互いにキツネであり、タヌキ
俺はムニンを連れて交渉の場へ戻った。
ミラの連中の視線はムニンへ注がれている。
黒い翼は、出したまま。
「そちらが?」
ルハイトが確認してくる。
ムニンは一礼した。
「はい。禁字族――クロサガの族長を務めます、ムニンと申します」
俺は、彼女がミラへ赴く意思があることを狂美帝に伝えた。
その後、ムニンは禁字族について話した。
女神を倒したい想いも。
以前、俺に話したものとほぼ同じ内容である。
ただし、ぼかした方がいい部分は事前に打ち合わせてあった。
話すのが上手いのもあるだろう。
ミラ陣営も、語られた動機には納得の相を浮かべている。
ムニンが話し終える。
二言三言、言葉を交わしたのちムニンは一歩下がった。
あとは俺に任せる、との意思表示。
俺は言った。
「陛下、リィゼ殿と少し……内々に相談したいことがございます」
「よかろう」
「リィゼ殿、よろしいでしょうか?」
「? は、はい」
リィゼと二人、俺はその場からやや離れた。
ミラ勢からも俺たちの姿が見える程度の距離。
ほどなく、二人で席に戻る。
狂美帝が尋ねた。
「相談ごとはまとまったか?」
「はい。同盟の締結のため、国の代表として宰相のリィゼ殿が貴国へ赴く件なのですが――」
側に立つムニンの方へ俺は一度顔を向けて戻し、続ける。
「例えばの話、ですが……クロサガの族長であるムニン殿が国の代表として赴いたとしても、問題はないのでしょうか?」
「ふむ……」
視線を伏せて沈思する狂美帝。
ややあって、彼は視線を上げた。
「ムニン殿にその資格があるのなら、余はかまわぬと考えるが……いかがか、リィゼ殿?」
「はい。彼女はベルゼギア殿と違い我が国の者ですし、族長の一人でもあります」
リィゼは横のニコとジオを手で示し、
「たとえば、ここに列席している四戦煌の者も部族の族長です。我が国は現在この族長格の者たちを中心とした合議によって物事を決めており……」
リィゼはそこから、
”つまり族長格には宰相の代理にふさわしい格がある”
と説明した。
なるほど、と頷く狂美帝。
「であれば禁字族――クロサガの族長であるムニン殿にも、同等の資格があると考えてよいわけだな」
補佐官が羊皮紙に何か書き込んでいる。
彼は先ほど狂美帝に命じられ、席についていた。
書いているのは議事録的なものだろうか?
選帝三家への報告に必要なものなのかもしれない。
狂美帝が問う。
「ルハイト、おまえはどう思う?」
「そうですね……彼らのこれまでの経緯を考えれば、見知らぬ国へ赴く際に警戒するのは当然かと思います。王が今回出向かぬ理由も、それで説明はつけられるかと。それに何より……選帝三家は最果ての国の序列など知り得ません。もっと言えば、我々だってその真偽を確認できないのです。向こうに彼女が外交役だと言われれば、現状、こちらはそれを受け入れるしかない」
「ふっ……そういうことだな。貴国が正式に代理として派遣した者であれば、それが誰であろうと我々としては”適格者”として受け入れざるをえない」
狂美帝は目もとを緩めて俺を見据えると、
「と、いうわけだ」
「…………」
やはりか。
今回の同盟締結における調印式。
王とか。
宰相とか。
向こうは相手の地位にさほどこだわっていない。
いや……。
仮に俺が代理で調印式へ出る、と言ってもいけそうな気すらする。
要は同盟による最果ての国からの戦力提供は二の次……。
本命はやはり、封印部屋の秘密――禁字族。
”禁字族さえ招き封印部屋の秘密を手に入れられれば、極論、同盟は白紙になってもいい”
そうとすら、思っているかもしれない。
これは、こちらとしては――利用できる。
「では……」
場が一段落したのを見計らい、狂美帝が口を開いた。
「そなたたちは、ムニン殿と共に我々とこのままミラへ――」
「いえ……できれば出立まで少し、お時間をいただきたく」
ここで、
”狂美帝たちと一緒にミラへ”
は、避けたい。
「ふむ」
「出立前にある程度、先の戦いの後処理をしてゆかねばなりません。ワタシも今は、最果ての国での役割がそれなりにございますゆえ……」
まず、今眠っている安のことがある。
ミラへ赴く前にあいつの件は片付けておきたい。
最果ての国のヤツらに色々指示を出しておきたいこともある。
あとは――何より、まだ俺は狂美帝やミラを信用し切れていない。
ミラの王都は一日で辿り着ける距離ではない。
野営中に万が一大勢で襲いかかられでもしたら……。
さすがにまずい。
だから、ミラへは狂美帝らと共にではなく別行動で向かいたい。
狂美帝は何やら得心めいた顔で、
「よかろう、好きにするがよい」
申し出を受け入れた。
俺の考えを察してのあの反応なのかは、わからない。
「では、そちたちには特級証を渡しておこう」
補佐官が意外そうな顔をする。
彼は丸眼鏡の位置を直しつつ、
「い、一級ではなく――特級、ですか?」
「当然であろう。彼らの存在は今の我が国にとっては欠かせぬものだ。道中、つまらぬ些事が障害となっても困る」
悪戯っぽく答える狂美帝。
ルハイトが補佐官へ一つ頷きを送った。
すると補佐官は、
”わかりました”
とばかりに口を噤み、少し身を引いた。
「狂美帝の”個人的な客人”を示す特級証は、ミラ領内においては大抵の場所で通用する通行証となる。同時に、そちたちの立場も保証される。余たちと別にミラ入りしても、困りはしまい」
要するにかなりの厚遇、と。
「陛下のご厚意、感謝いたします」
「……蠅王よ。宰相とのやり取りを見るに、そちが最果ての国と関わりを持ったのは最近のことのように思えるが」
「おっしゃる通りにございます」
「そちはなぜ、最果ての国の味方となった?」
「それは――簡単なことに、ございます」
そう、簡単なことだ。
実に。
「これからワタシの仲間が一人、最果ての国の住人となるのです」
「…………」
「その仲間が住む国を踏み荒らされるわけにはいかない……それが今、ワタシが最果ての国へ肩入れしている最大の動機にございます。そして、アライオンの女神は最果ての国へ兵を差し向けました――あまりに、残虐なる者たちを。今回こそ退けましたが、今後も同じことが起こるやもしれませぬ。ならば……根を、絶つしかない。つまり、女神ヴィシスを完膚なきまでに叩き潰す。それを阻む者がいるのなら――ワタシは、迷わず”敵”となりましょう」
「それが仮に……我がミラが相手でも、か?」
「仮に障害と、なるならば」
ふっ、と狂美帝が笑みを漏らす。
「大義とは、ほど遠い動機だな……あくまで個人的な動機、と。怖いな、そちのような者は」
狂美帝が腰を浮かせる。
切り替えるように、彼は言った。
「では、余は先に王都へ戻らせてもらう。すでに戦端は開かれているのでな。優秀な者ばかりとはいえ、いつまでも家臣たちだけに任せておくわけにもいかぬ。やることは、山積みだ」
と、狂美帝が自ら己の顔を指差した。
その澄んだブルーの瞳は、セラスを映している。
「昔、旅の奇術師から学んだことがある。瞳の動き、声の高低の変動……細かな手足の所作や、呼吸の様子で、相手の感情の動き、考えが読めるようになると。それを応用すると、相手が嘘をついているか否かがわかるらしい。余にそんな器用な芸当はできぬが……セラス・アシュレインはそれに近い技術を持つようだ。交渉中に何度か行っていたあの合図……おそらく、真か偽かの予測を背後から伝えていたのであろう?」
「…………」
こいつ。
見抜いてやがった。
種明かしの中身こそ違うが……。
こちらが真偽判定をしていたのを察していた。
背後から、戸惑った気配。
「いえ、それは……」
セラスの反応が、認めてしまっている。
「ふ、かまわぬ。なれば、嘘を見抜かれるという前提で話せばよいだけのこと。そしてその仮面や変声には、表情や声の調子から感情を読み取りづらくする効果もある……と」
ふふん、と狂美帝が人差し指をその白い頬に滑らせた。
何もかもを見透かすように双眸を細める、若く美しき皇帝。
「互いの伏兵も、出番がなく何よりだ」
伏兵の存在も、やはり勘づいてはいたか。
「申し訳ございません、陛下。ですが、まだ我々は互いをよく知りませぬゆえ……先の第一騎兵隊の件もあり、不測の事態への備えはさせていただきました」
「なに、やはり謝罪には及ばぬ。むしろ抜け目のない相手と余は少し嬉しく思っていた。そのくらいの方が、轡を並べる相手としては好ましい」
「僭越ながら――陛下は、お人好しにございます」
「ん?」
「ここで気づいていると明かさなければ……陛下ほどの方であれば、それを逆手に取って利用もできましょうに」
「愚者を演じ相手を油断させる、か」
狂美帝はシーッとするみたいに人差し指を唇に添え、
「奇術師はこうも言っていた。種明かしや打ち明け話をした時こそ、それを聞いた者は相手を信用してしまうものなのです、と」
胸襟を開く、ということは。
愚者を演じる以上に信頼を勝ち取れる、と。
その通りだ。
この若い皇帝――やはり、一筋縄じゃいかなそうだ。
つーか……。
そっちこそ抜け目ねぇだろ。
味方と考えれば心強くはある。
が、現段階だとまだ本心の部分が見えてこない。
狂美帝が、身を翻す。
夕日に照らされ輝く金髪が、艶やかに揺れた。
「蠅王……そちとは一度、二人きりでゆっくり話してみたいものだな」
狂美帝はその秀麗な横顔を一度こちらへ向け、
「では――王都での再会を、楽しみにしている」
狂美帝はそのままルハイトと補佐官へ手早く指示を出した。
このあと補佐官が残り、細かい詰めのやり取りをするそうだ。
捕虜の扱いとか。
今後の連絡方法とか。
ともあれ、ここから先はリィゼに任せて大丈夫そうだ。
他のミラ勢は皇帝と共に引き揚げる動きに入っている。
俺はというと――
鹿島小鳩について、考えていた。
鹿島の反応。
どうにも、気にかかる……。
あの反応はやはり”俺”だと気づいたのか?
しかし――わからない。
三森灯河と繋がる要素が、どこにあった?
細心の注意は払ったつもりだ。
「…………」
鹿島も何か固有スキルを得た?
まさか、俺の正体を見破れるようなスキルを得たとでも?
なら、説明もつくが……。
もし固有スキルの能力で見破られたのなら――
どんな演技をしようが、意味などない。
当の鹿島はというとすでにミラ兵に付き添われ、この場を離れている。
浅葱は、狂美帝と何やら言葉を交わしている。
……鹿島は本当に蠅王が”俺”だと気づいたのだろうか?
が、ここで確認するのはかなり難しい。
ここで”蠅王”が――特に、鹿島に会いたがるのは違和感が強すぎる。
狂美帝の奥の手らしい浅葱なら、まだしも。
鹿島と接触するには、もっと自然な流れが必要だ。
となると……。
ミラへ到着してからなら自然と接触できる機会は作りやすい、か。
というか――
ある程度はもう、正体がバレている前提で動きを組み立てるべきかもしれない。
一応あいつらは味方陣営らしい。
バレたとしても敵側よりはやりやすいだろう。
が、懸念材料は浅葱たちが女神に送り込まれたスパイ――
蓋を開けたら、実は女神側だった場合。
確信を得るまでは、これを考慮しなくてはならない。
……思考が堂々巡り一歩手前になってきてるな。
現時点だと、今後を組み立てる上での判断材料がまだ少なすぎる。
と、
「申し訳ございません、我が主」
反省するような調子で、セラスが話しかけてきた。
「その”申し訳ございません”が、真偽判定の合図がバレてたことへの謝罪なら必要ないぞ。セラスに責任はねぇよ」
うっ、と図星をつかれた反応をするセラス。
恥じ入るように俯き、彼女は身を縮めた。
「そ、そのことの謝罪でした……」
「相変わらず生真面目な騎士様だな」
「め、面目ございません」
「そうか? 今回の交渉、面目は十分立ってるさ」
引き揚げる狂美帝らを見送りながら、俺は言った。
狂美帝たちは俺たちが来た方角とは逆――西へと消えていく。
まるで、太陽が沈んでいくみたいに。
見上げると空も夕焼けが主張を薄くしていた。
沈み駆けた夕陽が、空と地の境界線を輝く橙に縁取っている。
▽
俺たちは今、扉の中を目指していた。
伏兵も途中で合流し、ぞろぞろと帰途についている。
ミラ勢の一部は明日まで近くに残るそうだ。
他にもし何かあれば明日までに彼らに伝えてくれ、とのこと。
伏兵組だったロアに乗った隣のリィゼに、俺は声をかけた。
「どうにか、まとまったな」
「そうね――といっても、これからが大変そうだけど。ところで、ムニンをアタシの代理としてミラへ行かせるって話……結局、ムニンで決まったわけだけど……」
結局、あの場に残ったミラ側との話し合いでそう決まった。
リィゼがうかがうように、
「やっぱりその……アラクネよりは、有翼人くらいの方が見た目的にいいのかしら……?」
「ん? ああ、そういう意図はない。俺はあんたの外見は好きだし、向こうだって見慣れない種類の亜人なら、少しでも早く見慣れた方がいいと思ってる」
「す、好きとか――ッ」
「…………」
そっちに食いつくのは、リィゼらしい。
フン、と俺は鼻を鳴らしてみせる。
「好きで悪いか?」
「ほん、と――悪い男よね……ッ! い、いえそこまで悪くないけど……な、何よそれ! なんなのよ!」
ともかく、とスレイをリィゼの方に寄せる。
声が周りに、あまり聞こえないように。
「俺は、まだミラ側を完全に信用しちゃいない」
「……そりゃ、アタシもだけど」
「狂美帝に褒められて照れちゃいたけどな」
「ほ、褒められたら照れるでしょ! 普通よ!?」
「狂美帝は顔もいいしな。あれなら、男女問わず褒められて悪い気はしないだろ」
「う゛~……顔がイイだけの人間は、あのミカエラとかいうので懲りたわよぉ。顔とか物腰とかよくても、信用できない! もう、なんなのよ人間!」
「俺も人間だけどな」
「ア、アンタは別! ……って、話が逸れてる!」
話を戻す。
「元々、向こうは禁字族を手に入れたがってた。だから、もしかしたら俺たちを襲ってムニンを捕獲しようとするかもしれない――禁字族なら、ヴィシスとの格好の交渉材料にもなるだろうしな」
リィゼは黙って耳を寄せている。
「だが、俺とセラスだけなら二人で第三形態のスレイに乗って逃げられる」
「ムニンは……、――あ、そっか。鴉になってしまえば、乗る人数としては換算しないに等しい」
「その通り」
重量はともかく、三人乗るとさすがにバランスが悪い。
スレイの動きも鈍る。
「けど、アタシがいると……スレイに三人で乗るのは難しい、か」
「乗れないこともないけどな」
「いえ、そもそもアタシは非戦闘員に近いしね。遠くから矢とか攻撃術式をやられたら自分で自分の身を守れない――足手まとい、ってわけ」
「悪いが、そうなる」
「そのくらい、受け入れてるわよ」
「正直、俺にも守り切れる範囲には限界があるんでな」
「それは……仕方ないでしょ。今の話は納得できる。筋は、通ってるから」
「あと……そっちはそっちで、国内のことを今日から色々進めなくちゃならないだろ? 現状はリィゼがいた方がいい、とも考えた」
こぶしを口もとへやる、納得顔のリィゼ。
今後のことを脳内で早速シミュレートしているらしい。
「うん……確かに、そうかも……」
「ただ、いずれは別のヤツに任せられるようにすべきだろうな」
「そう、ね……今後はアタシ以外の者に少しずつ権限を分散させていくわ。今までは、アタシが一人でなんでもやろうとしすぎてたから」
「だな」
「うん」
ひとまずは、こちらの思惑通りにことは進んでいる。
今回は何かと条件が噛み合った。
まず、向こうの本命は禁字族で同盟のことは二の次だったこと。
そして、こちらの国の要人度に向こうが明るくなかったこと。
ゆえにムニンが国の代表としてミラへ赴くとなっても通った。
と、しばし押し黙っていたリィゼが視線を逸らして――
「……ありがと、ね」
気恥ずかしげに、礼を口にした。
リィゼは俺の右隣を馬で行くセラスにも目を向けて、
「セラスも、今回はありがとね? 二人がいてくれて、心強かった」
「実を言いますと……私は、狂美帝の威圧感に少しのまれていました。仮面をしていたので、周りからはそうは思われていなかったかもしれませんが。そういうわけですので、主な助けになっていたのは我が主かと」
今、セラスは蠅騎士のマスクを外している。
ううん、と首を振るリィゼ。
「そんなことない。セラスも含めて、周りにみんながいてくれたら……アタシもどうにか、最後までギリギリ踏みとどまれた感じだった」
ふふ、と優しく微笑むセラス。
「では……どういたしまして、と言っておきましょう」
「え、ええ……そうしてちょうだい」
リィゼも、はにかむ。
俺は前を向いたまま、
「ほんと険が取れたな、宰相殿は」
「う――うるさいわね! 取れたわよ!」
取れてんじゃねぇか。
「ま、そうやって元気にぎゃあぎゃあ畳みかけるのがアンタの真骨頂だ。その個性を強みに変えられる時は存分に発揮してった方がいい。さっきの交渉の場では、色々気にして萎縮しすぎてたからな」
狂美帝が去ったあとは、かなり調子も出てたが。
「う゛~……わかってるわよぉ。助言は……ありがたく頭に入れとく」
「素直にしてりゃ可愛げがあるんだよな、あんたも」
「ん、な……ッ!? なな、何よそれ!? それ、ふ、普段のアタシには可愛げがないってこと!?」
「さっき言ったリィゼロッテ・オニクのよさってのは、そういうとこだ」
「――――ッ! う゛ぅ゛~…………そ、そうなの?」
「ああ。けど、使いどころは考えろ」
「……わかった」
「素直にしてりゃ可愛げが――」
「もう聞いたわよ、それは!」
前をゆくジオとニコが、こちらを振り返る。
「いいようにやられてんな、うちの宰相殿は」
「口でのやり合いでは、あの男には敵わんのだ」
ジオの隣で巨狼に乗っているのは、変身を解いたままのムニン。
彼女がくすりと微笑んだ。
「わたし……あんな嬉しそうな宰相さんを見るの、初めてです」
▽
城に戻るなり、合議となった。
交渉の場にいなかった他の七煌とも情報を共有していく。
同盟の方も想定よりスムーズにいきそうだ。
合議は、つつがなく終わった。
最後に明日以降やることを軽くまとめ、その日は解散。
解散後は部屋に戻り、俺はセラスやニャキと夕食を取った。
そうして夕食を終えたニャキが、ピギ丸やスレイと共に自室へ戻ったあと――
トン、トンッ
ドアが、ノックされた。
セラスが腰を浮かし、
「はい」
「あの、ご報告いたしますっ……い――」
急いた声。
わずかに、狼狽も。
声は告げた。
「異界の勇者が、目を覚ましました」




