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古城探索③ 壁画の部屋でワナにはまる

 よし! 準備ができた!


「悠里!!」


 呼びかけた瞬間、悠里はこっちの周辺まで後退する。

 そこを見計らってオレは具現の指輪を発動させた。


 たちまち、先頭の敵と自分との間に分厚い壁が生成された。

 その材質は従来のゴム状の魔法物質のものとは違う、神鋼とほぼ同等。



「なんだこれ!? アンタが作ったの!?」


「ああ、具現の指輪を使ったんだ。

 実戦では初めてだから、うまくいって良かった」


 今までは、

 『視界の範囲にゴム状の魔法物質を生成する』

 『手に持った素材と同等の魔法物質を素材の周りに生成する』

 この二つしかできなかった。


 それが、色々な実験と調整を経てついに、

 『視界の範囲に自分の持つイメージ通りの魔法物質を生成』

 できるようになった。


 これにより今まで生成した素材なら、コアがなくても空間上に生成可能だ。

 ただし、この生成には物質のレアリティに比例した時間と魔力が必要。


 ちなみに今回は具現の指輪内の魔力のほとんどを1回で使い切ってしまった。

 破壊の指輪で魔力補給はできるが、それにも時間はかかる。


 それに10分くらい経つと魔法物質が解放、消滅してしまう。


「さすが勇者さまです!」


「でも、こんなことができるなら、商団を助けた時も使えば良かったのに」


「こういうのは、使いどころを考える必要があるんだよ。悠里ねえ。

 相手が一カ所にかたまっている状況とか、逃げ場がない所とか。

 乱発してたら、Mpがいくらあっても足りないでしょ?」


「それもあるけど、どこで誰が見ているか判らない。

 連発していると相手に対応されてしまう可能性もあるな」


「さすがシュウくんね。そんなことまで考えてたなんて」


 って、


「三人とも!? なんで!? 先に行ったんじゃなかったの!?」


「うんと、シュウにいがあまりにも自信ありげにしてたからさ。

 なんか見たくなっちゃって」


「どうしても勇者さまのお役に立ちたかったんです!」


「二人が戻ると、わたしだけ仲間ハズレになるし……」


「ウィーラーさんたち、心配してるんじゃないか?」


「それは、一応ことわりを入れて戻ってきたから、大丈夫だと――」


「とにかく、早くここから離れよう。

 時間がたつと、この壁も消えるから」


「そうなの!?

 じゃあ急ごうよ! シュウにい」




 オレたちは先行したウィーラーたちを追う。

 途中、魔物のものらしき足音が聞こえたので迂回して見つかるのを回避。


 そんな感じで回り道した先に、2つ目の詳細不明ポイントのある部屋があった。

 時間はないが、軽く確認してみることにする。


 その部屋にも1つ目と同じように鏡が設置されていた。

 そこに指輪の光を当てると、やはり反射光に詩らしき文章が浮かび上がる。


 おそらく取り外そうとすると、格子が下りてくるんだろう。


「ねえこれ、一つ目の部屋の鏡と詩の内容が違わない? シュウにい」


「お前、この詩が読めるのか」


「ううん。意味は全然解らないけど、文字の形は覚えられるからさ」


 なるほど、鏡によって詩の内容が違うというのは興味深い話だ。

 けど、考えている時間はない。先を急ぐことにする。



 そしてさらに、詳細不明ポイントのある3つ目の部屋にたどり着いてしまった。

 チラリと覗いたが、この部屋の中は前の2つの部屋とは大分趣がちがう。


 そこは地下室とは思えない豪華さを感じさせる。

 さらに正面の壁の全面に壁画が描かれており、鏡も備え付けられてはいない。


「さて、どうするか……」


 普通に考えれば調査している余裕はない。

 一刻もはやくここから立ち去るべきだが……。


「てかシュウにい、すごい未練たらたらの顔してるよ?

 ひょっとして、調べたくって、うずうずしてない?」


「……お前、ここを視てもらいたいから、わざわざ戻ってきたんだな?」


「い、いや、心配だったのはホントだよ? うん」


「いいんじゃないかしら?

 ひょっとしたら、もうわたしたちで探索なんて出来ないかもしれないし……」


「レン姉さんまで……」


 だが確かにレンの言うとおりだ。


「わたしも、探索してみたいです! 勇者さま!」


「……悠里、ここで魔物が来ないか見張っていてくれないか?」


「了解~。任せて! 魔物が来たらぶちのめすから!」


「そうじゃなくて、気配を感じたら知らせてくれ」


 そう悠里に注意すると、オレは部屋に入る。後からレンとこよりとリタが続く。


「この壁画……城の入り口に書かれているものに似てますね」


 入ってすぐに、リタがそんなことを口にする。


 鑑定をしたところ、この壁画は伝説の英雄の戦いを描いたもの。

 6枚で一セットになってる。


 そのうちの4つが城の入り口にある絵で、ここのは残り2枚のうちの1枚。

 どうやら最後の1枚はまだ見つかってないようである。

 

 この部屋の壁画はその勇者が宿敵との最後の戦いが描かれているようだ。


「この宝石剣を持った人が英雄で、この宝石盾を持ったのが悪魔ってことね」


 レンが感慨深げに語る。


 ……と、コレばかり見ていても仕方がないか。


 壁画がこの城のトリックの一つに繋がっているのは想像に難くない。

 が、それだけ見ていても謎は解けそうにない。



 部屋を見渡すと、壁画以外にまず目につくのは室内に乱立した4つの台座。

 これがなんか、まるで美術館の一室のような雰囲気をかもし出してる。


 その台座のうち3つには、比較的大きな皿が皿立てによって立てかけられてた。


 鑑定とWikiで確認する限りそれの値段は相当なモノ。

 だが皿に金額的な価値はあっても、仕掛けに関係しそうな感じはしない。


 これが読書会によって回収されていないのは、なにか理由があるんだろうか?


 台座自体も鑑定するが、やはり仕掛けはない。

 念のため慎重に皿を外してみたが特になにも起きなかった。


 こういう場合、台座が横にずれて下への階段が現れる、なんて定番だと思うが。


 ……ここだけ見ていてもどうにもなりそうにないな。

 やはり、これも保留案件か。


「ねえ! シュウにい!

 この絵の盾についている宝石! 本物みたいだよ!」


 絵を見ていたこよりが、突然大きな声を上げる。


 思わずこよりの傍に駆け寄って見てみる。

 描かれている盾の縁にある宝石は、絵ではなく本物の魔宝石が埋め込まれてた。


 さっきは絵自体を鑑定したが、もしこの宝石を対象にしたらどうだろう。

 そう閃き、実行してみる。


 …………ビンゴ! この宝石は――


「あ、この宝石、壁にズブズブ入っていくよ?」


 トリックの糸口が見つかった、と思ったところに聞こえてきたこよりの声。


 こよりを見ると、彼女の指が壁画の盾の赤い宝石を壁に押し込めていた。


 それに声を掛ける間もなく床が消失。

 周りの風景がこより以外、上の方にズレていく。


 オレはとっさに具現の指輪を発動。

 視認できる目一杯、クッションとなる柔らかい魔法物質を下方に生成する。


 オレたちは、まもなくそれが生成された深さまで落下。

 トランポリンに飛び込んだかのように何回か跳ね上げられた後、止まる。


「ふう、助かった」


「いや、あの、まだ助かったって感じしないんだけど……」


 オレたちの身体はまるで三十分ツイスターをプレイしたかのように絡まってた。


 ん、この手に伝わる絶妙な柔らかさは……。


「きゃあ!!! しゅ、シュウにい! 手が、手が胸にぃ~」


「ああ! ゴメン! ちょっと待ってくれ! 体勢を立て直すから! よいしょ」


「こ、今度は手が、ま、ま、まっ!」


「す、すまん! 今度こそ」


 …

 ……

 ………


「シュウにい、絶対にワザとでしょ!」


「仕方ないだろ! あんな体勢からいきなりどこも触らずに立ち直れるもんか! 

 それに、そもそもこうなったのもお前がトラップに――」


「それは、謝るよ……。

 でも、ああいうのなんか押したくなっちゃうじゃない」


 分かる。分かるけど、


「だったら、せめてオレに先に押させろよな」


「うん、そうする……。それにしても……」


 なんとか体勢を立て直したオレたちは上を見る。

 レンのつけていた太陽の指輪の光は見えなかった。


 随分深いところまで落ちこんでしまったからなのか。

 それとも床が元通り塞がってしまったからなのか……。


 だけど絶叫に近いレベルでレンやリタが声を上げているのは聞こえる。

 なら、


「お~~~~~~い!!! レン姉さん!!! リタ!!!」


「シュウ!!? シュウくんなの!!?」


「あああ!!! オレたちは大丈夫!!! 無事だ!!!」


「……二人とも、上がってこれる!!?

 わたしたちも下りたほうがいい!!?」


 少しの沈黙のあと、レンが問う。


 オレは手持ちの太陽の指輪を発動させた。

 落とし穴の壁の材質は地下室のものと変わらないようだ。


 少なくとも壁面のでこぼこに指を引っかけてよじ登るようなことは不可能。


 まあ、それでも指輪を駆使すれば少しつづ上っていけるかもしれない。

 だけど、もし床が塞がってたらどうするか……。



 なんて考えてると、


「ねえ、底まで下りてみない? シュウにい」


 こよりが、そんなことを口にした。

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