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御前試合⑨ 王子パーティー的にオレたちは小石だそうだ

 偵察ついでの訓練も終わり、オレは教室に荷物を取りに向かっていた。


 さて、店についたらどうしようかな……。

 とか考えながら廊下を歩いていると聞いたことのある声が廊下の先から……。


「――て、レンさんのパーティーなんだって?」


 どうやら曲がり角の先で誰かがうちらのことを話しているようだ。

 あの声は青井龍介、ってあの王子パーティーのアタッカーか。


 で、彼が話しているのは予選の対戦相手の1人……確か中也とか言ったっけ。


 二人の前にひょっこりと姿を現すのも面白そうだ。

 けど、ここは情報収集に徹して廊下の影にさりげなく隠れる。


「ええ、予選では俺たちと対戦することになります」


「そうか。ならば、とりあえずそちらに集中したほうがいいだろう」


 お、龍介はオレたちのことを見くびってはいないのだろうか。

 悪い気はしないが、油断もないとすると心境として複雑ではある。


「そうですか?

 言ってることは分かりますけど、正直素人をいたぶるようで気が進みませんね」


「……」


 龍介のほうは否定とも肯定ともつかない沈黙を示す。

 だけど、それを中也は否定と取ったらしい。


「だって、4人とも非戦闘職ですよ!?

 しかもそのうちの3人は女子ときている。

 まあ、あの悠里って女のバカ力だけは油断できないですけどね。

 でもそれだって軽く避けられますよ。

 そのあとに脇からドカッ、で終わりです」


 どうやら、悠里の破壊力だけは警戒しているようだ。

 しかしそれ以外にはまるで見るところがないと思っている。

 まあ、客観的な評価ではある。1対1なら。


「それより龍介さんのほうこそ、俺に集中してもらえませんかね。

 さもないといい加減、転生者2位の座を奪い取ってしまいますよ?」


 いかにもエンジョイ勢らしい、まるでスポーツでもやっているかのような言葉。


「関係ないな」


 それに龍介氏はガチ勢らしい言葉を返す。


「別にお前をあなどって言っているんじゃない。

 今回で私を越えそうだというのなら結構なことだ。

 強いやつが多ければ多いほど、魔王討伐の勝率があがるのだから。

 とにかく魔王を倒し、現実世界へ帰る。オレにとってはそれだけだ」


 重く、決意のこもった言葉。


「そう、俺たちにはあんな小石につまずいている余裕などないのだ」


 中也はそれに言い返すこともできなかった。

 彼を背に龍介が角を曲がる際に、オレと一瞬目が合う。

 けど、特に立ち聞きしていたことをとがめることもなく素通りする。


 ……どうあれ、両パーティーとも結局オレたちをあなどっているのは分かった。

 てか、小石って……。


 オレだって、こんなのが単なる余興だというのは分かっている。

 龍介から見れば遊んでいるようにしか見えないのも。


 その苛立ちをオレにぶつけるのはいい。

 だが、悠里の努力をまるでないかのように語る資格はないはずだ。




 御前試合予選まであと数日。


 今日はオープン準備に一区切りつけたあと、御前試合の確認会を開いていた。


 前に披露してからあと、追加でオレが見つけてきたマジックアイテムは2つ。


○再現の指輪

○破壊の指輪


 再現の指輪は、ほかのマジックアイテムを時間差で発動させることができる。

 主に罠などの発動に使用されているが、一般には知られていない使い方がある。


 たとえばこの指輪は定期的に繰り返し同じ間隔で発動させることも可能だ。

 しかしそれには古代呪術言語のスペルをイメージしなくてはならない。

 だがその言語はすでに現在、失われている。


 だがオレは世界樹からそのイメージを鑑定情報として直接引き出せる。

 そしてそれをダイレクトに指輪に伝えることが可能なのだ。

 このあたり実験していけば、オレだけの力として役立ってくれそうだ。


 破壊の指輪はほかのマジックアイテムを破壊できる。

 Mpを空気中から集めるためオレのMpを消費することなく使用できる。

 もっとも、ほかの転生者が試合中にアイテムを使用してくるかは微妙。

 とりあえず、今回は保険として持っておこうと思ってる。


 それ以外のアイテムについてもうまく使えるように練習してはいる。

 だがまだ一か八かの失敗覚悟でないと繰り出せないようなものも多い。

 正直もうあと1~2週間は時間がほしいところである。


 それにしても、


「おい、悠里。元気がないじゃないか」


 試合以上に気になるのが、悠里の様子だ。

 ここにいるのにまるで存在感がない。


「……そのさ、バカ王子パーティーに龍介がいるらしいんだ」


「ああ、知ってる。てか、むしろ今さらというか……それがどうしたんだ?」


「最近、龍介のパーティーの一人一人と模擬戦をしてさ。

 全然通じなかった」


「全然?」


「ああ、とにかく攻撃をかわされちゃうんだよ。

 防御されても、当たりさえすれば倒せる手応えはあるんだけどさ……」


「正直、分かっていたことだけど、やはり苦戦しそうね……」


 姉さんがひかえめに『苦戦』という。

 実際は手も足も出ないと言っていいだろう……。


「ねえ。こんなんで、わたしたち、勝てるのかな……。

 こよりも、猛獣を相手にするようなもんだって言ってたし……」


「こよりがそんなことを?」


 そこへレンが割って説明に入ってきた。


「ええ、確か。

 『戦士や勇者は、走る虎にうしろから追いついて締め殺すくらい平気でできる』

 とか

 『熊と真正面から素手で戦って勝てるかもしれない』

 とか言ってたわね」


 どうやら悠里は彼らと戦った時のことを思い出し、自信をなくしてるようだ。

 さらにこよりの話をどこかから聞いたのが、彼女の弱気に拍車をかけてる。

 模擬戦で1回もオレに勝てなかったことも影響しているかもしれない。


 これは……マズいな。

 力の差のことではなく、こんなに気落ちしていると勝てるものも勝てない。


「まあ、そうだな。なによりもこのパーティーは戦闘向きじゃないし。

 かろうじてこより嬢がそれをカバーできるかと思ったが彼女の合流はない。

 次の相手は王子パーティーより格下。

 だが、それでも人間離れした戦いっぷりを見せるはずだ。

 どう考えても勝ち目は薄い」




 ――と、普通思うよな。


「だから、オレたちの勝ちだ」


「「「……え?」」」

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