ならず者、スキルを覚えたい!?
「なぁ、スキルってどうやって手に入るんだ?」
俺は、再び勇者として宿泊可能になったホテルで遅めの昼飯を突きながらフィレンに尋ねる。
「スキルは指南書だったり座学で得られるものと実戦で得られるものの二つね。強力なものほど、ダンジョンの奥にある指南書だったり、実戦での経験が必要になるの」
「実戦ってことはそのスキルをなんとなく使えるようになっていくってことか?」
「何を言ってるの?」
フィレンは聴き間違えたのかと目を丸くしてから、得意げに言う。
「実際に受けたことのあるものって意味よ」
「だいぶ命懸けだな!?」
「そりゃそうよ。まぁ、だからこそ指南書とかの書写しとかが出回っているんだけどね。けど結局大事なのはそのスキルへの理解度よ」
そんな違法コピーとか海賊版とかまであるのかよ・・・もっとこうスキルポイント的なRPGみたいなノリじゃないんだ・・
「た、たとえばさ!レベルみたいなのってないのか?そのレベルによってスキルポイントがーみたいな」
「あぁあるわよ」
「あるのか!」
これだよコレ!こういうザ・異世界みたいな流れを待ってたんだよ!
俺はウキウキしながら口を紙で拭うフィレンの声を待つ。
「技を覚えるときにレベルが足りないと・・・」
「足りないと・・・?」
「死ぬわ」
「だからなんでそんなシビアなんだよ、この世界!!!」
俺は頭を抱えながら床に寝転がる。
この世界に来てからの俺の戦闘経験といえば
マンイーター:吊るされただけ トロール:潰されただけって・・ろくな経験してないぞ
・・・この世界を救う勇者というよりもまるでコレじゃ
「モブじゃねーか・・・」
「どうしたんだい、騒がしい」
俺の顔を見下ろすようにして覗いてくる勇者の顔がーーーって
「そうだ!頼む、拘束魔法教えてくれ!!」
「き、気持ち悪い!急に泣きながら手を取らないでくれ!」
俺の両手を振り払うと、勇者ことユウはカッコつけて髪を流しながら
「リストレインのことかい?でもどうして急に」
「頼むよ!転生してきてスキルが一つもないなんてかっこがつかないだろ!!」
「・・・別にこの魔法じゃカッコつかないと思うけど」
それもそうだけど!!でも一つくらい魔法使いたいじゃん、夢じゃん男の!!
俺のぐずりに観念したのか、ユウは大きくため息をつくと
「わかったよ・・でも、遠慮はしないからね?」
ニヤリと笑ったその顔で、俺は後悔をすることになるかもしれないと悟った・・