お仕事
「すみません。ノクト領主に会いにきたのですが?」
「名前を。」
「メイソンです。」
この国での私はメイソン。
占い師として過ごしている。
「メイソン...メイソン...。おっ、あった。メイソン中に入れ。」
まず門を通り抜ける。
次に持ち物検査だ。
「前に出なさい。そして動くのをやめなさい。」
指示通りにする。
「異常無し。身だしなみを整えて面会しなさい。」
「ありがとうございます。」
よし。完璧だ。
「ありがとうございました。失礼します。」
前の人が出てきた。
今日は面会にくる人が多い気がする。
「次。メイソン。中へ入れ。」
私は中に入った。
広々とした空間。
明るい部屋。
煌びやかな照明。
美しい絵画。
真っ直ぐに敷かれた赤いカーペット。
領主の左右には今回の依頼主の領主の奥様のジャーネックと領主の息子のアクトがいた。
ジャーネックはこちらを見て笑みを浮かべていた。
ドアが閉まる音が聞こえた。
仕事の時間だ。
「ゴホン。えー、メイソンよ。其方は何用でここに来た。」
「本日は貴重なお時間いただき、誠にありがとうございます。本日はノクト領主の息子のアクト様に御用があって参りました。」
「うむ。してどのような要件かね。」
「はい。実は最近、占い師の仲間たちからお聞きしたことなのですが、ここら辺で子供に不吉なことが起こるという噂を耳にしました。それで、本日ここに参りました。」
「そうなのか。ではアクトよ。応接室に行きなさい。そうだな、念のため誰かと一緒に行きなさい。」
「ノクト様、それなら私が行きますわ。」
ジャーネック様が立候補した。
これはありがたい。
「そうか。では頼もう。メイソン殿も応接室へ行きなさい。」
「はい。では失礼します。」
よし。順調だ。
ジャーネック様の後をついていく。
「さぁメイソンさん、中へどうぞ。」
「失礼します。」
「アクト。そこへ座りなさい。」
椅子にちょこんと座った姿はかわいい。
しかし仕事だ。
「アクト様。占いの方を始めさせていただきます。ジャーネック様万が一のため手を繋いであげてください。」
「よろしくお願いしますわ。」
ジャーネック様は悪い笑みを浮かべていた。
何も知らないアクト様はお気の毒に。
「ではいきます。」
私は水晶玉を取り出し、手をかざした。
水晶玉が光る。
水晶玉から紫の文字と赤い糸が出てきた。
「アクト様は赤い糸を。ジャーネック様は水晶玉を見ててください。」
「分かりました。」
「分かったです。」
かかったな。ハハ。この瞬間がたまらねえ。
この安心した顔から突き落とすのは本当にたまらない。
気持ちいい。最高に幸せだ。
「お母様息がしずらいです。」
「アクト、大丈夫よ。我慢しなさい。」
お二人の顔色が悪くなっていく。
「ねぇメイソンさんちょっときつくなってきたんですけど、本当に大丈夫ですか。」
どういうことだ!と言いそうな顔をしながらなんか言ってきやがった。
ここで残念なことを教えてあげよう。
「実はジャーネック様、今回のご依頼なんですが破棄させていただきますね。」
「なっ!」
驚いた顔をしている。
「何を言ってるのメイソンさん。冗談きついですわ。」
引きつった顔をしている。
「今回の依頼内容をおさらいします。」
小声で言った。
「今回の依頼内容はアクト様の殺害とジャーネック様の拉致殺害です。それでは失礼します。」
私は服の中から大きな袋を取り出しジャーネックを被せた。
大きかった袋は小さく縮んでいく。
抵抗する間もなく小さくなってしまった。
アクトはそれを見て絶望していた。
身体が震えている。
「それではおやすみなさい。」
アクトは大きく痙攣して目から血が噴き出した。
赤いカーペットで敷かれていた床はより一層緋くなった。
お仕事おしまい。
私は窓から飛び降りて裏の森の中へ消えていった。
依頼完了報告をするまでが仕事だ。
私は服を着替えながら走り元いた部屋へと帰った。