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辺境攻防⑤ うまく敵を誘導できた、けど……

 古城のコントロールルームとも言える隠し部屋。


 そこでオレたちは、この城の機能を確認することができた。

 それを念頭に置いた上で、敵をおびき寄せる準備を開始する。


 まず橋を落としたところまで馬車で戻って、魔法物質で新たな橋を架けた。


 そしてさらに橋の向こう岸の少し手前に魔法物質で透明な壁を作る。

 これで敵はそれに阻まれ、最後まで渡りきれないはずだ。


 発生した魔法物質は、オレが解除するまで独立した物体としてふるまう。

 オレが遠く離れても1~2日は消えずにその場に残り続ける事を確認済みだ。


 これはある種の餌となる。


 単に橋がなくなれば、連中はすぐに迂回路を探すだろう。

 だけど目の前に見えているのなら、なんとか渡れないか考える。


 少しでも時間が稼げるってワケだ。




 一通り準備が完了したので、隠し部屋で待機をする。

 そこには城の周囲を望遠してモニターに表示する仕組みがあった。


 その範囲は数十キロ先にもおよぶ。

 このモニターで砦側と村側の両方の橋を監視できる。


 作戦の手順はこうだ。


 まず、砦側の橋を全ての魔物が渡ったところで魔法物質の橋を消す。

 そして行き場をなくした魔物を城郭都市内に誘導して閉じ込める。


 そのあと城を脱出。

 外への抜け道へはこの部屋の奥の大鏡で転移できる。


 そのあとは、魔物に見つからないよう隠した馬車に乗って避難した村人と合流。

 万が一魔物が追いついてきた時に備える。


 ここまでできれば上出来だろう。


 足止めをする目処はだいたい立った。

 だが、敵をおびき寄せるのはぶっつけ本番。


 最悪、手が通じない可能性もある。

 だけどまあ、とにかくここまできたらやるしかない。



 オレたちは部屋に交代でつめて、夜通し砦に通じているほうの橋を見張った。


 夜も明けて、朝となり昼になる前くらい。

 ようやく敵軍の先頭が姿を見せる。


 敵軍の姿を確認したあとWikiを開くと、早速内容に更新があった。

 その規模は約8000体。聞いていた話の倍ちかくある。


「勇者さま……」


 不安がるリタ。


 Wikiの内容は自分にしか見れないはず。

 だけどオレの表情に動揺の色が浮かんだかもしれない。


「まあ、手は一通り考えてある。あとは、なるようになるさ」


 オレはできるだけ平静を装い視線をモニターに映す。


「はい! みんなでがんばりましょう!」


 リタのいつもの声を聞いて、オレもなんとなく大丈夫なような気がしてきた。




 しばらく監視しているうちに、敵の隊列が途切れたのをモニターから確認。

 そろそろ頃合いだろう。


 オレは具現の指輪に意識を集中し、偽の橋となっていた魔法物質を解放。

 たちまち村側の橋が消滅。渡ろうとしていた百体前後の魔物が渓谷に飲まれた。


 悠里やこよりから歓声があがった。

 レンやリタからも安堵の表情がうかがえる。


 だがこれは敵部隊のほんの一部。本番はここからだ。


 オレはコントロールルームにある大鏡の一枚にタッチ。

 たちまち、身体が古城の東にある塔のてっぺんの部屋に転移した。


 ちなみにそこも隔離されており、隠し部屋からしか行くことはできない。


 オレは塔のてっぺんのバルコニーに出ると、懐の巾着からアイテムを出す。

 『魔物召喚の指輪』と、こよりに村で作ってもらったやつである。



 魔物召喚の指輪は、先日村の少年が持っていたのを買い取った物。


 それはべつに召喚能力があるわけではない。

 人の耳には聞こえない特殊な音波で、周囲の魔物をよびよせるアイテムだ。


 ただ、これが通用するのは野良だけ。

 魔王軍に組み込まれているようなある程度知性のある魔物には通じない。


 と、言われてる。


 確かにそれは間違ってない。

 だけどその理由は、別にこの手の音波が彼らに効果がないからではなかった。


 知性の高い魔物はその分聴力が弱く、高い波長の音を聞けない。

 つまり、あくまでも音波の波長の高低の問題なのだ。


 そこでこよりお手製アイテムの出番である。

 オレはそれに意識を集中。


 たちまちそのアイテムを中核にし、巨大なメガホンのようなものが生成される。

 それは、市役所などの屋上にあるようなやつに似てる。


 コイツは指輪から発せられる音の波長を変換する効果がある。

 しかも、メガホン部分で増幅&集中させる効果もあった。

 この拡声器と指輪で、二十数Km先の魔物の誘導ができるはず。理論上は。


 オレは拡声器の先端に指輪を接触させ、その効果を発動。

 だけど当然、ここからでは魔物たちの様子をうかがい知ることはムリ。

 発動してるかよくわからない。


 そこへ、大鏡でこよりがこの部屋へ転移してくる。

 そしてモニターに映っていた魔物が軒並み動き始めたことを知らせてくれた。


 どうやら、こちらの作戦の第一段階は成功したようである。



 だけど、橋からここまでは距離的にかなり離れている。

 念のため、30分おきに召喚の指輪&拡声器を発動させながら待つこと数時間。


 ようやく魔物たちの存在がバルコニーからも確認できるようになった。


 城郭都市の門は全て解放してある。

 約8000体の魔物たちがそこへ殺到。都市へ吸い込まれるように入っていく。


 作戦前は、入った敵が城へ一目散に押し寄せるかと思っていた。

 だけど都市内の道は曲がりくねっており、それに侵攻をはばまれてるようだ。


 この城郭都市、敵がなだれ込むことを想定してこういう設計なのかもしれない。

 王都と比べて道が不便だなって思っていたけど……。



 そしてしばらく経って、全部の魔物が入ったところで防御機能を発動させた。


 城郭都市の外壁から立ち上るように、まるでバリアみたいな薄い膜が張られる。

 これによって壁の外と内がほぼ完全に隔離された。


「やった!! 作戦大成功だね!!」


「ああ! もう少し手こずると思ったんだ。

 予想より魔物がうまく動いてくれて助かった」


「さすが! 勇者さまです!!

 あんな風に魔物たちを誘導できるなんて、思いも寄りませんでした!」


「あとは隠し通路で外へ出て村人を追って合流すれば、わたしたちの勝ちね」


 レンの言うとおりだ。

 ここへ通じる隠し扉を閉じてしまえば、連中が中へ入ってくることもない。



 だけど、気になることが2つあった。


 1つは勇者の言っていた幹部の存在。

 どこかで邪魔が入ると思っていたけど、それがない。


 ということは、他の魔物と同じく召喚の指輪の影響を受けてるのか。

 あるいはこの集団にはいないのか。


 そして、もう一つは――


「どうしたのですか? 勇者さま……。

 ひょっとして、その隠し通路になにかあるんですか?」


「いや、それは問題ないと思うんだけどね。ちょっと気になることがあるんだ。

 リタと姉さんとこよりは外の馬車のところで待っててくれないか?」


「……そうね、分かったわ」


「わたしの名前を呼ばなかってってことは、当然一緒に来いってことだよね」


「ああ、どうせついてくるなって言ってもついてくるつもりなんだろ?」


「その通り、分かってるじゃん」


「じゃあ、いくわ、二人とも気をつけて」


 そういうと、レン、リタ、こよりの3人は、部屋の奥の鏡にタッチして転移する



「『気になる事がある』って言ったけど、ホントは手伝って欲しい事があるんだ」


 オレは悠里に協力を求めた。

プライベートの問題で1日1話投稿が困難な状況になってしまいましたので、次回から毎週日曜日に(2~4話くらいのペースで)まとめて数話ずつ投稿していこうと思います。

次回投稿は1/23(日)になります。


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