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二人の探究者


 リズの目が、キラキラしていた。

 その小さな唇から感嘆の息が漏れる。


「おねえちゃん、綺麗……」


 栗色のふんわりした髪は腰に届くほど長い。

 翡翠めいた瞳の色はそのまま。

 鋭く一筆引いたような細眉はくっきりとしている。

 釣り目がちの目は勝気な印象を与えるものの小生意気な印象は受けない。

 元のどっしりとした性格のせいだろうか?

 佇まいが普段の泰然としたイヴの姿と綺麗にダブる。

 つまり、よく観察すれば確かにイヴ・スピードだとわかる。

 見映えのする外見、と言っていいだろう。

 元々イヴはすらっとした身体つきをしていた。

 均整も取れている。

 顔立ちも、人間として見ればかなり整っていた。

 だからまあ――美人と呼んでいいのだろう。


「うぅむ」


 唸りつつ、イヴが変化した腕に触れた。


「毛のない人間の肌に触ったことはあるが、いざ自分がなってみると奇妙な感じだ。落ち着かぬというか……なるほど、人間が我らより服を着込みたがる感覚もわからぬではないな」


 言いながらイヴは頬にかかる髪に触れた。

 柔らかそうな髪が、綿毛のようにふわりと揺れる。


「髪に触れた時のこの感触は、悪くない。戦闘時には少々邪魔になりそうだがな。しかし……」


 首を背後へ巡らせ、臀部を軽く持ち上げるイヴ。


「尻尾がないのは据わりが悪いな。あるはずの感触がないのは、奇妙なものだ」


 さらにイヴは変化した他の部位を検め始めた。

 スレイがやや距離を取り、イヴの周囲をウロウロしている。

 やがてスレイはイヴに近づき、鼻を寄せてニオイを嗅ぎ始めた。


「キュゥゥ〜……スン、スン……パキュ!? パキュ〜ン♪」

「む? ニオイで我だとわかるのか、スレイよ」

「パキュリ!」


 体臭はそのままか……。

 エリカが、俺の隣に立った。


「成功みたいね」

「らしいな」


 両手を自分の胸に持っていくエリカ。


「ったく、胸の大きさまで変わっちゃって……セラスどころか、エリカといい勝負じゃないのよ」


 俺はエリカの方へ視線を滑らせた。


「あんた、さっき”豹人族のために”とか言ってたが」

「ええ、言ったけど?」

「少数派の豹人族は、いずれ人間に滅ぼされるかもしれない……モンロイでのイヴの扱いを見れば亜人族の置かれている状況はわかる。だからあんたはアレを作って、豹人族を人間の世界で生きていけるようにしたかった。そうだな?」


 捻った腰に手を当て、エリカがイヴを眺める。

 どこか、感傷的に。


「エイディムたち……イヴの親は強き善性の者だった。ただ、彼らは人間に希望を抱きすぎていたわ。妾はそんな彼らが好きだった反面、その善良さを危惧していたの」


 善人は食いものにされる。


 俺が実の親(あいつら)から学んだ人生訓。


「イヴが善良なのは、親の影響か……」

「でしょうね。エイディムたちは何も聞かず、妾に無償で寝泊りする場所と食事を提供してくれたわ。それも、一日や二日でなくね」

「種族の差も関係なく、か」

「ええ」


 それはまあ、恩義も感じるだろう。


「このタイミングであの腕輪を使わせたのは、今朝、俺が近接戦闘の特訓をイヴに申し出たからか?」

「正解。人間の姿で武器を扱うのに慣れておくいい機会だと思ってね。豹人の時とは微妙に感覚のズレも生じるだろうし」

「着替えさせたのもこれを見越してか」

「あれなら人間の姿になった時、自分の身体に起こった変化が見えやすいでしょ? 尻尾が生えたり消えたりしても、あの服なら問題ない」


 で、あの露出度か。

 いや、待てよ?


「リズもか?」

「え?」

「リズにも何か、あの服装である理由が?」


 不機嫌そうな目で睨まれる。


「言ったわよね? エリカの趣味で選んだ服にさせてもらう、って。イヴにしても何割かはエリカの趣味。文句ある?」


 フン、と鼻を鳴らす。


「……言っただろ。当人がよければ、俺はかまわない。ま、当人たちが騙されてる感があれば、止めるけどな」


 エリカは、


「ふーん」


 不服げな目線を俺へ送ってから、リズに尋ねた。


「ねえリズ、その服は嫌い?」


 エリカの問いにあせあせしながら答えるリズ。


「い――いえ、とんでもありませんっ……トーカ様やエリカ様から与えられた服でしたら、どんなものでも着たいですっ……」


 騙されてる感、か。

 ……若干、ないわけでもないが。


「ま、ともあれ――」


 エリカは視線をイヴへ戻すと、首筋の横髪を後ろへ撫でつけた。


「あれなら、イヴ・スピードだとバレずに人間の国へ行くこともできるでしょ」

「――そうだな」


 エリカが、何か引っかかった顔をする。


「……トーカ?」


 その時、


「エリカよ」


 イヴが近づいてきて、エリカに話しかけた。


「何?」

「この変化なのだが、元には戻れるのか? 便利な力だとは思うが、一生このままというのは……」

「笑止。このエリカ・アナオロバエルが、そこを考慮していないと思う?」


 イヴの顔に安堵が灯る。

 エリカが、指先でイヴの首筋をなぞった。


「腕輪を作る時に不可欠だったのは、可逆性よ」


 首を傾げるイヴ。


「カギャクセイ?」


 見慣れた仕草だが、人間状態だとけっこう印象が変わるな……。


「可逆性ってのは、要は元の姿に戻れるってことだ」


 俺が言い添えると、イヴは理解を示した。


「なるほど、そういう意味であったか」


 エリカが「ありがと」と俺に礼を言い、続ける。


「私としては、非可逆な変化じゃ意味がないのよ。だから、その”1”の珠に同じ量の魔素を込めれば元の姿に戻れるように作ってある」


 一つ、気になった。


「効果時間に制限はあるのか?」

「ないわ。改めて必要な量の魔素を込めない限り元の姿には戻らない。……ま、その魔素量を捻り出すのが普通はまず難しいんだけど」


 だが俺のMP量なら楽勝、というわけか。

 イヴがぐるぐる腕を回す。


「特に動きや筋肉量が落ちた感じはない……今までより髪や胸が戦闘の邪魔になるかもしれぬが、この程度ならば問題あるまい」

「ならこれ使う?」


 エリカが、白いリボンをイヴに差し出した。


「結べば、多少マシになるかもよ?」


 初遭遇時のエリカが使用していたリボンだった。

 イヴは「うむ」とそれを受け取った。

 ぎこちない動作で髪をツインテールに結んでいくイヴ。

 一瞬、なぜその髪型なのか疑問に思ったが……。

 そうか、初お目見え時のエリカがその髪型だったからか。

 結び終えると、イヴは両サイドの髪を左右の手でポンポン触った。


「ふむ……新しく巨大な長い耳がついたような感覚だが、悪くはない」


 さながら鑑定士のような渋い顔をするエリカ。


「思った以上に、似合ってるわね……」


 視線をイヴに置いたまま、エリカに聞く。


「元の姿の能力はどのくらい維持できてる?」

「9割以上は維持できてるはずよ。その維持率も苦労したところね。ま、若干能力が落ちるのは許容してちょうだい」


 筋肉の状態を確かめながら、イヴが一つ頷く。


「いや、十分だ。これで我も、逃亡中の豹人という立場を気にせずトーカの役に立てる。礼を言う、エリカ」

「どういたしまして。あ、大量の魔素を必要とする点だけは気をつけてね?」

「トーカが傍にいなければ気軽には使えぬ、か……ところでエリカよ、この”2”の珠はなんなのだ?」

「ああそれ? 副産物みたいなものだけど、試してみる?」


 どこかエリカはもったいぶった態度だった。

 悪戯っぽい目つきをしている。

 まあ……結局、イヴの意向もあって試してみることにしたのだが――


「じゃあ行くぞ、イヴ」


 魔素を送り込むと、再びイヴが発光した。

 ほどなくして、光のグニャグニャが収まっていく。

 と、


「なるほど、こうなるわけか……」


 耳や尻尾、手脚の一部だけが豹人状態に戻っていた。

 どうやら”2”は豹人と人間の割合が変化するらしい。


「う、うぅむ……これはどうなのだ、トーカよ?」


 イヴが複雑そうなテンションで俺に意見を求めてきた。


「今後……”2”の出番はなさそうだな」

「うむ、我も同意見だ……」


 意見が合ったからかイヴはホッとした表情を浮かべた。

 正直、俺にも”2”の使い道は思いつかない。

 しかしエリカは、


「あのさ……キミたちには、単に可愛いと思う感性って備わってないわけ?」


 不服そうに、腕組みしていた。

 そして、


「おねえちゃん、なんだか可愛い……」

「私も、悪くないと思いますが……」


 リズとセラスには好感触らしかった。


「…………」


 子どもを相手にする時に怖がらせないかもという点では、いずれ役に立つのかもしれない。



     ▽



 それから数日間、俺はセラスとイヴから軽く近接戦の手ほどきを受けた。


 セラスからは主に、対剣と対弓矢の立ち回りを。

 イヴからは、その他の武器相手の立ち回りを教わった。

 魔女の棲み家には多様な武器が揃っていた。

 倉庫っぽい部屋があり、そこに雑然と武器などが積んであるのだ。

 ほとんどが魔群帯での拾い物とのことだ。

 イヴのようにイチかバチかで逃げ込む者も多いという。

 で、逃亡者が力尽きて武器や道具類だけが残るわけだ。 

 ゴーレムや使い魔が、定期的に拾ってくるらしい。


「もちろん、拾ってくるのは使えそうなものだけよ? ここだって無限に広いわけじゃないし」


 エリカはそう言うが、この棲み家は思った以上に広い。

 見せてもらった倉庫もかなりの収納力がありそうだった。

 さて、肝心の戦闘訓練の方だが……


「さしものトーカも、この分野ではまだ未熟と言わざるをえんな」


 やはり一朝一夕で身につくものではない。

 乗馬よりも身につけることは多そうだ。

 ただ、教える者の質が高いのは確かである。

 聖騎士団長を務めた姫騎士。

 モンロイ最強の血闘士。

 この二人からほぼつきっきりで戦闘技術を学べるのだ。

 贅沢と言えば贅沢である。

 ちなみに最初、イヴは人間状態での動きに慣れない感じだった。

 しかしそこはさすがイヴ・スピード。

 半日ほどで、その動きはみるみる元の輝きを取り戻していった。

 そして、


「人間の姿で汗を流すのも、そう悪くはないな」


 今は人間状態の方も楽しんでいるようだった。

 またその間、少しずつだが騎乗の方も練習を進めていった。


「っと……こんな感じか、セラス?」

「ええ、お上手ですよ」


 今ではもう、セラスが指導員のごとく同乗せずともよくなっている。


「これで、騎乗方面で私が何かを教える機会は当分なさそうですかね……」


 少し、セラスは名残惜しそうだった。

 俺はスレイのたてがみを撫でながら言った。


「どうかな……スレイ以外の馬に乗る時は、またセラスの手を借りるかもしれない。こいつは手のかからない、できすぎた子だからな」


 苦笑するセラス。


「少し手がかかるくらいの方が、やりがいはあるのかもしれませんね」

「姫騎士殿は、悪ガキの方がお好みか?」

「あまり手がかかりすぎるのは、自信がありませんが」


 なんとなく、だが。

 セラスは悪ガキに弱そうなイメージがある。


「おまえは手のかからない子ども相手の方が得意そうだな」

「いえ、厳しくする時はしっかり厳しく対応しますよ? ネーアにいた頃も、ただ優しいだけの聖騎士団長では通っていませんでしたから。ただ、トーカ殿を厳しく叱る機会などありませんので……」

「まあ……イヴにしてもリズにしても、本気で叱られるようなことはしないしな……」



     ▽



 夕食時は、適度に魔法の皮袋を使ってみた。

 エリカはそのたびに皮袋のカラクリを解こうとしたが、


「異界の勇者のスキルと同じで、別の魔導具やら何やらに似た力を組み込むのはやっぱり無理そうね……」


 ちょっぴり不満げな様子で、眉を曇らせていた。

 その一方で、転送される飲食物にはメロメロだったが。

 特に年代物のウイスキーはお気に召したらしい。

 それは俺も名前くらいは知っている有名なスコッチだった。

 ひと口飲んだエリカは、


「これ、宝物にするわ」


 と、ご満悦な様子で頬ずりしていた。

 あの皮袋も魔女のご機嫌取りにひと役買ってくれているようだ。

 ただ……ご満悦とはいえ、相変わらず笑顔はないが。

 ともあれ俺はウイスキーなど飲めない。

 だから、無駄にならずに済んだのはよかった。 


 他には、空き時間を使って部屋の掃除と片づけをしたりしていた。

 そんな風に、一週間ほどが過ぎた頃――


「キミ、いつもそれ読んでるわよね?」


 エリカが背後から『禁術大全』を覗き込んできた。

 その時、俺は自室で一人日課の読書をしていた。

 セラスは外でイヴと手合せしている。

 日々剣を振っていないとやはり勘が鈍るらしい。

 リズも、スレイと一緒に二人についていった。

 なので俺とエリカ以外でこの部屋にいるのは、傍らでプニプニしているピギ丸だけだ。


「それ、廃棄遺跡で見つけたっていう例の図鑑?」


 俺の肩に両手をかけ、身を乗り出してさらに覗き込んでくるエリカ。


「図鑑と言えば、まあそうか……ああ、暇ができるとパラパラ捲って読んでる」

「昔の廃棄勇者が持ってたのよね? エリカも見ていい? いいわよね?」


 振り向かず、本を閉じてエリカの方に差し出す。


「ほら」

「あら、いいの?」

「今はあんたを信頼してるからな」


 ついでにこの『禁術大全』の”程度”も知りたい。

 大賢者が考案した禁術道具……。

 禁忌の魔女から見て、果たしてどの程度の代物なのか。

 それも、確認してみたい。


「じゃ、遠慮なく読ませてもらうわね?」


 身を引いたエリカを、肩越しに見る。

 彼女は床であぐらをかき、無言で視線を走らせていた。

 長い指を流れるように動かしてページを捲っている。


「――驚いた。これ、もしその死んだ勇者が廃棄遺跡へ持ち込んでいなかったら……この世界の色んなことが変わっていたかもしれないわよ……」


 身体の向きを変えて、俺はエリカに向かいあった。

 彼女の紫紺の瞳はまだ紙面と真剣に格闘している。

 しばらくその様子を眺めていると、彼女が視線を上げた。


「ねぇ、トーカ……これを持ってた廃棄勇者の名前ってわかったりする?」

「大賢者アングリン・バースラッド。またの名を、暗黒の勇者だとさ」

「その名前、知ってるわ……会ったことはないけどね。確か、根源なる邪悪を倒したあと、しばらくこっちの世界に滞在してから、仲間たちと元の世界に戻ったことになってたはずだけど……そう、廃棄遺跡に落とされてたのね……」


 エリカとは無関係だったようだ。


「って、キミ……廃棄遺跡の話をした時、その大賢者の亡骸を見つけた話はしなかったわよね?」


「大賢者があんたと変な因縁のある相手だったりしたら困るからな。あの時は俺も、まだあんたが女神側の人間じゃないという確信を持ち切れてなかった。下手に名前を出した結果、あんたに隙をつかれて『禁術大全』を始末されても困る」


 開いたまま本で、口もとを隠すエリカ。

 指すようなジト目が貼りついていた。


「ほんと、用心深すぎ。……その生き方、疲れない?」

「性分らしい」

「損な性分」

「きっと、得もしてるさ」

「プラスの方が多ければいいけどね――ん? 何、これ?」


 エリカがあの血文字に気づいた。

 文字を読んだ彼女は、すぐ察した顔になった。


「大賢者とその仲間でも、魂喰いには勝てなかったのね……」

「まず、ベストコンディションじゃなかっただろうしな……多分あのクソ女神は、本来の力を出せないようにしてから放り込んだはずだ」


 まだ右も左もわからぬ最底辺勇者の俺ならいざ知らず……。

 根源なる邪悪を倒した勇者となれば、確実に殺せる要素を整えてから廃棄したはずだ。


「あのふざけた女神は、そういうところは抜かりがなさそうだからな」

「……魂喰いを殺したキミを廃棄した時点で、抜かりまくってると思うけどね」


 紫の瞳が俺の傍らのスライムを捉える。


「しかも廃棄遺跡から生還した今のキミは、そんな特別なスライムも連れているわけだし。でも、なるほどね……そのスライムが他のスライムと違うのは、この『禁術大全』の知識を使ったからか……」


 食い入るように魔物強化剤のページに見入るエリカ。


「……多分、繰り返し実験を行えたのは勇者のスキルがあったからね。実験時に解毒的なスキルを用いたから、実験に使った魔物をほとんど犠牲にしなかったんだと思う。ていうか、この端っこの走り書きとか貴重すぎでしょ……」

「禁忌の魔女から見ても、すごいもんなのか?」

「ここ記されてる内容は、妾が踏み込めなかった領域に踏み込んだものが多いのよ……だからこれは、おそらく勇者の固有能力ありきの実験……」


 エリカから見てもそこそこすごい内容だったようだ。

 言い方から推察する限り……。

 当時だとかなりオーバーテクノロジー気味な知識だったのだろう。

 大賢者が”禁術”としたのも頷ける。

 人類にはまだ早すぎる、みたいな心情だったのかもしれない。

 まあ、最も恐れたのは――この知識が女神に渡ることだっただろうが。

 しばらく一人でブツブツ言っていたエリカが、首を伸ばして、ベッドの上を見た。


「ところで、そこに広げてあるのはなんなの?」


 俺もベッドの上へ視線をやった。


「禁術製の道具類を作るための素材だよ。声変石と拡声石は、もう完成してる。他にも少しだけ素材の揃ってるものもあるが……今のところ、最優先したいのはピギ丸の魔物強化剤かな……」

「ふーん」


 エリカが立ち上がって、ベッドの縁に腰をおろした。

 そして脚を組み、前屈み気味に素材を観察し始める。

 俺も立ち上がり、彼女の傍に立った。


「第二実験にあたる魔物の強化剤に必要な素材が、あと一つだけ足りなくてな」

「ねぇ、トーカ」


 エリカが上体を起こして身を寄せてきた。

 彼女は手もとの『禁術大全』を開くと、指で簡易イラストの部分を指差す。


「あと一つ足りない素材って、これ?」

「そうだ。……何か心当たりでも?」


 この感じ……。

 素材を持つ魔物の生息地なんかを、知っているのかもしれない。


「あるわよ?」

「?」

「いや、だから――」


 トントン、と。

 紙面のイラスト部分を、軽快にエリカが指先で叩く。



「この素材だったら、この家にあるってば」





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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱ帰れないよなぁ? 女神が帰ったと言えばどこにいったかなんてわかんねぇだろうしなぁ。
[一言] 楽しく読ませていただいています。 おそらく変換ミスかと。 「でしょうね。エイディムたちは何も聞かず、童に無償で寝泊りする場所と食事を提供してくれたわ。それも、一日や二日でなくね」 ↓ 「…
[一言] イヴは豹人ということで、グインみたいな感じなのかと思ってたらもっとケモノ寄りだったのですね。
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