表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

321/440

封印されし部屋へ


 俺たちは封印部屋を目指していた。

 封印部屋は大宝物庫のフロアより一つ下の階層にある。

 今、その階層に降りたところだ。

 封印部屋を目指しているのが俺、セラス、ムニン。

 他、狂美帝とその護衛を含む連れが四名である。

 禁呪を調べていた学者もその中にまじっているそうだ。

 俺は、狂美帝と話しながら先へ進んでいた。


大誓壁(ナイトウォール)付近の金眼どもの異変だが、確認が取れた。主力のオーガ兵を始めとする金眼……大魔帝の軍勢から、邪王素の放出がなくなっている」

「それはつまり、大魔帝の死を証明している?」

「うむ。それによって女神勢力への抑止力がなくなったのはやや痛手かもしれぬ。が、ヴィシスを倒したあとの懸念材料がなくなったとも言えよう。つまり……大魔帝を倒すための鍵であったS級勇者の説得が、絶対条件ではなくなった。これは、よいことと前向きに考えてよいのかもしれぬ」

「…………」


 大魔帝の死は、ほぼ確定か。

 ここで気になるのは、


 ”誰が倒したか”


 十河か。

 桐原か。


「見方によっては、ここからは女神との戦いに専念できるとも言えますか」

「ああ。余も、気兼ねなく東の我が軍に合流できる」

「ウルザ方面の戦いは、ネーアとバクオスが出てきたようですね」

「カトレア・シュトラミウスと、それの率いる聖騎士団……そこに黒竜騎士団と聞いた。しかしチェスター・オルドと輝煌戦団がいれば、防戦に徹すればまず膠着状態には持ち込めるであろう。その間に余たちが合流し――そのまま一気に、アライオンまで攻めのぼる」


 狂美帝は声量を落とし、視線だけをちらと斜め後ろへ滑らせた。


「その際、ネーアとバクオスを味方に引き入れられるのが最善だが……カトレアの方は、セラス・アシュレインにどうにかしてもらえそうか?」

「ワタシもあの姫君と敵対するのは本意ではありません。セラス共々、最善を尽くしましょう」


 セラスもネーア軍のことは気になっているようだった。

 しかし、


『魔防の白城で再会した際、状況的に敵対し合った時のことは姫さまとすでに話し合っております。ですので、私のことはどうかご心配なく』


 そう言っていた。

 まあ、俺に余計な気を揉ませないためのセラスなりの配慮かもしれないが。

 ただ……。

 腹を決めた、というか。

 今のセラスは以前と比べ、その辺りの覚悟が決まっているに見える。


「して……封印部屋の件が済み次第、陛下と我々はそのまま東へ?」

「先の帝都襲撃の影響で遅れていたが、準備も整った。帝都を任せるルハイトも戻ってきたことだしな」


 ルハイトにはここへくる直前に顔を合わせている。

 ホークの件は、すでに報告を受けて到着前に知ったそうだ。

 ルハイトはこう言っていた。


『ツィーネ――陛下からこう言われましてね? セラス・アシュレインはホークの死が自分のせいだとかなり気に病んでいたから、あまりいじめてやるな……と』


 彼は微苦笑し、続けた。


『さらには選帝三家のお歴々やカイゼからも、念入りに同じ忠告をされました。まあ、聞けばその件で彼女を責めるのも酷な話でしょう。ふふ……まったく生真面目な姫騎士殿だ。彼女も、被害者でしょうに』


 ルハイトは最後にこう括った。


『ああ……彼の死を悲しんでいないわけではありませんよ? ただ、気持ちの整理は帝都へ入る前につけてきましたので。彼を見込み、また、とても好ましく思っていたのは事実です。ですが、今回の反女神戦争は誰もが”そうなること”を覚悟していなくてはならない。犠牲を呑み込む覚悟がないのなら、最初から戦争など仕掛けなければいいのです。悲しむのはもちろんいい。けれどいつまでも悲しみに足を取られるな、と……そういうことです』


 記憶を引っ張り出すのを中断し、俺は、隣の狂美帝に言った。


「ルハイト殿には、陛下がひと言事前に口添えしてくださったそうで」

「口添えがなくとも問題はなかったであろうがな。あれは”人物”だ。余亡きあとの後釜に据える者としては、十分な器だ」


 ルハイトとカイゼはここに同行していない。

 今は、城の一室で今後の方針を話し合いながら各方面に指示を出している。


「ただ、こうなると対女神の力……禁呪の秘密を得ることがさらに重要度を増したと言える。勇者がこのまま東の戦場に加わることもありえなくはない。女神が元の世界への帰還を人質に取っての参戦強制も、考えられる」

「つまり、女神に頼らず元に戻る方法がある――封印部屋ではその確実な根拠を得られるかもしれない。勇者を女神から離反させられるかどうかの鍵は、封印部屋の秘密にかかっているとも言えるわけですね」

「その通りだ」


 狂美帝が足を止める。


「……さて」


 話しているうちに、そのくだんの封印部屋の前まで来たらしい。

 彫刻の施された扉。

 扉の雰囲気は大宝物庫のものと似ている。

 ただし、違いもある。

 あの刻まれている彫刻は、大宝物庫の扉にはなかった。

 もう一つの違いは、扉の中央の少し上に嵌め込まれた水晶。

 水晶の方は大宝物庫の中にあった照明パネルを想起させる。

 よく見れば、この水晶も中心から放射状に扉にラインがのびていた。

 その時、


「あっ」


 ムニンが、何かに気づいた反応をした。

 一方で、狂美帝は水晶に手で触れて魔素を流し込んでいる。

 扉のラインが青白く発光していくが、


「こうして光りはするが、開かぬのだ」


 光りはしても、開く気配がない。

 ムニン、と俺は声をかけた。


「さっき何か気づいたみたいだったが、読めるか?」


 あごで扉の彫刻を示す。

 彫刻の文字が、どことなく似ている感じがしたのだ。

 そう――禁呪の呪文書に記されていた文字に。

 狂美帝もムニンを見て、


「そうだ、余もこれは禁字と見ていた……?」



「『ここに、刻まれし文字を読みし者……この扉を開く資格を持つ――神にあだなす……意志、ある者として』」



 ムニンがそう口にした瞬間、



 ……ゴゴゴゴゴゴゴッ……



 かすかな振動が、あって。

 扉が、開いた。

 おぉぉ、と学者が口を半開きにして見入る。


「あ……開いた……あの、開かずの封印部屋が……」


 感動に打ち震えていた。

 ま、いわゆる”開かずの間”に独特の魅力を覚える感覚はわかる気もする。


「陛下……まずは我々が。罠が仕掛けてあるかもしれませぬゆえ」


 言って、ランタンを手にする護衛の騎士たち。

 しかしセラスが、


「あの、室内のすべてをくまなく照らせた方がよいかと」


 光の精霊で室内を照らす。


「おぉぉ……ありがとうございます、セラス殿。では……陛下と蠅王様たちはそこでお待ちを」


 言って、護衛が部屋の中に踏み入る。

 しばらくして、


「ここはワタシも協力しましょう。罠探しには、それなりに経験もありますので」


 俺も、警戒しつつ入室した。

 広さは……。

 元の世界で言えば、15畳ってとこか。

 正面奥の壁……そして、左右の壁にも文字が彫り込まれている。

 奥の壁の前には青銅製らしき長卓。

 卓上には同じく青銅製と思しき平らめな箱が三つあった。

 ただし二つは蓋が開いている。

 空っぽのようだ。

 他に、室内には……。

 空の棚。

 部屋の隅などに、こちらも蓋の開いた古びた木箱が置いてあった。

 しばらく室内を探ってみた。

 罠などはなさそうに思える。

 手で合図し、俺は狂美帝たちを招き入れた。

 入室した狂美帝は鼻を覆っていた袖を離すと、


「……粉っぽさがないな。精霊の光を受けても石粉が室内に舞っている感じもなかった……カビ臭さがなく、無臭に近い。奇妙な部屋だ」


 マスクのせいか、俺はその辺をあまり意識できなかったが。


「そこの棚は空……床に置かれた木箱の中身も、すべて空のようです」


 俺が言うと、狂美帝は口もとに手を添えて唸った。

 彼の視線が卓上の二つの空箱へと向けられる。


「かつて何者かが部屋のものをいくつか持ち出した、と考えるべきか――して、ムニンよ」


 が、ムニンに反応がない。

 今度は俺が呼びかけてみる。


「ムニン?」

「――え? あ、ごめんなさい……つい、意識が壁の文字の方に」

「そちはあれも読めるのだな? なんと書かれているか、教えてもらいたい」

「え、ええ……わかりました」


 緊張顔のムニンは視線を走らせ、壁の文字を追う。

 それから、


「そのまま読むと文言が仰々しいので、わかりやすく言い換えてお伝えします。また、余分と思われる情報も一旦省きます。何をお知りになりたいかは事前に聞いておりますので。あと……おそらく文字が欠けたり潰れたりしていて、読めないところもあります。そこはご了承ください」


 そう前置き、


「まずはその奥に置かれた机のような台ですが……そこには禁呪の呪文書が入っているようです」

「二つは空だが……」


 狂美帝が蓋の閉まった箱を学者に開けさせた。

 貴重な骨董品を扱うような手つきで、学者が蓋を上げる。

 出てきたのは――筒状の紙が一つ。


「呪文書か。読めそうか?」

「……お待ちを」


 古すぎると触った途端、破損しかねない。

 学者は、冷や汗を流しながら呪文書を検める。

 そうして――ふぅぅ、と吐息を漏らした。


「大丈夫そうです。おそらく素材が特殊なもので、かなり丈夫なのでしょう。この結び紐もほどいて問題ないかと」


 言って、学者は丸まった呪文書を狂美帝に渡した。

 それを受け取った狂美帝はそのまま壁の方へ視線をやって、


「ムニンよ、まず……壁の文字の続きを頼む」

「あ、はい。左右の壁に描かれているのは高度な改良型の古代呪文……つまり、禁呪とのことです」


 左右の文字には見覚えがある。

 おそらく。

 俺の持つ三つの呪文書に記されている文字。


「呪文書の文字は特別な刻印液で綴られていて、この壁の彫刻文字を読んでも禁呪を宿すことはできない……壁の文字は、いわゆる”答え合わせ用”のようです。上の方が禁呪の定着詠唱文と、発動文で……それから――」


 スカートの裾を気にながらしゃがみ込むムニン。


「下のこのやや小さな文字が”こういう効果を持つ”と記された……説明文と、その添え書きみたいなものみたい」


 狂美帝が、ふむ、と唸る。


「まさに……禁呪の秘密が隠された部屋、か。わかりやすい要約に感謝するぞ、ムニン」


 学者に指示を出す狂美帝。

 すると学者が、禁呪の呪文書を手荷物から取り出した。

 先ほど見つけた方ではなく、以前から持っていた方だろう。

 皇帝から言われ、学者がムニンにそれを渡す。

 狂美帝が尋ねる。


「では……答え合わせを、頼めるか?」

「かしこまりました」


 ムニンが、壁の文字と呪文書に何度か視線を往復させた。

 そして、


「この呪文書は”送還”……勇者たちを元の世界へ戻すための、送還呪文です」


 学者が”やった”という顔で狂美帝を見た。

 が、狂美帝はまだ喜びを浮かべてはいない。


「使用条件などは書いていないか?」

「要するに、これは……つまり、神族の刻んだ召喚や送還を行う魔法陣があれば――神族でなくとも送還の儀を行うことは可能である、と……ただ、やはりわたしたち禁字族が必要となりそうです」


 学者が”やりましたな!”という顔を皇帝に向ける。

 狂美帝も、やや安堵した様子を見せた。


「では、先ほど手に入れたこちらの呪文書も頼みたい」

「わかりました。欠けていない文字のところのだと、いいのだけれど……ええっと……」


 独り言を呟きながら移動し、今度は逆側の壁に向かうムニン。


「あ……、――あったわ」


 ホッと胸を撫で下ろし、ムニンは再び視線を忙しく動かす。


「この呪文書は……”召喚”――」


 ピクッ、と狂美帝が反応する。


「異世界から邪王素の影響を受けぬ者を、召喚する呪文……」


 尋ねる狂美帝。


「――他には?」

「え、ええ……こちらも先ほどと同じで、魔法陣と禁字族が揃っていれば召喚の儀は可能みたいです」

「必要なものは?」

「会得に青竜石……儀式を行うには、根源素……あるいは、それに比するなんらかの力が必要になると……」


 学者の三度目の喜びが、いよいよ口からこぼれ出た。


「陛下ッ」

「……青竜石は、いくつあった?」

「十に満たぬほどですが……世界中からかき集めれば、他にもそれなりには集まるかと……ッ」


 そういえば。

 青眼竜ってのは元々、主にミラの西の山脈に棲息してたんだったか。

 なら、立地的に青竜石を所持しやすいのも頷ける。

 禁呪関連の情報を狂美帝らは以前から得ていた。

 で、青竜石も事前に集め、抱えていたのだろう。

 ……俺の”無効化”の禁呪は発動時に青竜石を消費する。

 が、召喚と帰還の儀の発動に青竜石は必要ないようだ。

 会得のために二つあれば十分、と。

 しかも、向こうは向こうでちゃんと青竜石を用意してあったらしい。

 その時だった。


「そう、か――、……」


 脱力するような反応を示す狂美帝。

 と、いうか。

 ふらりと倒れ込みかけたので、俺が後ろから両肩を支える。


「大丈夫ですか、陛下?」

「……すまぬ。いささか、気が抜けた」


 狂美帝は俺の手の甲にてのひらを置き、すぐに自分の足で立った。


「実在を確認し、さらに、期待していた力を持つ禁呪の呪文書を手に入れた……賭けに勝った、と言ってよい。ここでその二つを手中に収められたのは大きい。これは、S級勇者への大きな説得材料となろう」


 確かに。

 これは、大きい。

 十河への説得材料としても。


「女神に頼らず、我ら人の手だけで今後も根源なる邪悪と戦っていくことができる……ここが余の最大の懸念だったのだ。ヴィシスの次に話の通じる神族が派遣されるなどという希望的観測は、次善策としてはあまり頼りたくない……そう考えていたゆえな。しかし、なるほど……これでは、あの女神が血眼になって禁じるわけだ……」

「ただ、クロサガの紋持ちが……」


 喜びに水を差すようだが。

 結局、紋持ちが絶えたら持続はできないのではないか。

 と、ムニンが俺の懸念を理解したのか、


「紋持ちは、これまでも一族の中から一世代に最低一人は生まれているわ。今後も続くかの保証はもちろんないけれどね。病死もありうるし……ただ、前例に従えば、今のところ絶えたことはないの」

「分が悪すぎる、ってわけでもないのか」

「紋持ちは、族長から教育を受けて次の族長になることも多いのよね……ふふ、まあ……わたしは別に、紋持ちだからといって族長になる必要はないんじゃないかしら、と思っているけれどね?」


 苦笑するムニン。

 その苦笑の奥にはあの子――フギへの思いやりがうかがえる気がした。


「…………」


 つーか。


 クソ女神を打倒するために必要なものが、三つとも揃ってたんだな。


 旅の終わりが、見える頃にではなく。

 旅の始まりの、絶望的な状況の時に。


 召喚。

 送還。

 無効化。


 どういう禁呪なのかをあの男が知っていたのかは、わからない。

 が、廃棄遺跡で息絶えていたあの男――大賢者アングリン。

 死地に持ち込んでまで女神に渡すまいとした呪文書。

 今、召喚と送還は狂美帝の手もとにもある。

 しかし。

 狂美帝の手に”無効化”はない。



 あの廃棄遺跡に落ちてなけりゃあ、手に入らなかった。



 …………。

 改めて、あの大賢者に心から感謝したい気分だった。

 無効化の禁呪があるおかげで。

 ハズレと断じられたこの状態異常スキル。


 自らの手で、あのクソ女神に叩き込める。

 自らの手で、復讐を行うことができる。


 そう――――この手で。


 狂美帝は呪文書の紐を縛り直し、


「しかし……女神自体を直接打倒できそうな禁呪は、ここにはなかったか。ただ、今回の召喚の禁呪はそれに勝る成果とも言える……女神との直接対決は、アサギと、そして味方に引き入れる予定のS級勇者に期待するとしよう」


 無効化の禁呪は、弱体化ってのとは微妙に違う気もするが……。

 狂美帝にも無効化の禁呪の存在は伝えておいた方がいいか?

 ……いや。

 無効化の禁呪の所持を知る者は極力少ない方がいい。

 少なくとも、今の時点では。

 ミラのどこにヴィシスのスパイがいるかもわからない。

 逆に、


 ”現存しているのは送還と召喚の禁呪のみ”


 ヴィシスのスパイがそのように認識してくれれば。

 こちらが、有利となるかもしれない。 


「そして、蠅王よ」


 狂美帝が口端をわずかに緩め、俺を見た。


「そちの呪術にも期待している」


 ええ、と俺は応えた。


「陛下のため、また、最果ての国の者たちのため……ひいてはこの世界の未来のため――ワタシも、この決戦に全力を尽くしましょう」





     ▽



 地下から戻り、俺たちは一度狂美帝と別れた。

 迎賓館へ行って今後の準備を始めねばならない。

 まずは、今のヴィシスのいる場所を突き止める。

 どこへ行き――どう、決着をつけるか。

 方針を決めねばならない。

 女神の居所を知るのに最も有効なのは、やはりエリカの使い魔だろう。

 そんな具合に館へ戻ると、ピギ丸が慌てた様子でピーピー寄ってきた。


「エリカの使い魔が?」


 小鳥が鳴らせる鈴を鳥かごに入れておいた。

 規則性のある鳴らし方で合図を決めてある。


 ”急ぎ伝えたいことがある”


 今回のは、緊急の合図。

 ちなみに最も緊急ではなく、緊急度はその一つ下である。

 実は、この合図は前にも一度急用で受けている。

 なのでピギ丸もすぐわかったようだ。

 俺たちは二階へ行き、使い魔のいる部屋に入った。

 急いで鳥かごから使い魔を出し、文字盤を用意する。

 早速、使い魔がせかせか走り回る。

 迷いが見られた。

 大きな負荷を承知で発声でさっさと伝えるべきか、という迷い。

 俺たちは――待った。

 急いでいるせいだろう。

 出来上がっていくその言葉はカタコトのように、ぎこちない。



 ”魔群帯 北からミラ方面に 金眼の魔物 人面種 大量移動 北方魔群帯”



 北方魔群帯。


 魔群帯にて最も強力な金眼たちが棲息すると言われる領域。

 かつてエリカ手製の魔導具の力を借りて通り抜けた場所。

 通り抜けたのは半分――つまり、北方魔群帯の深部だった。

 あそこを感知されず抜けられたのは、大きかった。


 そいつらが……ミラへ向けて移動してきている?



 ”北方魔群帯 魔物 人面種の死体 たくさん 争った形跡”



「あの口寄せの魔物が、発動したのか?」



 ”違う 統率 妙に 取れている そして 見つけた 大移動している群れの中に 人間”



「人間?」



 ”その人間 魔物たちを 従えている そう見えた 何かの力 操っている可能性 高い 思う”



「……人間」



 ”聞いていた特徴 一致 タカオにも確認 こっちも 一致”



 使い魔が最初の一文字を表現した時点で、その人物が誰か予測がついた。

 そして、すべての文字が出揃う。





 ” キ リ ハ ラ ”





 ほどなくして狂美帝から、呼び出しがあった。


 マグナルの軍魔鳩が伝書を運んできたという。



 差し出し人は――――





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
キ⭐︎リ⭐︎ハ⭐︎ラ⭐︎
[気になる点] >……ここが余の最大の懸念だったのだ。 >ヴィシスの次に話の通じる神族が派遣されるなどという希望的観測は、次善策としてはあまり頼りたくない…… ヴィシス以外の神族が、ちゃんと存在し、人…
[一言] 桐原ブロントさんっぽいなw汚い流石状態異常汚いってなりそうだ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ