入道雲を見上げて
俺は1人畑を耕していた。
こんな事していても無駄だっていうのは分かっている。
それでもなにかしていないと気が狂いそうなんだ。
ハァー。
溜め息をつき畑にクワを振り下ろす手を休め腰を伸ばし、空にモクモクと湧きあがる真っ黒な入道雲を見上げた。
放射能をタップリと含んでいるであろう入道雲。
昨日の朝始まった核戦争は、夕方に終わった。
本当に終わったのかどうかは分からない、だけど、平原の彼方にあった多数の都市に次々に立ち上がったキノコ雲が途絶えたのが昨日の夕方だったんだ。
村の村長など金持ちは逃げこむ場所を探して右往左往しているけど、何処に逃げるって言うんだ?
それにもう手遅れだろうしな。
朝から歯茎からの出血や鼻血が止まらないし、身体中に鬱血による痣が出来ている。
先程より大きくなり心持ち近づいたように見える真っ黒な入道雲をもう一度見上げてから、俺は畑にクワを振り下ろした。