樹
ヨッシーの童話「樹」
そこに樹があった。
樹は、
太い幹をもち、
長い枝を広げ、
世界を包むほど大きかった。
しばらくすると、
塵が飛んで来た。
樹の根元には、小さな塵が集まった。
小さな塵から、小さな生命が生まれた。
小さな生命は、
小さな生き物になり、
小さな動物になり、
小さな人間になった。
しかし、
小さな人間は、か弱かった。
生まれては死に、
生まれては死に、
小さな人間は、生まれても、すぐ死んでしまう。
か弱かった人間は考えた。
「皆で助け合おう」
人間は助け合った。
助け合って、少しずつ増えていった。
そして、
樹の下に小さな村を作った。
樹から水をもらい、
樹から食べ物をもらい、
樹から、雨風をも守ってもらった。
人間は幸せになった。
時は流れた…
樹は歳をとった。
代わりに、人間は裕福になっていた。
人間は、
町をつくり、
国を造り、
贅沢になっていた。
人間は、すっかり樹に守られていることを忘れ去っていた…
ある日、人間が騒ぎ始めた。
「何で、こんな所に樹があるんだ」
「なんて、邪魔な樹なんだ」
「なんて、偉そうな樹なんだ」
「そうだ、切ってしまおう」
「こんな樹、皆で切ってしまおう」
「それ、切ってしまえ!」
「それ、切ってしまえ!」
ギリギリギリギリーーー
ギリギリギリギリーーー
バッターン
樹は倒された。
人間はよろこんだ。
すると、
突然、突風が吹き始めた。
突然、豪雨が降り始めた。
突然、大地が揺れ始めた。
ゴゴゴゴゴーーー
川は溢れ、
作物は流され、
国も壊れた。
「助けてくれー」
「私を助けてくれー」
「私だけを、助けてくれーーー……」
……
……
人間は死んだ、
誰もいなくなった。
そして、
切り倒された切り株には、
小さな芽が出ていた…