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リタ救出③ 一方、アジトの宿場村では

※レン視点

※シュウたちが古城へ乗り込む直前


 昨日、シュウくんから明日決行するむね連絡がきた。


 それを受けて、数人を除いた村人全員が隣村まで避難。

 今は残った人たちで、きたるべき決戦に備えて準備に動き回っている。


 わたしとこよりちゃんは、とある場所で最終確認をおこなっていた。

 そこはシュウくんと彼女の作った、村の防衛システムを管理する部屋。


 『コントロールルーム』と2人は呼んでいた。



 シュウくんの話だと、防衛システムは古城の設備を模倣したモノらしい。

 以前、魔物たちを完全に閉じ込めたあの結界も部分的に再現されているそうだ。


 今回はそれで外部からの侵入を防ぐ。

 龍脈の力を利用することで2~3日は維持できるらしい。


 もし魔物たちに襲撃されても、それでシュウくんの準備ができるまで持たせる。

 そしてここから魔王に向けて長距離魔法を放つ。

 それが、わたしたちの役割だ。


 これだけスゴいシステムなんですもの。

 きっと大丈夫。うまくいく。


 シュウくんの言っていた、最悪の事態にならない限り。


 そして戦いが終われば、


「シュウくんがもうすぐ帰ってくる……」


「気が早いって、レンねえ。

 まだ、魔王と戦ってもいないのに」


 それはわたしだって、頭ではわかってる。


 一人ならまだしも、リタちゃんがいるのに飛んで帰ってくるはずもなく。

 きっと馬車に乗ってみんなで戻ってくるにちがいない。


 そうなれば帰ってくるのは行きと同じ、早くて2週間後。


「そんなこと言っても!

 もう2週間! 2週間も、あの愛らしい顔を見てないのよ!

 このままじゃお姉ちゃん、シュウくん枯渇症で生きていられなくなるわ!」


「なに言ってるのさ。

 確か前に魔王と戦ったあとなんか、何ヶ月も会えなかったんじゃないの?」


「……あれ? そうだったかし……ら?

 ごめんなさい。あのころのことは朦朧としていて、よく覚えてないのよ」


「ああぁ! いや、ゴメン!

 そうだよね! 早く帰ってきて欲しいよね!?」


 ああ、どうしてこんなことに……。

 本当だったらわたしがシュウくんと、魔王の足止めをするはずだったのに……。


「……シュウくん、もうそろそろ、帰ってくるころよね?」


「レンねえ、ボケ老人みたいになってるよ?」




 やがてシュウくんから戦闘開始の合図が届く。

 コントロールルームに緊張が走った。

 

 このあとは、シュウくんの準備ができ次第、また合図が送られてくる。


 そうしたら、このボタンを推すだけで強力な遠距離魔法が発動。

 シュウくんのセットした装置めがけ光線が放たれ、全てが終わる。


 全てが――




   ビビーーーーーーーーーーーーー!!!




「なにごとなの!?」


 突然、コントロールルームの一角からけたたましい音が鳴りひびいた。


「村より少し離れた場所から、強大な魔力の発生が検知されました。

 これは……」


「! 結界装置をONにして!!!!」


 こよりちゃんの叫ぶような指示。


 けど装置は発動しない。


「あれ? あれ?

 発動しません!!! これ、一体どこを押せば――」


 担当の人の狼狽えた声。


「なにしてるの!!!

 そこのボタンを全部押すだけだって!!!」


 じれたこよりちゃんが、担当の席まで行って操作しはじめた。



 だが、遅かった。



 コントロールルームの画面が全て真っ白に染まりそのあと映し出されたもの。

 それは跡形もなく粉砕された、遠距離魔法発射用の塔……。




 わたしたちが、1年近くかかって準備した……切り札が……。




 そんな、こんなの、シュウくんにどう謝ったら……。





「……塔が、崩された」


「おい、こんなの……じゃあ、魔王をどうやって倒すって」


「レンさん! 一体なにが!!!」


 ユーリちゃんがコントロールルームに……。

 でも、……。


「こより! なにがあったの!」


「ゆ、悠里ねえ。

 塔が! すごい魔法で壊されて! それで、それで!」


「え!? 塔が!?

 ……」


 彼女がわたしに近づいてきた。


「レンさん!!!!

 しっかりしてください!!!

 シュウが言ってたでしょ! こういうこともあり得るって!!!

 そのときどうするか!!! なにか指示を受けてましたよね!?」


 !!!


 そうだった!


「こよりちゃん!! 結界を張るのを続けて!!

 みんなも!! それぞれの持ち場に専念して!!」


「あ、ああ、わたしが、わたしがボタン押し間違えて……。

 しっかりしなかったから――」


「マイルさん、大丈夫。

 落ち着いて対応すれば、ここは世界のどこよりも安全よ?

 こよりちゃんの席と入れ替わって、なにか変化があったら報告をお願い。

 特に、シュウくんの姿を見たら真っ先にわたしに知らせてちょうだいね!」


 青ざめていた彼は、わたしの言葉を聞くと一瞬唖然とした顔になる。

 そのあと、引きつった苦笑いを浮かべて指示に従ってくれた。


「みんなも聞いてちょうだい!

 確かに魔王を倒す最大の切り札は失われてしまったわ。

 でも、シュウくんは言ってた!

 万が一のとき、倒すことはできなくても、封印する手段を用意している、てね」


 それを聞いて、コントロールルームが色めきたった。

 各人の表情に喜色が浮かんでくる。


「今、彼はそのために、アオイくんたちと一緒に必死になって魔王と戦ってる。

 わたしたちの役目は、敵をここに引きつけ、耐えること!

 彼らがそれを成功させるまで、いいわね!」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


 ユーリちゃん、こよりちゃん、ほか皆が気合いのこもった返事をしてくれた。

 大丈夫。これなら十分役目を果たせる。



 ここには、周辺の魔物の気配を察知してマップに映し出す仕組みがある。


 王都にあった魔物感知の魔道具の技術をぬす――ゲフゲフ。

 参考にしてこよりちゃんとシュウくんが作ったものだ。


 それを見る限り。

 塔が破壊されて間もなく多数の魔物が全方位から接近していた。


 おそらくじきに、包囲陣が完成してしまうだろう。

 もはや、突破して逃げるのは難しい。



 それでも、シュウくんなら『助かった』と言っているところでしょうね。


「レンねえ! もうすぐ結界が発動するよ!」


 こよりちゃんが教えてくれてから1分も経たないうちに。

 薄い膜のような結界が発生し、村の周囲を覆う。


 もし魔物が適当に特攻なんて仕掛けていたら。

 かなりの数の魔物が結界内に入ることを許していたでしょう。




 古城の結界は魔王軍幹部ですらやぶることのできなかったシロモノ。

 魔王も直接攻撃では敗れず、周りを破壊することで結界を無効化したと聞く。


 この村の結界はそれを元に、さらに改良をほどこしたものだ。


 それを張り終わり、みな一息ついている。

 こよりちゃんのところを見ていたユーリちゃんも、こちらに戻ってきた。


「ごめんね、ユーリちゃん。思わず気が動転してしまって」


「まったく。しっかりしてください。

 わたし、アイツが言ってた指示、半分も理解できなかったんですから。

 それで塔が破壊されたって、一体……」


「正直、わたしも細かい状況はわからないわ。

 でも、もし、シュウくんの言ってたことが正しいとしたら……」


 わたしは小声で話す。

 ユーリちゃんの耳に自分の顔を近づけ、彼女だけに聞こえるように。


「魔王が、この近くに来てるわ」




『ひょっとしたら、魔王が直接ここへやってくるかもしれない。

 その場合、最悪、初撃でこの塔を破壊しにくる』


 シュウくんは村を出る直前、そんな驚きの発言をしてきた。


 そのときは彼も『確率は相当低い』と言っていたけど。

 だとしてもいきなり塔を狙ってくるなんて、聞いたときは信じられなかった。

 そんな強力な魔法を放てる存在なんて、考えられない。


 でも実際、塔は破壊されてしまっている。

 シュウくんの言うとおり、間違いなく魔王はここへ来ているのだろう。


 さらに問題はある。


 魔王は結界を破壊はできなくても、一時的に穴を開けられるらしい。

 その左手に持つ『偽りの御手』で。


 もし本当なら、わたしたちは今だ安心できる状況にはない。


 でも、大丈夫。

 魔王がそれを使って突破してくるのは戦闘の終盤付近だろうって言っていた。

 そういう性格らしい。


 それに、御手を使われたときの対応もしっかり聞いている。


 こんなことまで予見しているんだもの。

 シュウくんの言うとおりしっかり行動すれば、きっと大丈夫。




 あれから爆発、氷撃、斬撃、雷撃、それらの呪文が村の結界にぶつけられた。

 いずれも、城砦を軽く吹き飛ばすような強大な威力を持つ攻撃。

 けど、この村に張られた結界が揺るぐことはなかった。


 この様子に安心しきったコントロールルーム内の村人。


 だけどわたしたちのパーティーは、王都で魔王の強大さを垣間見ている。

 だから緊張を崩すことなく、警戒維持しつづけていた。


 そんな時間が半日弱、過ぎたころ。

 モニタリングをしていた村人のマイルさんが思いもよらないことを伝えてきた。


「ジングウ……君が?」


 勇者であるジングウ君が村の入り口まで来ているというのだ。

時間を置いて、続きを投稿します。



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