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前線の村⑦ リタががんばるというのなら、オレもがんばるしかないだろ

「勇者さま、そこにいますか?」



 ……気づかれてた!!!?


「え!? いや、あの、その!」


「きゃあ!! 本当にいたんですか!!?」


 げっ、ひょっとして鎌をかけられた!?


「その! 勇者さまが、ひょっとしたらわたしを心配して様子を……

 ……くれてると、いいな。なんて思って口にしただけだったのですが……」


「いやいや! 偶然だって。

 たまたま温泉に入りたかったから!」


「はい! たまたま、ですね?」


 いやいや! ホントに入りたかっただけなんですけど!?

 たしかに戦闘が終わってから元気がないな、とは思ってたけど……。


 明らかに誤解されてるが、まあいいか。


「それで……あの……本当にすみませんでした。

 今日は戦闘でお役に立てなくて……」


 いきなり、レンたちに話していたことを持ち出されてしまった。

 どう返そうか、部屋に戻ったら考えようと思ってたのに。


 それにしてもレンの言うとおり、単純に慰めるんじゃダメなんだろうな。

 ならいっそ……。


「それじゃあ、困るな」


「そうですよね!

 後方としてキチンと攻撃とかしないと――」


「そうじゃない。リタがやることは、まずなにもしないことだよ」


「なにもしない……。

 それは、わたしのことが邪魔――」


「いやいや! そうじゃなくて。

 今日、リタがうまく動けなかったのは、魔物が恐かったからじゃないんだろ?

 だって、それでも洞窟とかではキチンと戦えてたじゃないか」


「はい、怖いわけじゃないと思います。

 勇者さまと戦ってるんですから」


「! ゲフゲフ、あ、いや、つまりさ、リタは気負いすぎているんだよ。

 みんなの役に立ちたいって思いが先走って、考えすぎてるんだ」


「そう……かもしれません」


 リタが思い当たったような声をだす。

 どうやらオレの指摘は的を射ているようだ。


 気負いすぎで失敗するのは良くある話だ。

 オレもゲームでの周回効率を考えすぎて、むしろ時間効率が悪くなるとかある。


「リタは、まず『待機』して様子をみるべきだったんだ。

 なのに、なにかしなくちゃって焦った。

 リタにもし反省すべきところがあるなら、そこだよ」


「……そうですね」

 

 リタの声がますますしょんぼりしたトーンになってる。


 おそらく彼女が望んでいたのはこういう次に繋がる反省だと思ったんだけど。

 ちょっと言いすぎかな。


「なんてさ、偉そうなこと言ったけど、今日はオレも随分と慌てたんだぜ?」


「え? 勇者さまがですか?」


「ああ。

 だってこんなところを魔王軍の兵がうろついてるなんて、思わないじゃないか。

 前線が崩壊したんじゃないか、村が襲撃されたんじゃないかって心配だったよ」


「でも、そんな風には見えませんでした……。

 その……どうしたら勇者さまのようにふるまえるのですか?」


「うーん、偉そうに言えるほどのことはないんだけど……。

 とりあえず、他のみんなの顔を見ることにしている、かな」


「みなさんの顔、ですか?」


「そう、みんな一体なにを考えているんだろうって。

 そうやって見てると……なんていうか、腹がすわるのさ」


「腹がすわる、ですか?」


「ああ。

 そうなると、心が『やらなきゃいけない』から『やるしかない』になるんだ。

 そうなったらもうやるしかないじゃないか……って、うまく言えなくてゴメン」


「いえ、多分、やはり先ほどの『様子を見る』という話に通じるんだと思います。

 敵だけでなく、味方も全部見通して動く。それが勇者さまなんですね」


 なんかリタがうまくまとめてくれた。


「まあ、それにさ、みんな戦闘向きじゃないからさ。

 おっかなびっくり戦っているんだ。リタと変わらない」


「そんな! みなさんはスゴく戦えています! わたしなんか……」


「そう見えるのは、お互いの欠点を補いあって戦ってるからだよ。

 だからその輪の中で、自分の得意なやり方で攻めることができる。

 その輪にリタも入ってるんだぜ?」


「わたしも……ですか?」


「そう、なにしろ遠くに攻撃できる奴がリタしかいない。

 強いて挙げればオレが出来なくもないけど、正確性や威力が足りないし」


「わたしも、みんなの輪の中に……」


「そう。だから無理にがんばろうなんて思わなくていい。

 どうすればいいかわからないのなら、とりあえずみんなに任せればいいんだ。

 そして待つ。そうすれば戦況が変わり、できることが見えるかもしれない」


「はい! ありがとうごさいます!

 明日からもがんばれそうです!」


「あ、いや、だから無理にがんばる必要は――」


「はい、そうでした! がんばってみなさんに頼ろうと思いますね。

 もしわたしにもできることがあったら、遠慮なく言ってくださいね!」


 彼女はいつもの鈴が鳴るような明るい声で返事をすると温泉からあがる。


 その足音も軽快に感じる。

 よかった、いつもの調子を取り戻したようだ。


 けど、『がんばって頼る』か。


 たしかに、リタは会ったころからがんばる娘だった。

 けど、昔はダメ元というか諦め半分みたいなとこがあって。


 今はホントに真っ直ぐがんばってる。

 その少しの変化がとても好ましく感じられる。

 

 この先リタがなにをめざすかわからないけど。

 彼女がオレに助けを求めるなら全力で答えられるよう、色々考えとかないとな。




 ちなみにその後、リタは温泉でのオレの話を他のメンバーに語ったようだ。


 結果、悠里に聞き耳を立てていたことを問い詰められ。

 オレがボインガチャがどうのと口を滑らせた結果、ボコ殴りの目に。




 次の日、個室で惰眠を貪っていると、村の子供が押しかけてきた。

 また、翼を見たくてやってきたのかと思ったらそうじゃなく。


 子供たちが持ってきたのは、一振の剣。

 とても高価なシロモノなんだそうだ。


 どうやら父親が昔、村にやってきた行商人から買ったらしい。

 それを鑑定して欲しいというのだ。


 とりあえず、手に取って鑑定してみる。

 まあ本来はお金をもらうところだ。

 けど、なんとなく大人げないと思ったのでやめておいた。


「なるほど。

 基本的には普通のロング・ソードだが、それなりに有名な人が打った剣だ。

 レアリティランクは2。まあまあレアかな。銀貨20枚といったところだ」


 ちなみに王都の一般家庭の月収が銀貨40枚くらいになる。

 元の世界の感覚だと、だいたい20万円ちょいの買い物。


「スゲー!!! ホントに価値があったんだ!

 父ちゃんに教えてくる!!!」


 この鑑定結果を聞いた子供たちが、剣を持ち出した奴に付いていく。

 これでまた眠れるかと思ったら、入れ替わりで別の子供がやってきた。

 今度は、小ぶりの壺を手に。


 そこから先が大変だった。

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