ならず者、追放される!?
広がる火の手から逃れ、なんとか俺たちは村に着く。
「お、おい!あれどうすんだよ!?」
「しょうがないのだ!あの魔法は制限が効きづらいのが難点なんだし・・・!」
「いい二人とも?バレなきゃ犯罪じゃないの。堂々とホテルに帰るの。犯人が堂々としてれば逆にバレにくいってモノよ」
そう言って俺たちを先導するように歩くフィレンは、胸を張り顔はしっかりと前を向き、大股で歩く。その姿は確かに森に放火したパーティーのリーダーとは思えないほどに面の皮が厚い。
優雅に一歩、また一歩とホテルに向かって歩いていると
「おい、お前。ちょっと待て」
「ンン!?ななな、何かしら!?」
おい、堂々はどこいったよ
「お前たちがクエストに行った村が燃えてると警報が出たんだが何か知らないか」
質問というよりも、お前だよな?と詰め寄るニュアンスの大男の言葉にフィレンは目に涙をためプルプルと震えている。
「お、おい!私たちは勇者だぞ!!口の聞き方には気をつけろよ!!」
「んだ、このチビ」
「あぅ・・・」
メンマまで体をプルプルと、大男の前で震わせ出す。
まじかこの男、一瞬で仲間二人を・・・
下を向いて震える二人と見下す大男。冷戦状態な現状を傍観していると、徐々に村の騒ぎが大きくなっていることに気づく。
「いたわ!!勇者を名乗ったクズどもよ!」
「犯罪者の分際で勇者を名乗るとは!恥を知れ!!」
思いつく限りの罵詈雑言。そんな村人に対しフィレンは、悲劇のヒロインのように涙を拭う仕草を交えながら悲痛に叫ぶ。
「そんな、皆さん!!私が村の危機から救ったのを忘れたのですか。今一度落ち着いてください。紛れもなく私たちこそがあの勇し――」
「勇者がなんだって」
フィレンの声を遮って、暴言の嵐がピタと止まる。
そして周辺にいる人々の目線はその声の主の方に釘付けになる
マントをして髪を逆立てたその好青年は、背中に背負っている剣も相まって、その風貌はまるでーー
「勇者は、僕なんだけど」
「「「ンンッ!?」」」
その青年はゆっくりと俺らの方に近づいてくる。俺らと彼の間には村人の群れがあったが、本当の勇者の神々しさに村人は道を開け、自然と道が開かれていく。
本物の勇者は俺らに手を伸ばせば届くほどの距離まで来ると、じっとフィレン、メンマ、俺の順にじっくりと顔から全体にかけて見る。
顔は微笑みを称えながらもその目は人の奥底を見るように冷たい目だった。
ピリピリとした空気が俺たちの間に流れると、次の瞬間
何かが空気を裂いたかと思えば、刃が俺の首元まで伸びてきた。
一気に間合いを詰めた勇者は鼻がつきそうなその距離で俺を睨みながら
「君、魔王幹部だろ。その顔、とてもじゃないが勇者と名乗るには人相が悪すぎる」
「お前もなかなかの悪だろ!?」
「はは、生憎僕は悪の敵である勇者さ。・・・今からここを出ていけば見逃してやる。ただ、もし僕と戦おうというならーー」
勇者は手に力を入れる。
首元の刃がほんの少し、俺の首の肉に食い込みドロドロとした血液が首の筋をなぞって垂れてくる。
「容赦はしないよ。さぁ、どうする」
なおも俺から目線を外さない勇者と俺は睨み合う。
まるで因縁の相手との最後の決戦のような雰囲気の中俺は・・・
「すんませんでしたー!!」
全力で背を向けて逃げ出したーー!
後ろからゴミを投げられながらもただただ懸命に走り続けた・・・・ !
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