雪男と凍った涙
ヨッシーの童話「雪男と凍った涙」
むかし、むかし、
ある村に、とっても身体の大きい大男が住んでいました。
大男は、優しい性格でしたが、見た目が怖かったので、みんなから怖がられていました。
一生懸命仕事をしても、誰ひとり喜んでくれません。
困った大男は、とうとう、ひとりぼっちで山奥に行ってしまいました。
そして、何十年かがたち、大男のことを憶えている人は誰もいなくなりました…
ある年、
寒さが続き、村の作物がまったく取れない日が続きました。
「お腹が空いたなぁ」
「あの山奥に行ったら、食べ物があるかな」
少年が言いました。
「行ってはダメだ!あの山奥にはな、雪男が住んでいて、近づくものは、みんな食べられてしまうぞ」
村の長老が言いました。
「でも…」
少年は長老の話を聞かず、山奥に出かけてしまいました。
山道を歩いて行くと、
木々は枯れており、食べ物などまったく見つかりませんでした。
「何もないや、木の実一つない」
少年は食べ物を求めて、どんどん山奥に入って行きました。
「ここにもない…」
どこにも、食べ物は見つかりませんでした。
とうとう、少年は疲れと空腹で倒れてしまいました。
すると、
ガサ、ガサ、ガサ、
雪の中から、大きな雪男が現れました。
雪男は倒れた少年を見つけると、クンクンとにおいを嗅ぎ、かついで家に連れて帰ってしまいました。
雪男が、少年をベッドに寝かせると、
「ひゃあ、冷たい」
少年は飛び起きました。ベッドは氷でできていました。
「おやおや、寝心地がいいのに」
雪男はニコニコして、スープを持ってきました。
「さあ、召し上がれ」
少年がスープを食べようとすると、
「ひゃあ、冷たい」
スープは、凍っていました。
「おやおや、美味しいのに」
雪男は、凍ったスープを美味しそうに飲みました。
「じゃあ、これをどうぞ」
今度は、パンを差し出しました。
「ひゃあ、硬い!」
パンは、カチンコチンに凍っていました。
「おやおや、美味しいのに」
雪男は、凍ったパンをガリガリと食べました。
「これは、食べられるだろう」
雪男は、リンゴを持ってきました。
リンゴも凍っていました。
少年は、とってもお腹空いていたので、我慢して凍ったリンゴを食べました。
「寒い、」
少年は、ますます身体が冷えてしまい、ぶるぶると震え出しました。
「寒いのかい?」
雪男は、毛布を少年にかけてあげました。
「ひゃあ、冷たい」
毛布も凍っていました。
少年は、ますます震えが止まりません。
「ごめんね。僕の家には、これしか毛布がないんだ」
と、雪男が言いました。
「寒い、寒い…」
少年は、だんだん身体が動かなくなってきました。
「どうしよう」
雪男は、困ってしまいました。
「……」
とうとう、少年はまったく動かなくなってしまい、死んでしまいました。
まただ…
雪男は、今まで、何人もの人を助けようとしましたが、みんな死んでしまいます。
雪男は、何故だか解りませんでした。
しかし、人が死ぬと、悲しくて悲しくて涙が止まりません。
ポツリ、ポツリと落ちた涙は、寒さで、すぐ凍ってしまいます。
そして、とうとう、凍った涙の山ができてしまいました。
雪男は、山になった凍った涙を見て、また、涙を流しました。
ある晩、
雪男は、凍った涙を一つ夜空に投げてみました。
パァーッ、
凍った涙は、星になりました。
パァーッ、パァーッ、
一つ、二つ、
雪男は、凍った涙をいくつも投げて、夜空の星をつくりました。
その時、
キラキラキラ、
夜空に、流れ星が落ちてきました。
雪男は、お祈りをしました。
「どうか、村が暖かくなって食べ物がいっぱい取れますように」
すると突然、
その流れ星が、雪男の前に落ちてきました。
バーン、
雪男が、そーっと、その流れ星を触ってみると、
「暖かい、」
流れ星は、とっても暖かでした。
雪男は、ずっと寒い山奥に住んでいたので暖かさを忘れていたのです。
ポッ、ポッ、
急に、雪男の身体が熱くなってきました。
「熱い、熱い」
雪男は、雪の服を抜き出しました。
ポン、ポン、ポン、
とうとう、雪男は裸になってしまいました。
すると、
ガラガラガラガラ、
凍った涙の山が溶け出しました。
ピョン、ピョン、ピョン、
中から少年たち飛び出してきます。
「あーあ、よく寝た」
少年たちは、みな生き返りました。そして、元気に村に帰って行きます。
「よかった」
いつのまにか、雪男は元の大男に戻っていました。
その後、
村は、暖かい村に戻り、作物もいっぱい取れるようになりました。
大男は山奥から降りて来て、村人と幸せに暮しました。
おしまい。