↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
76/174

バルドゼクス戦② 実験中の新武装を苦し紛れに出してみる

 落下して無様に地面に伏している、そんなオレに魔物が浴びせる言葉。


 それは勝ち誇る言葉でも侮蔑の言葉でも、ましてや賞賛の言葉でもなく。

 疑惑を露わにした言葉だった。


「いや、オレはなにもしてないさ」


 ウソはついていない。

 なにかしているとすれば、それはマルチナだ。


 こいつは戦闘開始から、自分だけにタイムストップの指輪を発動させている。


 それも指輪の力を全開で発動するのではなく、敢えて弱く効かせていた。

 それによって発動中でも周りは完全に止まらず、ゆっくり動く。


 この状態だと、敵にリアルタイムで対応しやすくなるのだ。


 また、発動時間が延びる効果もある。

 鑑定眼によって新たに発見した使い方である。


 マルチナはこんな感じで相手の攻撃に備えていた。

 そして的確な場所に魔法物質を生成し、ダメージを緩和してたわけだ。


 うん、なんとか敵の攻撃に反応できてる。


『まあ第一関門は突破と言ったところか。

 さすがだな、マルチナ』


『ええ。マルチナはクールなAIですから』


 なんか、その言い回し、気に入ってくれたようでなにより。



「どうやら、御前試合とやらで勇者を負かしたのはまぐれじゃなさそうだな。

 だが、ただ受けるだけか? なにか攻撃はないのかよ」


 オレは懐から神鋼の金属片を出して握る。


 バルドゼクスがさっきよりもさらにすさまじいスピードで接近。

 『やらせん!』と言わんばかりに、正拳突きをかましてくる。


 それをオレは回転の指輪の反発力を利用し、すんでの所で後方へと待避。

 同時に棍を延ばして突く。

 反発力を付加してだ。


 それは見事に相手の腹部にヒットしたが、ダメージを喰らった様子はない。

 オレは棍を一度引っ込め、延ばしながら今度は右から叩きつける。


 それを相手は左手でつかんだ。

 オレは棍を構成する魔法物質を解放し、縮める。


 その上で、再度棍を前方に向けて伸ばし、奴の眉間近くを突いた。

 だがやはり大して効いていない。


 そんな攻防が一進一退で繰りひろげられる。


 タイムストップの指輪の限定的発動はオレにもできる。

 敵の動きが見えているのは、それで自分の思考速度を適度に速めてるからだ。


 これで相手の動きは見切れるが、それでも身体が強化されるワケではない。

 この思考速度に合わせて自分の身体を動かすのは正直キツい。

 

 そして、敵はまだ本気を出していないのが分かる。

 油断はできない。失敗してもろに喰らえば1撃で致命傷。


 さっき溺れかけたよりも遙かに鮮明に、死のイメージが湧き上がる。



 逃げたい。



 だけど、オレがここで逃げれば、間違いなく皆が殺られる。

 リタも――。



「なかなかどうして、ついて来れてるじゃねーか。  

 いいだろう、勇者にもやった技を放ってやろう。

 ちなみに、後ろの砦のあの跡は、その攻撃によるものだ」


 砦の外壁を半壊させたやつか!


「それと勇者にも言ったが、お前がそれを避ければその攻撃は砦を貫き人が死ぬ。

 さて、お前ならどうする?」

 

 どうするもなにも、オレにあの規模の攻撃を防ぎきれるのか?


 敵が腰を落とし、左手で右拳を握りつぶすような構えを見せる。

 そして右拳を前に突き出した。 


 クソっ! こうなったら、


『マルチナ! アレをやってくれ!』


 目の前の光が瞬く間に大きくなり、オレを包み込み。

 やがて今度は闇に閉ざされる。



 視界が戻ると、オレは金属質の薄い膜でできた球体の中にいた。


 風船が弾けたようにその膜が収縮、オレの身体にまとわりつき、鎧を形成。

 さらにその鎧の背中の部分が膨れ上がり、最近馴染んだ形状に変形する。


 『銀翼』


 そう呼ぶにふさわしいモノが、オレの背後から側面にかけて形成されていた。


 あるいは、神鋼翼とでもいうべき武装。

 それが、バルドゼクスの必殺攻撃からオレを守ってくれたのだ。


 バルドゼクスはニヤリと笑いながら、すかさずオレに蹴りを入れてくる。

 だが銀翼が変形。敵の足とオレの身体の間に入り、蹴りを完全にさえぎった。


 さらに何発かあるいは何十発かオレに向けて拳の連打を繰り出す。

 にもかかわらず、そのこと如くが銀翼の変形によって阻まれ、オレに届かない。


 奴も異様さを感じて、オレと間合いを取り直した。



 神鋼翼は具現の指輪によって生成された、神鋼の棍と基本的には同じもの。


 使用者の意思によって自在に変形が可能。

 神鋼と同じ強度と本来の魔法物質の弾性を併せ持つ。


 今までの素の魔法物質と違って勇者レベルの攻撃でもそうそうは破れない。

 斬撃や突きにも強い。


 前にこよりと『アニメっぽい武装』を語り合った時に検討したモノの一つだ。

 月霊○液とか砂の盾とか、あのあたりも検討に影響してる。


 実際やってみると実用化に時間がかかり、慣れも必要と感じていた。


 重かったり、制御が複雑で思うように動かなかったりするし。

 だけど、マルチナが翼の操作に専念することによって制御の問題は解決した。


 今までの神鋼翼の形状変化は、全てマルチナがやってくれたことだ。


 とはいえ重いのは相変わらずで、今も翼の展開中オレの足では動けない。

 月霊○液ほど使い勝手がよくなければ、絶対防御を誇れるようなモノでもない。


 それでも今、一旦完成をみたと言える。

 とりあえずはこれで十分だ。



 マルチナは出会った時『オレの身体にできることしかできない』と言っていた。


 だけど言い換えると、こいつは、

 『オレ以上に、オレの身体をうまく使うことのできる』存在なのだ。



「しかし、変わった武装だな。それともアイテム効果か?

 そんなのを使ってる奴なんぞ見たことがない。

 つい最近目覚めたばかりだからかもしれないが」


「つい最近目覚めた? どういうことだ?」


「ああ?

 オレは、魔王ヴェール様につい最近創られた存在なんだよ」



 なんだって?


「おい!? 魔王は封印されているんじゃないのか!!?

 それに魔王に創られたって」


「ああ数年前まではな。だが、もうとっくに目覚めてるぜ?

 あ、これはバルドロールに口止めされてたか」


「待ってくれ!! じゃあ、今魔王は――」 


「そんなことはどうでもいいじゃねーか。

 今はオレと戦ってんだからよ。ほら、再開するぞ!」


 考える間をあたえないと言わんばかりに魔物が遠慮なく突っ込んでくる。



 とにかく今はコイツをなんとかしないと。


 オレの戦闘の意思に呼応するように、神鋼翼の先端が棘のように変形。

 そして狙った部分に先端が伸びた。


 そのままいけば貫けるところだったが、バルドゼクスはその棘を腕でいなす。


 奴の全身を意識すると、今度は翼の先端が何十本にも分かれた。

 そしてそれぞれが棘に変形。対象に襲いかかるが、それも全て避ける。


 本来、攻撃に関しては神の加護が働いていないため、大して効果はないはずだ。

 だがそれを変形速度によってカバーしている。


 つまり、スゲー硬いモノをスゲー勢いでぶつければスゲーダメージが入る。

 加護なんて関係なく、物理法則に従った結果が得られるという単純な話。


 奴もさっきと違って、自分から当たりにいったりしない。

 おそらく、まともに当たれば無傷ではいられないことが分かってるのだ。


 得意顔をみせるそいつの腹部に、一発攻撃が当たる。


 棘ではなく、回転の指輪の反発力で飛ばした地面の石だ。

 単純に比較はできないが、違法エアガンの弾程度の威力は出てるだろう。


 そしてこいつは、残弾数をあまり気にせず使える。


 マルチナが神鋼翼の制御をやってくれるからだ。

 だから攻撃しながらでも、オレは回転の指輪に魔力を補充することができる。


 正面からの棘の攻撃に、地面より全方角からの石つぶての攻撃。

 疲れたのか、次第に棘の攻撃がかするようになってきている。


「ハハ! まさか、ここまでついて来れる人間がいるとは思わなかったぞ!」


「てか、お前のほうが息を切らしてるだろ。

 結構苦しいんじゃないか?」


「いや、あまりにも楽しくて、ついはしゃいじまってな!」 


 バルドゼクスのほうは、まだまだ余裕があるらしい。


 現状なんとか、ダメージをあたえられそうなラインまで持ってこれてる。

 だけど、すでに大体の手は打ち尽くしてしまっていた。


 残る大技が『黒の中の黒』の他に、もう一つないこともない。

 ただ、それは一か八かの手になる。


 この状況でどこまでしのげるか……。


 突然、バルドゼクスが姿を消した。

 かと思うと、背中に強い衝撃を感じ、前方に吹っ飛ばされる。


 奴の攻撃が後方の薄い部分を突き破り、オレにダイレクトヒットしたのだ。



 この神鋼翼の弱点の一つを早々に見破られてしまった。 


 マルチナはオレの目で見た周りの状況を元に翼を操作している。

 つまりオレの視界外の背後に関して、精密な操作ができないのである。


 突き破る時に威力の大部分が削れるため、致命的なダメージにはならない。

 だが、何発も食らっていいようなダメージでもない。


 このままではじり貧だ。


 一か八かは避けたいなんて言ってる場合じゃない。

 とにかく、大技を仕掛けるために時間を稼がないと。


 オレは神鋼翼を変形させ自分の全方位を覆った。



「ハハ! 確かにそうやれば前も後ろもねーよな!

 だが、その状態でオレの攻撃を完全に防げると思ったか!」


 目の前にできた直径2m前後の神鋼の球体を前に奴が笑う。


 突然、金属のぶち破られる轟音があたりに響く。


 やつはさっき砦の外壁を壊した時のような攻撃を仕掛けてきたのだ。

 今度は、拳圧を前に飛ばすのではなく、拳に留めたまま。


 その攻撃は神鋼をも貫いた。球体の中、闘気で発光する奴の拳。


「これで蒸し焼きだ! 人間の身体では耐えられまい!」


 このまま、球体の内側に拳の気を解き放たれたら。

 奴の言うとおりオレは粉々に砕かれ、骨も残らず焼かれてしまう。

続けて21時ごろに投稿します。



ここまで読んでいただいて、ありがとうございます!


もし、


・面白かった!

・続きが気になる!

・更新がんばって!

・応援するよ!


と思われた方


よろしければ

広告の下にある☆☆☆☆☆から評価をいただければ大変うれしいです。


すごく面白かったなら☆5、あまり面白くなさげでしたら☆1と、

感じたままでかまいません。


また、ブックマークいただければ作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。