辺境攻防④ 壁画の部屋のトリックを解き明かした
「ひょっとして、閉じ込められず鏡を手に入れる方法があるのかしら?」
「ああ。裏付けがあるわけじゃないけど」
「でさあ、その鏡を手に入れるのはいいんだけど、それってなにに使うの?
シュウにい」
「ああ、鏡は壁画の部屋で使う。
多分、魔鏡がそこのトリックのカギになってると思うんだ」
「トリック!? それってなに!? なんか秘密兵器とかあったりするの!?」
「さあ。なにがあるかオレもわからない。
ただ落とし穴の先に、あれだけ得体のしれない物があったんだ。
ひょっとしたら、こよりの言う秘密兵器もあるかもしれない」
なんて言ったが、おおよその見当はついていた。
仮に壁画の部屋に隠されているモノが秘密兵器やお宝だったとして。
それにしては、地下室にワナがなさすぎる。
おそらくなにかを保存するための仕掛けじゃないはず。
どちらかというと、脱出路などの隠し通路的な意味合いが強いのだろうと思う。
そしておそらくその先に通じているのは、落とし穴の奥にあったあの――。
「それで、まずはどこに行くのかしら?」
「ああ、まずはここから撤退する時に調べた部屋かな」
本来はまだ調べていないもう一つの部屋を確認した方がいいのかもしれない。
けど、今は少しでも時間が欲しい。
しばらく地下室を歩き、部屋についたところでオレ一人そこに入る。
鏡に手をかけて壁から外す。
「ホントだ。なにも起きない……」
「いやまあ、これだけならまぐれかもしれないからな。
次へ行こう」
オレたちはさらに先へ進み、目的の場所にたどり着いた。
そこは前にウィーラーが閉じ込められていた部屋。
驚いたことに格子は上がっており、自由に出入りできるようになっていた。
むりやりこじ開けて入ったから、壊れてしまったかと思ったけど……。
自己修復機能でもあるのだろうか。
とりあえずオレは悠里に自分の持ってる鏡を渡して、部屋の魔鏡を外す。
前のように格子が下りてくることはなかった。
「問題なく外れたわね。
順番があるっていうのは間違いなさそう」
「それにしても2分の1とは言っても最初に当たりを引けたのは運が良かったね」
「いや、部屋を選んだ順番は当てずっぽじゃない。
今まで俺たちが見てきたものにヒントがあったんだよ」
「ヒント!? そんなのあったの!?
どこにあったのさ!」
「ほら、この鏡って魔鏡だろ?
光を反射させると、その反射光に詩が浮かび上がるっていう。
そして、その文章にはそれぞれなにかしらの数字がはいっているんだ」
「! そうか、それが鏡を外す順番になってるのか」
「そう、そしてこの詩は最後の仕掛けを動作させるカギにもなってるんだ」
オレたちは、まだ調べてない3つ目の部屋へと向かう。
部屋へたどり着いて中を見ると、やはり予想通り魔鏡がある。
それを取り外すが、ここでも閉じ込められるようなことはなかった。
オレたちは3つの鏡を持って壁画の部屋へ向かう。
「で、ここの仕掛けは?」
「えっと、まず台座の皿立てから皿を外して代わりに鏡を置いてくれ。
多分どこにどれをセットしても大丈夫だとおもう」
その部屋には4つの台座がある。
そして、そのうち3つには皿立てで立てられた皿がおかれてた。
レンと悠里とこよりがそれぞれ鏡を持って台座に近寄り、皿と交換する。
「あれ? なんの反応もないね。ひょっとして違った?」
「いや、そう決めつけるのは早い」
オレは皿の置かれていない台座に手を置く。
そして、その指にはめられた太陽の指輪を少し強く光らせる。
ちなみにこの位置から光を発することができれば、光源はなんでもいい。
「? 一体それにどんな意味が──」
「いいから、壁に映った鏡の反射光を見て」
その3つの魔鏡の反射光を見ると、その光は壁画のある一カ所に集中していた。
詩の文章は重なり合い、まったく読解ができなくなっている。
そしてその中で3カ所。ひときわ明るく光っている部分があった。
そこを見ると、壁画の盾の部分に埋め込まれた赤、青、黄の宝石が。
「! ひょっとして、この宝石を押し込むのが正解ってこと!?」
「その通り。さて、問題はこれを押す順番だけど……さて」
「お? ひょっとして、名探偵も降参か?」
「いや、これはあたしでも分かるよ。シュウにい。
詩を見るとそれぞれに色が示されてる。だからこれは赤、青、黄、が正解だね」
「いや違う」
オレは壁画の盾が描かれたところに近寄る。
そして、3つの宝石を同時に押し込んだ。
壁画の一部に綺麗な直線の裂け目が縦に入ったかと思うと、そこが開く。
その先に奥へ伸びる通路があった。
「順番関係ないじゃないか!」
「どういうことなの? シュウくん」
「いや、これは半分運さ。
実はこよりがワナを発動させた時に、赤い宝石を押し込んでいたんだ。
でも、落とし穴は動作した。じゃあ、あの詩はフェイクかなって」
「でも、それなら他の順番かもしれないじゃない」
「まあ、それはそうなんだけど、でもそれらしきヒントはなかった。
ここへ来て運任せなんて仕掛けにするはずないと思ったんだ。
ここまでヒントを残してたのに」
「もう、そこは勇者さまがスゴいってことでいいじゃないですか!」
「そうね、シュウくんのお手柄よね。
とにかく扉は開いたわ。この先になにがあるの?」
「それは、行ってみてからのお楽しみって感じだな」
通路を進む。
すると、宇宙戦艦の操縦室を思わせるようなモニターや機材の並ぶ部屋にでる。
あきらかにこの世界の文明による産物ではない。
落とし穴の先にあった部屋と同様の、科学的練度を感じる。
「ここは……」
「言ってみればこの古城の頭脳とも言える司令室だな。
ここから各所の仕掛けを発動させることができる……と思う」
「スゴいね、超古代文明ってこんなにスゴいのか。
いや、ほんとにスゴい」
ただでさえ少ない悠里の語彙が半壊してる。
「……くすくすっ」
「リタ? どうしたんだ?」
「ゴメンなさい! そのっ、不謹慎なのですが、今、とっても楽しいです。
勇者さまと一緒だと、本当に色々な体験ができるなって」
「……正直オレはもう少し、大人しい体験をしたいんだけど」
「とにかく、この部屋で、わたしたちだけでも魔物たちを退治できるんだよね?」
「いや、そううまく行くかどうかこれから確認する。
少し時間をくれないか?」
とりあえず鑑定眼とWikiを交互に使い、この場所の解析をおこなう。
10分程度で最低限のところを把握することができた。
「……まあ、期待していた程ではないけど、なんとかなりそうだな」
「どういうことだ?」
「まず、ここの魔法装置の70%以上はもう使い物にならない。
特に攻撃系の装置はまず当てにできない」
「それじゃあ、魔物を退治できない――」
「大丈夫、その辺りは想定の範囲だ。
その代わり防御装置は多少の劣化はあってもかなり期待できる稼働状況だ」
「では、ここで籠城するのですか? 勇者さま」
「いや、籠城もなにもここは本来敵の進軍ルートから離れている。
ここに立てこもっても、素通りされるだけさ」
確かに橋は落としてあるが、少し時間をかければどうとでもなるだろう。
例えば、空を飛ぶような敵が1体でもいれば、間にロープを張って伝うとか。
「だから敵を城下町に誘い込んで、防御装置で逆に魔物を閉じ込める」
「そんなこと出来るのか?」
「ああ。その魔法装置が動作している間は城壁の内外で行き来ができなくなる。
だから、誘い込んだ上で防御装置を発動して奴らを出れなくするのさ。
それでこの作戦は完了ってわけだ」
「誘い込むって……、ああ、だから村への橋だけ壊したのね?」
その通りだった。
ここの機能とは別に、敵を誘い込む手は用意してある。
城が当てにできない場合、それで城下町に誘い込んで時間を稼ぐつもりだった。
だけど、今残っている防御機能を使えれば。
1日どころかもっと長い時間敵を足止めできるかもしれない。
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