精霊の森
|д゜)ジーー……
「ここ、は……」
目を覚ますと、眩しい太陽の光が木の葉の間から私を照らしている。
緑の爽やかな匂いと土の匂いが感じられる。
多分、ここは森。何かの鳥の鳴き声が聞こえる。
ちょっと大きめの兎と鹿。
見たことない花に、空気中をキラキラした何かが飛び回っている。
なに、ここ。天国?
いや、ほんとにこのキラキラしたの何?
《送り人!みんなー、送り人がいるよ!》
《ほんとだー!見た目は違うけど、魂は送り人の気配だよ!》
「…………」
どうしよう、幻聴が聞こえる。
何か羽の生えた小さな何かが私の周りをうろちょろし始めた。
「…………えいっ!」
蚊を潰すようにその飛んでいるものを狙った。
《ぴぎゃぁ!?何すんのさ!?危なかったー!あと少しで潰されるとこだった……》
「……うん。やっぱり幻聴だよね。これも幻覚?潰しまくるか。」
《ちょっと!サラッと恐ろしいこと言わないで!》
《何この送り人!怖い!》
《私たち精霊に対して失礼なんじゃない!?》
「精霊?……君達が?」
この光輝く謎物体は自称精霊らしい。
《むぅ……信じてないね!?》
「…信じろっていう方が無理じゃない?」
《うっ……確かに、送り人は僕達精霊を見たことがないからなぁ……》
「私以外にもいたの?」
《勿論さ!今までに何十人もこの森に送られてきたよ。》
「その人達はどうなったの?」
《死んじゃった。》
「……は?」
今、死んだって言った?
《送られてくるのは、どれも死体ばかりさ。記憶の泉に耐えられなくて、
ここへたどり着く前に魂が消滅しちゃってね。体に魂が入っていないから、体は腐り果ててこの森の栄養分となる。だから、生きた送り人は久しぶりだよ!》
「…ここはどこなの?」
《ここは精霊の森。精霊達が住む、神聖な森さ。精霊女王をお守りするのが僕達、精霊のお仕事さ。》
「精霊女王?」
《精霊女王は精霊界の王の事さ。
偉大なる力をもつ、特別な精霊さ!》
「ここは……異世界なの?」
《そうだよ!君は違う世界からこちらの世界へ渡ってきたんだ。》
「ねぇ、さっき記憶の泉って言ったよね。」
《確かに言ったよ?》
「記憶の泉って何なの?」
《記憶の泉……またの名を始まりの海というんだ。すべての生物は始まりの海へ還り、転生する事ができる。ただ、君の場合はちょっと特殊さ》
「どういうこと?」
《君の魂は二つある!一つは君の。もう一つは君を大切に思う誰かの魂さ。その魂がいたお陰で、君は記憶の泉の闇に飲まれず、この世界へ転生することが出来た。》
「つまり、もしその魂が居なければ私の魂は消滅してたってこと?」
《そういうこと!余程精神が強くない限り、
記憶の泉の底へたどり着くことは容易ではないのさ。そうだね、例えるなら生きたまま食われても平気でいられるような人間くらいさ。》
「それ、私の事誉めてるの?貶してるの?」
《も、勿論誉めてるさ!そうそう居ないよ、そんな人間!だから君は凄い!!》
少し怯えたような声色で誉めてくる。
私が悪人みたいじゃない、これじゃあ。
ただ光る何かを潰そうとしただけなのに。
「精霊ってお調子者……」
《失礼な!自由気ままと言ってくれよな!》
「はいはい。それで?」
《それでって?》
「…何の為に私はここへ送られたの?さっき、送り人って言ってたでしょ」
《知らない。》
「……は?」
《僕は下位精霊だし、そういうのは伝えられてないもん。そもそも、ここへ辿り着ける者なんて一億年に一回くらいだよ。》
「な、何とかならないの!?訳分からないまま生きてくなんて絶対嫌!」
《だからー、僕は下位精霊だって言ってるじゃんか!上位精霊に聞きなよ。僕はしらないもんねー!!》
と、ふわりと飛び去っていった。
なんて勝手な。
「はぁー……どうしろっていうのよ。」
(≧□≦)だぁぁぁぁ……(何となく叫びたかった)