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前線の村① こより主導の女子会?を目の当たりにした

 オレたちは今、馬車にゆられながら移動をしている。


 その車内は10人くらいが入れる広さ。

 メンバー全員が乗っても結構余裕がある。

 そんな場所でこよりは悠里に詰め寄るように近寄り、熱心に話しかけてた。


 珍しいことに、悠里はその語りに興味深そうに耳を傾け。

 隣のリタは少し困惑しながら2人の話を聞いてる。

 その様子を対面に座っているレンは微笑ましげに見つめていた。


 それは午後のひとときのティーパーティーさながらの雰囲気。

 ティーカップでも持ってれば完璧だ。



「だからね!

 彼らは悪の組織に改造されながらも、その支配から逃れるんだよ!

 そして、弱き者を助けるために正体を隠しながらも戦うのさ!」


「うんうん!」


「組織には裏切り者あつかいされている。

 でも守りたい人たちに正体がバレれば敵と同類にみられるから明かせない。

 そんな孤独とも闘いながら、彼らは仮面○イダーとなり人々を守るのさ!」


「うんうん、いいね、それ!

 一人になってでも守りたい人を守る。うん、いい!」


 だが、その話の内容は女子トークとはほど遠い完全なオタトークだった。


 それがオタトークだと分かってしまう自分も大概だと思うが。

 それでもリタやレンを前に話題に花を咲かせるような度胸はない。


 てか、悠里だって本来こんな話に乗ってくるタマじゃないはずなのになあ。



 ここ数ヶ月の間、彼女と接してみて分かったこと。

 それは、彼女の『人を守る』ことに関する正義感の強さだ。


 魔物から人々を守りたい。

 この世界で努力をしているのは、そういう純粋な動機からきてるのだ。

 元の世界に帰りたいからでも、ましてやこの世界を楽しみたいからでもない。


 こよりは御前試合で悠里と接している中でそんな彼女の性格にすぐ気づく。

 そして、彼女を自分の趣味の一端『特撮モノ』に引き込めると判断した。


「うーん、特撮と言っても広いからなあ。大体シュウにいも知ってるとおり、正義の宇宙人が巨大怪獣や悪の宇宙人と戦う『ウルトラ○ン系』と、3~5人でチームを組んで悪の組織と戦う『戦隊モノ』と、孤高の主人公がマスクを被って正体を隠しながら戦う『仮面○イダー系』があるわけだけど……。どれに引き込もうかな。いや、悠里ねえは仮面系亜流の宇宙刑事モノのほうがいいのかな?

 どうだろう? シュウにい」


 いや、どうだろうと聞かれても。


 獲物をどう調理しようか、舌なめずりする勢いでオレに語るこよりを思い出す。

 てか知っての通りってなんだよ。いや知ってるけどさ。


 そしてこよりは、どうやら○イダー系に引きずりこむことにしたようだ。

 見る限り、その狙いはかなり的確だったようだ。


 でもこれ、放置するとますます修行熱心になりはしないか?

 てか、オレへの圧が増すような気がするんですけど。


 大体今回の件だって、前線に出たいと悠里が言い始めたからこんなことに……。




 1ヶ月ほど前の話。

 レンへ読書会から仕事の依頼が来た。その内容は、大量の遺物の鑑定。


 なんでも最近、前線近くで古城の遺跡が見つかりそこから出土したものらしい。

 その数、じつに数百にもおよぶとのこと。


 それでも、最初は王都に運ばれてくる遺品を鑑定するだけの簡単な話だった。


 なのに、悠里の発言が読書会の連中の耳に入ってしまい。

 また転生者の多くが前線に赴く中で、オレたちへの王都民の無言の圧力もあり。


 結局パーティー全員で、古城遺跡の調査に付き合わされることになった。

 ちなみにリタは、学園の普通科自体が長期休みで問題ないらしい。


 出張なんて、三ヶ月前にレンの店が開店したときには考えもしなかった展開だ。



 そんなわけでオレたちは今、読書会の用意した馬車に乗せられている。

 目的地は、古城に近い前線近くの村。行程としては2週間ほど。

 出発したのも2週間前なので、もうすぐ着くはずだ。


 オレにとっては結構な長さの旅となる。


 まあ、古城周辺を占拠していた魔王軍の部隊はかなり後方に退いており。

 おそらく戦闘は発生しないということで、観光半分の気楽な旅である。


「『リタと旅ができてうれしいなあ』って顔をしてるわよ? シュウくん」


「い、いや、別にまあ……。

 いつか一緒に、みたいな話をしたので早々に叶って良かったな、くらいには」


「はい! わたしもうれしいです!

 勇者さま!」


「でも、あのパーティーって御前試合のためだけに組まれたものなのに。

 結局、まだ皆一緒だよね。シュウにい」


「御前試合のためだけ、っていうならお前にも言えるんじゃないのか?

 どうしてついてきたんだ?」


「そりゃあ、シュウにいが寂しがると思ってさ」


「そ、そんなことあるか!」


「そうよ!?

 わたしがいる限り、シュウくんに寂しい思いなんかさせないんだから!」


 なんか色々ツッコみたいけど、ややこしくなりそうなのでやめておく。


「でも古城かあ……。

 ワクワクするよね、シュウにい!」


「城なら王都にもあるじゃない。

 入ったことないの?」


「そういう悠里は入ったことあるのかな?」


「うん、あるけど」


「それね、転生者みんなで一度、見学で入ったことあるのよ。

 シュウくんやこよりちゃんはその時いなかったと思うけど……」


 マジか、そんなイベントがあったのか。


「ふ、ふーん。

 でも古城には荒れた感じの、使われている建物とは違う趣があるんだよ。

 ねえシュウにい?」


「あのなあ、オレがなんでもお前の好みについていけると思うなよ?

 ……まあ廃墟属性もなくはないが」


「でも、今さら古城の調査なんて、意味があるの?」


「それがね、その城は今まで長い間魔物によって占拠されていて。

 殆ど人が入ったことがないそうよ」


「へえ、じゃあ、スゴいアイテム取り放題なの?」


「アホか。

 中の貴重なアイテムは全て国が持っていくことになる」


「えー!? 何それ、じゃあ、わたしたち働き損じゃん」


「もちろん報酬は出るわよ。

 それも、結構高いわね。相場の2倍くらいじゃないかしら。

 見つかった品物によっては上乗せされるらしいし」


 ……なんて話をしながら、馬車にゆられている。


 そういえば、元の世界でこんな風に旅をしたことあったっけかな。

 考えてみると学校行事以外で、乗り物で1時間以上も移動、なんて記憶は……。


「あー! また『リタが一緒で』なんて顔をしてるよ、シュウにい」


「だから! お前なあ――」


 そう言いながら、自然と視線が外のほうへ向く。



 ……?

 なんだろう、あれ……。

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