表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

テーマ「恋人の箸の持ち方が変」

(やっぱり好きだなぁ。)


ふとした時にこんなことを思うのは、本心から零れ出た想いだからだと信じてる。

だからこそ、ハッキリしておきたいな。

ユッキーは、なんか変なとこがあるんだよなぁ。


-----------------------------------


「こんなにじめじめしてると何もしたく無くなるね。」

そう言いながらアイスをほうばりソファーに身を投げだしている彼女の隣で、俺も同じように床に這いつくばっている。

梅雨の時期だから当たり前だが、こうも雨が続くと気分も落ち込む。

だがせっかくの休日に予定を合わせたので、映画におつまみとビールで優雅に洒落こもうと家に呼んだのだが、どうも気が乗らないらしく2人でこの有様だ。


このアイスと共に溶けそうな彼女の名は雪菜。俺と付き合ってもう2年になる。最初こそ色々と喧嘩もしたが、最近はお互いに気を遣ってか意見を尊重しあうようになった。だがその反動でなかなか本音を言えてないなと思うこともしばしばある。


(このままじゃいけないな……)

そう思い始めている男の名は智則。これからの事を考えると不安材料は消しておきたい、現状維持ではいけない、と下手な考えをしている少し残念な男だ。だが智則は真剣だった。


雪菜をこれからも共に過ごすパートナーにしたかったからだ。

もう指輪は用意してある。あとは渡す勇気と最後の覚悟だけ足りない。だからこそ、本音は言いあえた方がいい!と常日頃思っていた。


「そういえば雪菜はさ、なんか俺に不満とかある?」

「.......どうしたの急に?」

「いや、なんかふと思ってさ。」


智則は軽くジャブを入れたつもりだったが、雪菜から意外と警戒した返答が帰ってきたので、少し笑いながら誤魔化した。


「.........そういえば、部屋汚いよね。見えるとこしか掃除してないし。」

「まぁ確かにそうだけど、リビングやキッチンが綺麗だから別にいいだろ。」

沈黙を挟み帰ってきた雪菜の言葉は、痛いところをついてくる。雪菜は不機嫌なようだ。

それに答えるように、俺も機嫌が悪くなる。


「それが良くなーい!見えないとこまで掃除しないと埃は溜まってくんだよ!私がいなかったら、ハウスダストと暮らすことになってるからね!」

雪菜は立ち上がって力説し始める。体躯が小さいからあまり見下ろせていないが、それでも頑張ってつま先立ちをしてドヤ顔をしている。

智則からみたら、産まれたての子鹿みたいに身体をプルプルさせているので怖いどころか可愛く見える。


「そしたら雪菜だってどうなんだよ!食べたあとの食器も片付けないでぐうたらしてるじゃないか!」

こちらも対抗して、立ち上がってみる。正論+見下ろす体勢のため、雪菜は困り顔で見上げてくる。それはそれで可愛い姿だ。


「それを言ったらそっちだって〜!!」

「雪菜がそこまで言うなら俺だって〜!!」

そこからは泥沼だった。お互いの不満を撒き散らし、嫌なことはハッキリと言う。じめじめした空気の中で行われた言葉の殴り合いは二人の気が済むまで続いた。


でも智則は嬉しかった。希望通り本音をぶつけ合えたことも、真剣に自分のことを考えてくれていることも、そんな雪菜も愛おしく思えることも嬉しかった。


その中でも何より嬉しかったのは、、、


「そういえば、雪菜はさ!」

「そういえば、ユッキーはさ!」


「「箸の持ち方が変だよ!!!」」


お互いに同じことを思っていたことだった。

本当にこの人と同じ姓(幸村)になりたいと思った1日だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ