↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
67/174

辺境攻防② 勇者たちと再会した

 オレたちは今後の方針を聞くためにウィーラーの元へ向かう。

 その途中で村長が姿を見せた。


「その……砦が落とされたという話を聞いたのですが……」


「はい、そうらしいですね……。

 今からわたしたちも、詳しい話を聞きに行くところでして」


「その、村はどうなりますかのう……」


「ハッキリしたことはわかりません。

 ですがたぶん、みなさんガナクス砦に避難することになるのでしょうね。

 そこから先、どうなるかはわたしたちにも……」


 ガナクス砦は、アリュース砦やベルナーム砦の後方にある。

 前線の砦を突破された時の万が一の控えとして機能しているようだ。


「そうですか……。

 ワシらは、逃げ切れますかのう」


 聞かれて、レンは答えに詰まる。

 砦に入る前に追いつかれてしまうことは明らかだった。


 大体の魔物は疲れもしないし眠りもしない。

 だからって追われる側も不眠不休で歩く、なんてムリだろう。


 また馬車なら逃げ切れるかもしれないが、村人全員には用意できない。


「辛いと思いますが、今から避難の準備を進めたほうが……」


「……そうですな、皆にはわたしの方から伝えておきますじゃ」



 その後読書会のテントにいるウィーラーと対面。

 『当初の予定通り王都に帰る』と予想通りの返事をされた。


 それに皆が了承したところで、リタがたずねる。


「あの、ここの村人たちはどうなるのでしょう?

 避難先まで読書会で送ってあげたりするのでしょうか?」


「いや、基本的に我々は彼らに干渉しない。各自で逃げてもらうことになる。

 子供を優先して何人かは馬車に一緒に乗せることはできるだろうが……」


「そんな! それじゃあこの村の住人はどうなるというのですか!」


「リタ姫……気持ちは分かるし私も気の毒に思う。

 だが我々は軍人ではないのだ」


 そんな話をされれば、オレたちはこれ以上彼らになにも言えない。



「勇者さま、その、私たちでこの村を助けることはできないのでしょうか……」


 テントから出て村長の家に戻ろうとしたところで、リタがすがるように言う。


 オレは返事ができなかった。

 分かりきった話だ。


 敵の総数は不明。

 だが戦闘の規模を聞く限り、1万に達するレベルになるだろう。


 対して応戦できる人数は、読書会の戦闘員も入れて20人ってところである。

 勇者や龍介クラスならともかく、そんな数で敵軍を相手にできるはずない。


 普通に考えれば。




 村長宅に戻る途中で、人だかりに遭遇する。

 避難に際してもめごとが起きているのかと思ったら、違った。


 戦闘系転生者がやってきたのだ。十数名ほど。その中に勇者もいた。


「勇者様が来たぞ!!!」


「これで村も安泰だ!」


 勇者を前に村人が口々に彼を讃える。

 その場で土下座をし、祈りを捧げる者までいた。


 奴も普段の八方美人顔でそれに応えている。

 だけど村人があつまり懇願の色が濃くなると、困惑した表情を見せはじめた。


 正直、会わなくてすむならずっとそうしたい相手。

 けどこれは村人を救うチャンスだ。


 レンのほうを見ると、彼女がうなずく。

 そして群がっている村人をかき分けて、勇者たちの前に立った。


 壮五はレンを見るとパッと明るい顔をしてレンの手を握る。

 そんな彼に、彼女は村の状況を説明した。


「それは……災難だね。

 でも、僕らだけじゃあ魔物を全滅させるなんてムリだよ」


「そこまでのことは望んでない」


 オレは勇者の前に立ち、自分の考えを語った。



 敵に取られた砦からこの村に到達するには渓谷を渡ることになる。


 その際、かかっている2つの橋のうちのどちらかを通らないといけない。

 だから、そのうちの1つを壊す。


 そしてもう片方の橋を渡ろうとする敵を勇者が倒していく。


 もし空中から来るなら、それは他の転生者で対応する。

 そうすれば敵の侵攻を完全に防げなくても、大幅な時間稼ぎができるはずだ。


 要は村人が避難する時間を稼げればいいのだ。



 勇者にとっては簡単なはずである。

 ましてや八方美人のこいつならきっとこの話に乗ってくるだろう。


 だけど、勇者は苦々しい顔をした。


「ムリだ。そんな生やさしい連中じゃない。

 僕らは数日前までそいつらとベルナーム砦で戦っていたんだ」


「え? お前たちはベレビア砦にいたんじゃなかったのか!?」


「前にベルナーム砦に配置替えになったんだ。そんなこと、どうでもいいよ。

 今の魔王軍は少なくとも2体の幹部に率いられてる。

 そのうちの1体は……1体は……」


 ……幹部だって?


 歴史上で語られる魔王。

 その伝説には、常に何体か転生者に匹敵する強力な魔物の存在が記されてる。


 だけどここ数十年、その存在は確認されてなかった。

 それが今回、現れたっていうのか。


 しかも様子から、そのうちの1体は勇者に匹敵する力があることがうかがえる。


 だとしても、


「とにかく時間を稼げればいいんだ。

 強い奴が1、2体ってだけならオレとお前で組めばなんとかなるはず」


 成功する確証はないが、根拠がなくもなかった。


 それに率いている奴が前面に出てくれるってことなら、話はもっとシンプルだ。

 ぶっちゃけ、そいつをどうにかすれば敵軍も退く可能性が高いわけで。


 なんとかその手を見つけ出して――


「知るか! 寄生虫野郎!

 なんでこんな見ず知らずな連中のためにオレが死ぬ思いをしなきゃいけねえ!」


「そんな……勇者様はワシらを見捨てるっていうんですかい……?」


 土下座をしていた1人の村人が勇者の足にすがるが、それを彼は振り払う。


「王都の連中にでも頼め! 俺は知らん! 休憩したらこの村から出るぞ!」


 そう言って勇者たちは村人をかき分けると、彼らに背を向けた。




 村長宅の大広間で勇者壮五は適当なイスに座っていた。

 レンに促されると、これまでのことを話しはじめる。


 彼らはベルナーム砦が落とされた後、ベレビア砦へと待避していたようだ。

 だけどアリュース砦も陥落し、残存兵力をガナクス砦へ集中させる話になり。


 その際にオレたちが――というかレンがこの村にいることを知る。

 そこで勇者はその取り巻きたちと、ここへ来たようだ。


 そこまで説明して、勇者はレンたちに一緒に王都に帰る提案をする。


 当然、いい顔できるはずもない。

 てっきり受け入れられると思ってた勇者は怪訝な表情になった。


 オレはここまでの話で感じた疑問をぶつけてみる。


「1つ聞きたいんだが。

 お前たちは戦場を離れてからベレビア砦に寄って、こっちへ来たんだよな?」


「それがどうしたのかな?」


「敗退が決定したのが昨日。だが、ベルナーム砦からベレビア砦の行程が1日。

 そしてそこから村への行程も1日だ。どう考えても日付が合わない」


 勇者は苦々しい表情を浮かべる。


「お前ら、ひょっとして戦いの途中で敵前逃亡したんじゃないのか?」


「なにが悪い! お前は、俺に死ぬまで戦えって言うのか! え!?

 俺は軍人でもなんでもねーんだ! こんなことで命を落とすなんてごめんだ!」


 そう言って立ち上がると、勇者は怒りの表情を露わにして部屋を出て行く。


 別に責めるつもりはなかった。これに関しては壮五の言うとおりだ。

 確かにそこまでの義理はない。


 オレが気にしたのは戦の流れ。

 おそらく、その幹部が出てくるところまで戦況は互角だったのだろう。


 それが、幹部の登場によって勇者とその取り巻きが逃亡。

 残ったガチ勢だけでは抜けた穴を補いきれず、敗北。


 とすると、幹部以外のザコはおそらく想定通りの強さと考えて良さそうだ。



「わたしは村の人についていくよ、みんな。

 そして魔物が追いついてきたら片っ端から倒す!」


 沈黙を破って、悠里が声をあげる。


「なに言ってるのさ悠里ねえ。

 いくら戦いが好きだからって、それは──」


「そんなことじゃない!」


 その強い言葉に、こよりがビクつく


「シュウ。アンタ前に言ったよね?

 らしくないことをするなって。お前は突っ走ればいいって」


「いや、お前それは――」


「別にその言葉のせいにするわけじゃないよ。嬉しかったんだ。

 あのときは、その言葉が。だから、わたしはわたしらしく行かせてもらうよ」


「そんなこと言って! なにか方法はあるの!?

 このままじゃあ犬死だよ!」


「そんなのないよ!

 でも自分の命が危ないことが、村人を見捨てる理由になるもんか!」


    ――ギシッ


 そのとき、扉の向こうで床の軋む音がする。

 見ると、半開きになった隙間から、スパイク少年がのぞき込んでいた。


 少年が部屋に入ってくる。


「魔物が攻めて来るって聞いて心配になって……でも大丈夫だよね!

 お兄ちゃんなら、魔物の大群なんてあっという間に倒せるよね!」


「言っただろ? オレはそんな大した奴じゃないって」


 それに対して、オレは気休めの言葉をかけることができなかった。

 いや、かけるべきではないと思った。


「空も飛べない、魔物だって一度に相手にしたら多分十体も倒せない。

 オレなんてその程度だよ」


「お兄ちゃん! だって、だって──」


「けど君たちを守ることぐらいはできる。

 だから君は、また王都見物にでも行くつもりで気楽にしていればいい」

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます!


もし、


・面白かった!

・続きが気になる!

・更新がんばって!

・応援するよ!


と思われた方


よろしければ

広告の下にある☆☆☆☆☆から評価をいただければ大変うれしいです。


すごく面白かったなら☆5、あまり面白くなさげでしたら☆1と、

感じたままでかまいません。


また、ブックマークいただければ作者の励みになりますので、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。