハスムのリーダー

誕生日:1月27日

本名:ギャラクス

 一人称「オレ」、赤みがかったお団子ヘアーと特攻服が特徴的な異世界アティカシア出身の超能力女性教師。まさに女番長といった風貌と言動である。戦闘時は竹刀で戦う。

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