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御前試合本戦③ さて、龍介をどうはめるか

「……普通、そう思うよな」


「何?」


 オレは龍介を突く。そこに勢いはなく、軽くカツン、と音が鳴るのみだった。

 それに意味はない。

 だけど、龍介は油断なく構えを固める。


 そんな彼の足下に全力で発動させた。

 破壊されてるはずの『回転の指輪』の力を。


 完全に虚を突いたはずだった。


 だが、龍介は寸前にワザと体勢を崩す。

 結果、バランスを乱した彼の身体が宙に舞うことはなかった。

 その場で体をコマのように回転させながら倒れ、地上をゴロゴロと転げていく。


「ちっ、削がれたか」


 10mほど転げた龍介は、ヨロリと立ち上がると、ゆらゆらと近づいて来る。


「何が、起きた?

 アイテムは、破壊されたのでは、なかったのか?」


「さて、じゃあ今の攻撃はなにかな?

 いやあ、何回かの戦闘でオレ、魔法の才能に目覚めた?」




 そんなはずはない。

 こよりに作ってもらった『魔力結界の指輪』によって、破壊を防いだ結果だ。


 3つ候補のあったオリジナルマジックアイテム。

 その中でオレが選んだのはその指輪だった。


 『魔力結界の指輪』は発動すると結界を発生させ、中外の魔力の流れを妨げる。

 その効力で『破壊の指輪』から放たれる破壊のための過剰魔力を防いだのだ。


 ただ、すべてを守れたわけではなかった。

 破壊音が聞こえたのは、過剰魔力の影響を受けたアイテムが壊れたことによる。


 うまく役に立ってくれたが、別にこの展開を読んで作ってもらったんじゃない。

 この指輪には別の重要な役割がある。

 そういう意味で、龍介が破壊の指輪を使ってくれたのは非常に好都合だった。




「まあいい。

 今ので回転の指輪の魔力も使い果たしただろう。

 もはやお前にはダメージを与える力も、飛んで逃げ出す力も残っていまい」


 マジか。指輪の使用回数をわかっていやがる。

 いや、回数制限があることは一般的にも知られている話だ。

 だけど、どの動きが『回転の指輪』によるものなのか把握されてるとは。


 査問の時にいた連中が、龍介にバラしやがったな。


「……そう、思うのなら近寄ってくればいいさ」


「そうさせてもらう」


「ところで悠里が見当たらないんだけど、どこへ行ったんだろうな。

 知ってるか?」


「何!?」


 龍介は悠里を倒れた位置を見るが、もうすでに彼女はそこにいない。


 とっさにリーダーのいるほうへ振り返った龍介。

 そこには、レンと合流を果たした悠里がいた。



『とりあえず戦えるだけ戦って。

 どうにもならないと思ったら、気絶したフリで隙を見て、レンに合流してくれ』


 昨日、悠里にそう指示していた。

 それを見事に果たしてくれたようだ。


 駆け引きが苦手そうなので心配してたが問題なかった。



「なるほど、すべては計算通りか。

 はなからお前が私を抑えるつもりだったのだな」


「どうかな。

 それにしても、アタッカーは強いけどレンに翻弄されているねえ。

 さっきのダメージも残ってるのかな?」


 敢えて全部計算通りであると装う。

 だが実際はすべて計算通りにはいってない。むしろ自分の甘さに吐き気がする。


 なぜか場外へ吹っ飛ばしたはずのアタッカーの真澄が後衛に合流してた。

 たしかに、アイツが場外に出たかまでは確認してない。


 痛恨だ。

 それが出来てさえいれば、魔道士と当たるのは悠里とレンの2人。

 余裕でリーダーを抑えられたはずだ。


 今はレンvsアタッカー真澄、悠里vs魔道士稔彦という感じで戦ってる。


「それに魔道士が悠里と戦っているけど、彼女はタフだからなあ。

 ちょっと荷が重いかもしれないぜ?

 オレを倒して助けに入るのは間に合わないかもしれないなあ」


 だけど強がる。

 それに、最悪の状況というわけでもないはず。


 アタッカーが龍介と合流とか、リタのところに直行されるとかよりはマシだ。

 そう来られていたら、すでに試合は終わっていたかもしれない。


 たぶん、未知数のこよりや行動が読めないオレを嫌ってのことだろう。

 その慎重さは龍介たちらしいが、裏目に出ていると言える。

 取り返しのきく範囲内だ。


「ちなみに、オレはお前を抑えるどころか倒すつもりだぜ?

 そしてあそこに加勢すれば、さすがにお前らでも崩れるんじゃないか?」


 時間稼ぎという最初の方針は変えてない。


 だとしてもだ。

 ここは虚勢でもそう言うべきところ。

 でないと、龍介はオレを無視して後方に下がりかねない。


 どのみち、今できることを全力でやるだけだ。


「いいだろう、わたしもそうさせてもらう」


 指輪を使えない状況で龍介とやり合って、オレに万が一にも勝ち目はない。


 奇蹟でも起きない限り、彼の勝ちだと誰もが思ってるだろう。

 だがそこで勝負を急いで突っこんでこないのが、彼の手強いところだ。


 それでも、もはや回転の指輪による高速接近や場外飛ばしを恐れてはいない。

 目の前の龍介はゆっくりと、しかし大胆に近寄ってくる。


 そして武器の間合いに入ったところで足を止めた。


 龍介が数秒の沈黙を破り、真っ正面で木刀を振りかぶった瞬間。

 オレは倒れ込むように龍介の足下に突っ込む。


 それが届く前に、おそらく彼の木刀がオレの身体を打つ。

 たぶんタダでは済まないだろう。




 もし、その木刀が指輪の高速移動で加速するオレの体に追いつけば、の話だが。




「バカな!!! なぜそこで指輪が使える!!!」


 不意にもかかわらず、龍介はその加速の異常さに即座に反応するが遅い。

 オレの身体が奴の足をかすり、彼はその体勢を崩す。

 その隙を逃さなかった。


 彼の倒れ込んだ先に指輪で反発力を発生させる。

 龍介も今度はかわせない。


「シュウゥゥゥゥ!!!!」


 そこに倒れ込んだ龍介は、強烈な勢いで観客席まで飛ばされた。




 この闘いに臨むにあたり、オレが課題にしていたのはアイテムの使用回数。

 なんとしてでも、手早く回復する手段を見つける必要がある。


 道しるべはすでにあった。

 破壊の指輪だ。


 これは魔力を他のアイテムに過剰供給することにより、それを破壊する。

 だけど、もし破壊されない程度に魔力を送り込むことができたら。


 それを、


1.鑑定眼で、回復したい対象アイテムの現魔力量と上限をリアルタイムで把握。

2.破壊の指輪で対象アイテムに魔力を送る。

3.上限まで魔力が送られたら魔力結界を発生させ、供給を強制的に遮断。


 という手順で実現した。


 ちなみに本来はこちらで破壊の指輪を使用し自分で補給するつもりだった。

 だけど、龍介が指輪を使ったのはまさに好都合。


 これでアイテムに関して、オレの魔力不足は解消されたように思える。


 ただどういうわけか高レベルアイテムではこれが使えない。調査が必要だ。

 もっとも、今のところ回転の指輪の魔力回復ができれば十分。


 あと供給に時間が少しかかるのも難点だ。

 だけど、そういう意味でも龍介は墓穴を掘ったと言える。




 龍介が場外へ吹っ飛ばされたことによって、こちらが圧倒的に有利になった。


 あとはレンや悠里と合流し、隙を突いて敵2人を場外に放り込む。

 そうすれば、あのバカ王子が丸裸になるってことだ。




 オレは、王子へ向けて高速移動――しなかった。


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