台場悠里④ 悠里の農筋?ステータス
悠里の資質の鑑定結果を書いてみる。
筋力 :SSS
体力 :SS
知力 :B
精神力:S
敏捷性:A
魔力 :C
ハッキリ言って脳筋ステータスである。
「これって!」
「そう、結構Sが多いんだ。特に筋力がスゴい。
正直、オレも今までおまえ以外でSSS評価をされてる奴を見たことがない。
戦士系の奴らはもちろん、勇者ですらSS止まりなんだぜ?」
最初の頃にクラスの1/3を鑑定眼で見ただけだが、言い切っていいだろう。
「それじゃあ、わたしは……」
「筋力や体力の高さだけなら、戦士系の加護を受ける素質が十分あるはずだ」
「だったら、なんでわたしは農民なんて、……努力が足りないから!?」
「いや、このパラメータは素質だ。
つまり理想的な訓練を行った末に到達できる、頂点の値なんだよ。
今の力が足りないとかいうことじゃない」
「それじゃあ、一体なんで……」
「そこまではわからない。
もっとも、オレの鑑定能力も発展途上だからな。
鑑定士として実力を上げていけばいずれわかるかもしれないけど……」
ウソを言ってるつもりはない。
ただ、仮説がないわけでもなかった。
例えばオレの場合、元の世界でのゲーマーっぷりが鑑定士と似てる気がする。
特に自分の見立てや知識や情報から、ゲームなどの出来を判定するあたり。
またレンも、元の世界では商店を経営したかった、と言っていた。
つまり与えられる加護というのは、前世の自分の振る舞いが関係している。
そういうことではないだろうか?
ただ彼女の場合、これだけの能力だ。
元の世界で農家の生まれだったから、なんて話じゃないとは思うが……。
考えごとをしているうちに彼女が黙ってしまったのでふと見る。
珍しく神妙な顔つきをしている……かと思ったら、
「まっ、いいか。
それなら、努力してればいつか戦士とか勇者とかになれるかもしれないし。
うん、もっともっとやる気が出てきた!」
と、こいつらしい前向きな結論を口にした。
だが、一回与えられた加護が変わるなんて話はオレが知る限りない。
第一『農民の加護』を受けた者が戦士の訓練をしても成長は期待できない。
そのことはオレの持つもう一つのスキルによって分かっている。
ましてや勇者の場合は全ての素質が最低でもSになっていなければならない。
つまり知力系が特に足りないおまえは……。
なんてことを言ったら、さっき見た三途の川の幻を現実にされそうだ。
どうあれ目はないのである。
鑑定士が鑑定以外のことをしても。
農民が農業以外のことをしても。
「ユーリさん!」
不意に、店の扉が開いて、レンが出てくる。
「あら、めずらしい。
ユーリさんと一緒に話しているなんて。
それに、リタ殿下?」
「ああ。ちなみにここでは一介の学生だから普通に接してほしいってさ」
「お礼に参りました。
それで、あの……これからも友人のように接していただけると……」
「ええ、わかったわ。
こちらこそ、シュウくんをよろしく頼みますね」
いったいなにをよろしく頼むつもりだろう。
「で、レン姉さん。悠里さんに用があるんじゃないの?」
「ええ、ちょっと荷物を運ぶのを手伝ってほしくて。
来るようにお願いしてたのよ」
「そうそう、こんなところで油売ってる場合じゃなかった」
なんだそういうことか。
悠里のさっき言ってた『助けを呼ぶ心の声』ってなんだったんだ。
「それじゃあ、お店の中に入ってきてちょうだい」
「はい!」
レンの話に勢いのある返事をすると、すくっと立ち上がる悠里。
「そういえば、シュウくん。
昼すぎに『読書会』の方が教室に訪ねてきたのだけど。
心当たり、ある?」
読書会……確か古い書物やスクロールを解析している王国機関だっけ?
詳しいことは知らないけど。
「読書会? いや、ないと思うよ。今まで会ったこともないし……。
ひょっとして今日ここに来る?」
「いえ、帰ったことを伝えたら「また来る」って一言告げて帰ったわよ?
でもそうね、一応お店の場所も伝えておいたから。
ひょっとしたらお店にも来るかもしれないわね」
「なるほど、じゃあとりあえずオレから会いにいかなくてもいっか」
「そうね、じゃあ、二人でごゆっくり……」
「姉さん、それどういう意味さ」
オレの問いに特に返事をすることなく、レンは店に入る。
悠里もそれに続く。かと思うと、扉の前でこちらを向いて
「ありがとね」
と一言。
「え?」
「ありがとって言ったの! もう、二度も言わすな!」
てか、お礼を言われるようなことをしただろうか?
そう思ったがとりあえず頷いておく。
「けど感謝してるなら、もうオレを『アンタ』とか呼ぶなよな。悠里」
「ふん、アンタはアンタ。
名前を呼ばれたいならキチンと訓練に参加しなよ。
今日のお礼にバシバシ鍛えちゃうから!」
そういうと、悠里はニコリと屈託のない少年のような笑みを浮かべた。
少しドギマギして言い返せない間に、彼女は店に入っていく。
……トレーニングって、おいおい。
「あの……」
しばらくしてリタが遠慮しがちにこちらに声をかけてくる。
「悠里さんの言っていた、勇者さまが学園を去るって本当ですか?」
「去る、じゃない。追い出される、だ。
オレ程度じゃあ、魔王退治には役に立たないってことさ。
なにしろ勇者さまじゃないんだからな」
「そんな、それじゃあ、貴方ほどの人でも魔王は倒せないのですか?」
……彼女はいったいオレのなにを見てそんなに買ってるんだろう。
ここでオレはリタの言葉を肯定すればいいはずだった。
弱いから魔王を倒せないと。
だが、オレの奥底のなにかがそれをさせなかった。
それは『男の意地』とは多分違うモノ。
「判断するにはまだ材料が足りない。
オレはまだ魔王のなにも知らないんだから」
そう、まだ相手のステータスも能力も行動パターンも弱点も分かってない。
もうオレには関係ない、と思っていても考えてしまうんだ。
能力もない情報もない仲間もいない援護もない。
今の状況からどうやったらこの無理ゲーをクリアできるだろうと。
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