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俺がゲームを始めたのが10時だ。

日はまだ高い。

日を跨いでないとすると、そんなに遠くへ来ていないはずだ。

しかし、どうやってここまで来たのか?

周囲に人工物らしいものは見えない。

目を皿にして見渡していると、遠くから馬車がやってくる。

馬車の進む方法へ向かって走り出す。

これを逃したら、また狼に襲われるかもしれない。

草の陰になって見えなかったが、道がある。

馬車もこの道に沿って、走っている。

道端まで、走って行き、馬車が来るのを待って、手を振り声をかけた。


「おーい」


「お願いです。助けてください」


幸いにも馬車に乗ったおじさんは優しかった。

これから町へ向かうということだ。

町まで乗せてくれるという。

馬車なんて初めてだったが、助かったという安堵感からか不思議だとは思わなかった。


俺は荷台に乗せて貰った。

しかし、この甲冑どうしようか?

おじさんは俺がこんな恰好しているのを気にする様子はなかったが、さすがに町をこの恰好でうろつくのはまずいのではないか。

捨てていきたいが、何だか高そうに思える。

しっかりした作りだし、剣だって本物だった。

どうやって手に入れたかわからないが、盗んでいたとしたら、弁償できるものではないだろう。

すぐに親に連絡し、迎えに来てもらおう。


2時間ほど経っただろうか。

町に着いた。

「ありがとうございました」

お礼を言った。


「あのー。ここなんていう町ですか?」


「ヘルテコさ」


ヘルテコ?知らない町だ。


「携帯電話持ってないですか?」


「・・・あ、うん。持ってないよ」


どうせ無一文だ。

親に縋るしかない。

なんとか連絡とらないと。


おじさんと別れてしばらく歩いた。

なに?これ・・・。

町の人の姿が、まるでゲームの中みたいだ。

テーマパーク?コスプレイベント会場?


「あのー」

俺が驚いていると、きれいな女の人が声をかけてきた。

魔法使いの恰好をしている。


「ひょっとして、『ワールド オブ フェアリーテール』のプレイヤーさんじゃないですか?」


「あ、はい・・・」


「よかったー。わたしだけじゃなくて」

目に涙を浮かべて、今にも泣きだしそうな顔をしている。


話を聞くと、彼女は今から1時間くらい前にゲームのゲートを潜り、この町へ転送されたという。

彼女も初めは何が起こったのか理解できなかったが、いろんな人に話を聞くうちに、異世界へ来たと理解したらしい。

俺の顔がこちらの世界の人と少し違っているように見えたので声をかけたそうだ。


「信じられないのも無理ありません」

「でも、本当なんです」

にわかには信じがたいが、彼女が嘘をついているようには見えなかった。


しかし、この町へ転送されたって。

俺の苦労はなんだったんだ。


日が暮れ始めている。

どこか泊まるところを探さなければならない。

彼女は既に泊まるところを確保していた。

所持していた銀貨が使えたという。


馬車に乗ったのきに気付いたが、布袋を腰につけていた。

開いてみると、中にいろいろなアイテムと巾着があった。

巾着を開くと、金貨が入っていた。

さっきまではただの小道具だと思っていたが、もしかしたら、使えるかもしれない。


彼女はもう少し、だれか来ないか探してみるという。

明日の朝、また会うことを約束し、教えてもらった宿へと向かった。


「これ、使えますか?」

宿の主人に金貨1枚を差し出し、相手の様子をうかがった。


「1泊、銀貨3枚だよ」

俺が頷くと、主人は鍵と釣りの銀貨をカウンターに置いた。


「部屋は二階だ」


金貨が使えることがわかったし、食事でもするか。

宿の一階は酒場になっている。

俺は酒場のテーブルに座った。


酔っぱらったおやじが近づいてきた。


「なあ、いいこと教えてやろうか?」


「あ・・。はい」


「金貨1枚でどうだ?」

何だ?このおっさん。怪訝な顔をしていると、続けて言った。


「さっき払った宿賃は相場の3倍だ」

えっ?俺は動揺した。


「お前、その恰好、ずいぶんと高価なもの身に着けてるじゃないか」

「それに金貨なんか出すから、ぼられたんだよ」

「今さら、文句言っても、仕方がないぜ」

「相場はあくまでも目安だ。お互い納得して取引したならしょうがない」

「おまえ、どこかのぼんぼんか?いや、詮索するつもりはない」

「でも、世間知らずじゃ、いろいろと困るだろう?」

「俺がいろいろアドバイスしてやろうっていうんだ」

「金貨1枚は安いもんだろ?」


確かにこのままでは、不安だ。

「金貨1枚は、ぼり過ぎでは?」


「はは、学んだじゃねぇか。気に入ったよ」

「ここの支払いで手を打ってやる」


ずいぶんと安くなったものだ。

このおやじの飲み代くらいたかが知れている。

こんなおやじが、大した情報を持っているとは思わないが、俺は圧倒的に情報が足りない。

世間常識くらいのことでも、聞く価値がある。


いくつか重要な情報を得ることができた。

この世界には、人間以外にもエルフやドワーフなどの種族が存在している。

金貨は高価なので、高額な取引以外は使うことがない。

宿に貴重品を置いておくと盗難にあう。

預り所に金と荷物を預けることができる。ただし、有料。

クエストを受けて報酬を得ることができる。

狩る獲物によっては、部位を売れば金になる。金はドロップしない。

魔法は存在するが、一般の人は使えない。

高価な武器には追加効果が付いているものがある。


なるほど、ゲームと共通している部分もあるということか。

俺のもっているブラッディソードは相手に負わせたダメージに応じてHPの回復効果がある。

この世界でも有効かどうか確かめる必要があるな。


この前の狼の件で、1人で討伐は無理だと判断した。

パーティーを組んでクエストを受けよう。

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