表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

俐亜武の使い道

村長の好意により、俺たちは村長の家に泊まることになった。


俺は今日あったことを頭の中で整理した。

雷の杖やブラッディソードの効果があったことから、こっちの世界でも道具の効果は有効だった。

ただ、効果には違いがあった。

例えば、ゲームではブラッディソードやポーションは単なるHP回復効果である。

ゲームではHPMPはただの数字だが、実際は戦えば疲れるし、傷を負えば痛みも感じる。

つまりこちらの世界では、HPという数字で表せない何かに作用している。

楓がマジックポーションを飲んでも魔法が使えなかったのもゲームとは違っていた。

MPという数字でない何かしらの力がいるのだろう。

楓の魔法や雷の杖においても次いつ使えるようになるのかわからなかった。

魔法の効果にもゲームとの違いがあった。

魔法攻撃はゲームでは敵にのみ有効だ。

ライトニングの威力は強力であったが、仲間にもダメージを与えた。

使いどころには気を付けなければならない。

このままクエストを続けるのは危険だろう。

クエストの期限は明日だ。

俐亜武が使い物にならないと分かったいま諦めるしかなかった。


村長にクエストは諦めることを告げると落胆した様子であった。

オークはこの村の近くの森の洞窟に住み着いていて、時々、村に近寄るものを襲うという。

オークは男を楽しみながら殺し、女は生け捕りにして奴隷にするか玩具にするのだ。

村の交流は少なくなって、このままでは村はますます貧しくなっていく。

気の毒とは思ったが命には替えられない。


朝、起きると俐亜武がいなかった。

村人は俐亜武が一人で出ていくのを見たという。

楓は一人でオークを倒しにいったのではないかと心配した。

俺はあんなやつが危険を冒して人助けするとは思えなかった。

楓がどうしても様子を見に行きたいとせがむ。

楓は戦うことはせず、止めに行くのだという。

俺は危険だと渋ったが、楓は一人でも止めに行きかねない。


「ボクを連れてけ」

「メルルの耳は人間よりいいからな。役に立つのだ」

会話を聞いてたメルルが言った。


オークは森の奥の険しい所にいるため、甲冑を付けたまま行くのは難しいと村長は言う。

俺は甲冑を置いて動きやすい服を村人から借りた。

楓は置いていきたかったが、どうしても行くというので3人でオークのいる洞窟へと向かった。


メルルは森に慣れているようで、村人が教えてくれた洞窟へと迷わずに案内してくれた。

メルルは偵察にも優れていた。気配を消して洞窟へと忍び寄った。


「ぐへへへ」


オークが女を玩具にしていた。

女は抵抗する力は残ってないようで時折、呻き声を発していた。

洞窟には人間の四肢が散らばっていた。

オークが玩具に飽きると甚振って殺しているのだ。

メルルが洞窟の中の様子を伝えた。


「酷い」

楓が呟いた。


楓は俺の方を見る。楓の言いたいことは分かった。

中の女を助けたいのだ。

ブラッディソードの力があれば勝てるかもしれない。

俺は楓たちが危険が少ないように作戦を立てた。


「俺が引き付けるから、楓たちは隠れているんだ」

「隙を見て背後からファイヤーボールを打て」


ファイヤーボールが出なかったとしても隠れていればいい。俺はそう考えた。


2体同時に相手にするのは無理だ。

俺は機会をうかがった。


一体のオークが洞窟の外へ出てきた。

もう一体は女で遊ぶのに夢中になっている。


今しかない。

俺は楓がオークの背後になるように飛び出した。

俺がオークと向かいあうと、楓は姿を表わし、背後から魔法を放った。


「ファイヤーボール」


楓の放ったファイヤーボールは見事にオークの背中に命中した。

しかし、仲間の悲鳴を聞いたオークは洞窟の外へ飛び出してくると楓を見つけ襲い掛かった。

しまった。俺は最初のオークを素通りすると、楓に向かったオークに走り寄る。


「ファイヤーボール」


楓に向かっていったオークにファイヤーボールがヒットする。

俺はすかさず楓を襲ったオークに剣を突き刺す。

剣を横に振るとブラッディソードの力によりオークを切り裂いた。


「あぶない」


楓が叫んだが、遅かった。

先にファイヤーボールをくらったオークが背後から襲ってきたのだ。

オークは後ろから剣を突き刺すと剣先が俺の体を突き抜けた。

俺はその場に倒れこむ。

オークは弄ぶかのように剣をぐりぐり捻り、俺が悲鳴をあげるのを楽しんでいた。

俺が虫の息なのを知ると、オークは泣き叫ぶ楓を肩に抱えて洞窟へと足を運んだ。


オークが洞窟へと姿を消すと誰かが俺に近寄ってきた。

現れたのは俐亜武だった。

身を隠して様子を見ていたのだ。


「たす・・・て」

俺は声にならないか細い声で助けを求めた。


俐亜武は俺をまるで死体でも見るかのような冷めた目をしていた。

(この剣さえあれば、俺だって・・・)

俐亜武は俺のブラッディソードを手にすると、洞窟へと向かっていった。


身を隠していたメルルが出てきた。


「待ってろだ」


メルルは俺から剣を引き抜くと、ポーションを取り出し、俺に飲ませる。

体の傷が塞がっていく。

血液が大量に流れ出たせいか、頭がふらふらする。

何とか立てたがオークと戦う力はない。

それでも俺は楓を助けたい一心で洞窟へ向かった。


洞窟ではオークが楓を肩に抱えて歩いていた。


「うおおおおお」


俐亜武が後ろから切りかかる。

オークは少し驚いた様子を見せたが、肩から楓を落とし、洞窟の中に無数に転がる武器の内、近くにあった剣を拾い上げた。

俐亜武の剣が容易くはじかれる。

オークは俐亜武を子供でも相手にするかのようにいなしていたが、俐亜武が隙を見せると剣を突き刺した。

俐亜武が倒れ、楓は悲鳴をあげた。


「ぐひっ、ぐひっ」

オークは豚の鳴き声のような声で笑った。


俺が、洞窟入るとそこには倒れて呻いている俐亜武がいた。

オークは楓の服を毟るのに夢中になっている。

楓は必死に抵抗しているが、オークはそれを楽しんでいた。


俺はふらふらしながらもオークに気付かれないに俐亜武に近づいていった。


「悪いな。俐亜武」

そう言って、俺は俐亜武の横に転がる剣を手に取ると、俐亜武の足に突き刺した。


「いでぇー」

俐亜武は叫んだ。


思った通りだ。力がみなぎってくる。


俐亜武の叫び声でこちらに気付いたオークは剣を手に取り、向かってきた。

オークが剣を突き出してくると、俺は横に躱すと身を捻りながら剣をオークの首目掛けて振り抜いた。

オークの首と胴体は一刀の元に分断された。

俺は思った。こんな奴にも使い道があったと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ