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長髪の侍
人間はなりより見た目を重視する。そのひとつとして髪型である髷というものが何より印象深い。
ひとえに髷と言っても時代や役職によってこと細かく分けられ、頭髪というものによって身分や階級が分かるほどだ。
だがどうであろう。
先ほどまで一しきり降り注いでいた雨はすっかりと止み、路上に溜まった水溜まりを残し雨が通り過ぎた形跡は跡形もなくなっていた、
水溜りに写るその出で立ちからは侍に酷似しているものの、頭髪が大きくかけ離れている。
獣のように乱れ、無造作に伸びた前髪。かえって一束ねにした後髪は綺麗に仕立てられた女性の髪のように歪みなく真っ直ぐに伸び、水に触れたようにしっとりとした艶を持っている。恐らく後姿に見惚れてその顔を覗き見ようものなら当人は酷く幻滅することは請け合いであろう。