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御前試合⑧ 悠里との模擬戦

 その日、オレと悠里は、街から少し離れた野原で1vs1の模擬戦をやってた。

 観客はリタ一人。レンは遅れて来るそうだ。


 相手に木刀の一撃を先に喰らわせた方の勝ちというルールの下での戦い。

 最初の一戦目はオレの勝利に終わった。


「ズルいぞ! マジックアイテムで転ばせるなんて!」


「一回喰らっても警戒せずに突っ込んでくるのが悪いんだろ」


「そんなこと言ったって、避けようないんだから近づくしかないじゃない!」


「いや、接近戦に持ち込むってのはいいさ。

 だとしても、もう少し周りや足下に注意しろって話だよ。

 なにもないところから、いきなり攻撃が来るわけじゃないんだぜ?」


「ぐぬぬ。

 ていうかアンタ、回転の指輪は人に使えないって言ってたじゃない!」


 そう、確かにオレは『回転の指輪』の力で悠里を転ばせていた。


 その指輪は、人に対して効果がない。

 なぜならその力が、生きものが基本的に持ってる魔法耐性で無効化されるから。


 と、言われている。

 それは正しい。 

 ただ、このアイテムの本質さえ理解してれば抜け道があることがすぐにわかる。




 こいつは確かに『回転の指輪』と命名されてはいた。

 だがそれは、昔このアイテムを作った奴が皆にわかりやすい名前をつけただけ。


 この指輪の正体。

 それは、魔力を『物体を動かす力』に変換するアイテムなのである。

 簡単に『押す力』と言い換えてもいい。


 例えば岩に指輪を使用すると、一瞬だけその表面に周りを押す力が発生する。

 それにより地面を踏み台に岩が適当な方向に少し跳ね上がり、動く。

 転がるのは、そういうしくみなのだ。



 ちなみにこれらは、オレの鑑定と実験でわかったことだ。


 普通の鑑定士の鑑定では、ただ物を動かせるということが軽く示されるだけ。

 なのでこれらは知られておらず、みんな名前通りのものだと誤解し続けている。



 そしてさらに重要な点が二つ。


 この指輪によって変換した力は、普通に物を押す力と同じものだ。

 よって変換さえ行われてしまえば、発生した力は魔法耐性の影響を受けない。


 さらにこの指輪は、力の発生ポイントを一点に集中させることもできる。

 ポイントは見える範囲に指定でき、発動するときは実際に見る必要はない。


 つまり人に使えば魔力は無効化されるが、足下の地面には力の発生が可能。

 地面に生じた力は無効化されずに相手の足を押し、その姿勢を崩せるわけだ。


 ちなみにクツにも使えそうだがムリだった。

 身体に密着しているとクツだけ全体指定はできないようで。

 足の裏は見えないからポイント指定もできない。

 とりあえず地面に使えれば大丈夫だろう。




「ズルい! わたしもそれ使う!」


「残念だけど、数がないんだ。

 それにおまえ、もうある程度戦闘スタイルが決まってるんだ。

 今からそれに外れたことはあまりしない方がいいだろ」


「ぐぬぬ。

 でも突っ込んだら転ばされて。

 じゃあ遠くからって思ってもわたし魔法、使えないし……」


「だから周りをもっときちんと見て戦えば、問題にならないって言ってるのに」


 そう、この使い方にはデメリットがある。


 この指輪をポイント使用すると、発動までの間ポイントに約一秒魔法陣が出る。

 つまり足下を注意していれば転生者などには避けられてしまうのだ。

 なので敵にこの使い方を多用はできない。


 しかし、


「ぼー、としてると接近してやられるぜ? こんな風に」


 今度は回転の指輪の反発力をオレの足下より少しずれた位置に発生させる。

 あいつのいる方角に向けて、ななめ上に飛ぶように。

 オレの体がわずかな放物線を描いて、全速力より早いスピードで押し出される。


 こんな動きを初めて見た悠里が対応できるはずもなく。

 彼女はオレの体当たりをモロに喰らって体制を崩す。

 そこを木刀でポカリ。


「これで2勝」


 こんな風に高速移動に使えるわけだ。

 1回に行ける距離は10mくらい。


 もっと力を横や上方に強めれば速く遠くに飛べる。

 だがその分、姿勢制御や着地が難しくなってしまう。

 このあたりが限界。


 それでも十分だ。

 不意打ちという意味では何回も使えないだろうが、警戒されても応用はきく。




「イタタ……、いったい今のなんなの!? 

 そんな効果のアイテム、いつ手に入れたの!?」


「別に新しいのを調達したわけじゃないぜ? 

 回転の指輪の力をオレの足下の地面に発動させたんだ」


「そうなのですか!? さすが勇者さま!

 こんな使い方初めて見ます!」


 リタが少し興奮気味でオレに話しかけてくる。


「ああ、普通にこれをやると体勢がうまく保てないからな。

 だから誰もこんな風には使わない」


 だがオレは『具現の指輪』でバランスを取り、それを実現していた。




 具現の指輪は、ゴムのような魔法物質を作れる。

 魔力(Mp)をあらかじめ貯めておいて使用するタイプのマジックアイテムだ。

 作れる魔法物質の量は残りMpによるが、今まで足りなくなったことはない。

 Mpの少ないオレにとってはありがたいアイテムである。

 

 作る物質の性質はゴムやビニールに近く、重さはほとんど感じない。

 また色は白で、注意しないと見えない程度に透かすこともできる。

 打撃にはゴムのような柔軟性を示すが、切ったり突かれるのに弱い。


 物質は見えるところに発生可能だ。

 そしてオレの位置を基準に固定することも可能。

 それで自分の周りの気流をコントロールしている。


 これも調整と練習をかなり繰り返した。


 フリーゲームに、自作の人力飛行機でどこまで滑空できるか競うものがある。

 一時期それをやりこんでいた経験が役に立った。




「それで回転の指輪って、アンタ試合中に何回使えるの?」


「大体6回かな。こいつは二つ持つから、合わせて12回ってところだ」


「そっか、それならなんとかなりそうね」


 ちなみに同じ効果のアイテムは干渉しあう。

 二つくらいなら問題にはならないが、三つ以上になると極端に力が落ちる。


 悠里と色々打ち合わせているとレンがやってきた。


「ふう。みんな、ごめんね」


「いやいや、大丈夫だよ」


「それにしても、今日はずいぶんと遅かったね。

 なにかあったの? レンさん」


「それがね、教会の枢機卿の方が病気で倒れられたらしいの。

 御前試合に影響はないらしいのだけれども……」


 それを聞いて、悠里はホッとしたようだ。

 正直、オレとしては中止なり延期なりになってくれれば、と思ったけど。


「それにしても、症状が出たのは一週間前らしいのよね。

 確かにそのくらい前から表で見かけることがなくなったのだけれども……。

 なんで今になって公表したのかしら」


 どうせ病気かどうか診断するのが遅れたとかそんなところだろう。

 ただ、どうもリタのことを知ってから深読みをするクセがついてしまっている。


 例えば、枢機卿はもう既に死んでいて。

 今、公表するのはマズいからいったん伏せて一週間くらい話し合って。

 その結果いったん病気ということにして、後から病死と発表することにした。

 とか。


 まあなんにしても、御前試合に影響がないならオレには関係ない話か……。

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