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御前試合⑦ 対御前試合予選パーティー編成

 パーティーの編成案が大体できあがった。


 御前試合まであと一週間を切ったその日。

 それをみんなに提案してみた。


 店にある黒板に書いたパーティーの編成は大体こんな感じだ。


アタッカー  :レン

タンク    :悠里

サブアタッカー:シュウ

リーダー   :リタ


 ざっくり言えば、悠里には前線での防御やオトリ。

 レンにはリーダーへの攻撃をやってもらうことにした。

 

「まず、悠里が主力を引きつける。

 その間にレン姉さんが薄くなった敵陣をかいくぐってリーダーにタッチ。

 オレはうしろで二人を援護しつつ、状況を見て攻撃、防御に回る。

 基本はこれで、あとは対戦相手によって細かい役回りは調整していくつもりだ」


「……ユーリさんが引きつける……というのは、倒す必要はないってことね?」


「ああ。それができれば一番だけど、多分難しいだろうからさ。

 基本的には防御に徹して、ただ動きを抑えてくれればいい。

 悠里ならそんなに難しくないはずだ」


 なんか、悠里がジトッとした目線を送ってくる。


「ん? どうした?

 やっぱり、敵を倒したいか?」


「いや、このタンクってなんなのさ?

 名前がなんかこう、デブってしてる感じだけど、そういうこと言いたいの?」


 そっちか。

 てかその、自分の拳をにぎるのはやめてほしい。


「いや、『タンク』っていうのはMMOの用語で、『戦車』が語源になっている。

 敵の前に立ちはだかり、圧倒する、そういうイメージだな」


「そうなんだ……。

 で、あたしはその圧倒的な力で敵をなぎ倒せばいいのね」


「いやさっきも言ったが、防御重視でいってくれ。

 タンクっていうのは強い敵を引きつけ、弱いオレたちを守る。

 そういう役割なんだ」


 悠里のやつ、今度は意外そうな顔をしている。


「なんだ?

 やっぱりアタッカーのほうがいいか」


「ううん、いいね。タンク。

 むしろ守るほうがいい」


 よくわからないが、納得してくれたならOKだ。


 もっとも欲を言えば。

 彼女には『放っておくとマズいことになるよ』と敵に思わせてほしいところ。

 たとえば牽制みたいなことを。


 さもないと相手は悠里を無視して突っ込んでくるかもしれないからな。

 ……でも、こいつにそういう駆け引きなんて無理だろうし。

 補う手を考えないといけない。


「そして、リーダーへの攻撃役は姉さんにお願いしたいんだ。

 いいかな?」


「わかったわ、シュウくん」


「それと、リタは逃げることに集中してほしい。

 君さえ敵に捕まらなければ、こちらの勝率はグッっとあがる。

 オレたちのことを手伝おうとか考えなくていいからね」


「わかりました! 勇者さま!」


「それにしても、もう一人欲しいわね……。

 シュウくんが、ということではないのだけれど……。

 やはりリタさんのそばにいるのが一人というのは不安だわ」


「そうだね……、つねにリタのそばで守るひとがいると安定するんだけど……。

 やはり、こより嬢が加わってくれればなあ」


「いないものは仕方がないよ。

 このパーティーに加わりたい、そう思わせる闘いをするしかないんじゃない?

 とにかく初戦を勝とうよ」


 悠里がなかなかいいことを言う。




「役割分担はこんな感じかな。

 てなわけで、御前試合に向けて使えそうなアイテムを見つけてきたんだ。

 試合ではそれを装備してほしい」


 そう言いつつ、レンに一組の腕輪を差し出す。


「わかったわ。……シュウくん初めてのプレゼントね。

 それでこの腕輪、どういうものなのかしら」


「これは、腕輪同士を接触させている間は風を止める効果があると言われている。

 でも実際は周辺の空気の抵抗を……要するに楽に走れるようになるのさ。

 それはもう一組あるから、リタにも装備してほしい……って、姉さん。

 なんでがっかりしてるの?」


「いえ、わたしだけじゃあ――なんでもないわ……くすん」


「……あの、わたしも、プレゼントをもらってもいいのでしょうか?」


「ああ、構わない、リタ。

 ていうか、プレゼントじゃないし」


「金取る気なんだ。ケチくさい奴」


「あのな、悠里」


 ちなみに、太陽の指輪をみんなに渡すことも考えたが、それはやめておいた。

 一度でも誰かが使えば敵は警戒する。

 なので、指輪はリタが危なくなった時に使いたい。


 これでとりあえず体制は整ったが、どうにも決め手に欠ける感じだ。

 試合当日までになにかもう一つ二つ有効な手が見つかればいいんだけど……。











 その日も、鑑定士としての修行を兼ねてアイテム探しにいそしんでいた。

 だけど今日は掘り出し物も特になく徒労感を味わっている。


 転生して以前とは比べものにならないくらい体力はついているはずだ。

 でも、体に疲れが溜まっているような気がする。

 ひょっとしたら気持ちの問題かもしれない。

 てか、元の世界での苦手意識がまだ根強く残っているのかもな。


 気分転換にと、街中央の噴水前のベンチに座りながらそんなことを考えてた。




 不意に不審な人物が目の前を通りかかる。


 ……?

 今の奴のどこが不審だった?


 ハッとしてそいつの向かったほうを注目する。


 そいつはべつに怪しい人相や服装をしているわけじゃなかった。

 むしろどこにでもいるような街人である。


 だが、オレには感じるのだ。あれが普通ではないと。

 でもどこがそうなのかが分からない。


 オレはその感覚の出所が知りたくなり、自分ルールを破って鑑定眼で視てみる。


 ……鑑定できない?


 そんなことあるものかと目をこらしてその男をみるが、表示が出ない。


 確かに鑑定眼で引き出せる情報はそのアイテムや人物のレアリティに影響する。

 転生者などはその典型。

 ある程度の情報は出てくるが、例えば転生前の出生などには欠落が発生する。


 リタの指輪も情報は引き出せなかった。

 だけど、それは表示が伏せ字になっていただけ。

 だけどこんな、表示も出てこないというのは初めてだ。


 彼がもうすぐ広場から去ってしまう。

 どうしよう、尾行して確かめるか?


 ……いや、やめておこう。


 なんかあれは、『知らないほうがよかったこと』の典型に思えてならない。



 それにしても、鑑定眼も使わずそういう気配が分かったというのは今までない。

 これってオレの鑑定士としての力も日に日に高まってるということだろうか。


 ちょっと励みになった。

 アイテム探しを再開するか。

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