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ワンズロット・フェンリル  作者: 巴詩康杜
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想いでの場所4

 コートの女性は突き刺さった剣へ視線を移す。

「どうやら、持ち去られずには済んだみたいですね」

 そう言うと今度はレイドの方へ視線を戻した。

「アヴァロンの人間が来ることは予想していたが、まさかエレメントが来るとはな」

 レイドはサングラスを掛けたまま目元を不気味に光らせる。

 そして姿勢を低くすると一直線にコートの女性目掛け飛び出した。

 瞬く間に女性の懐まで潜り込むと、右の拳を女性の腹部目掛け繰り出す

 スパーンと小気味良い音が当たりへ響き渡る。女性が左の手の平でレイドの拳を受け止めた。


「サングラスを掛けたまま目元を輝かせるのやめて頂ける。同僚に見せられたロボットアニメを思い出すから」

 そう言いながら女性は体を回転させると、レイドの顔面目掛け廻し蹴りを放った。蹴りは見事に顔面に命中し、サングラスを粉々に粉砕した。

 が、しかし、レイド本人はピクリとも動かない。

 コートの女性はすかさず、レイドとの距離をとる。


「ふーうっ。コレで見た目はガ○ダムじゃなくなりましたね。しかし、肉体強度はガン○ム並のようです。顔面にまともの食らわせた筈なのにビクともしない」

 コートの女性は構え直すと、再びレイドに突進しようとした時だ。

「女ーーー動くんじゃねぇ。動いたらこいつら殺すぞ」

 声のした方向へ視線を向けると先ほどまで岩壁に激突し、のびていたトウマの姿が見える。その手には銃が握られており、それを、巫女の頭部に突きつけている。

 巫女は震えているが響だけでも守ろうとしてか、きつく抱きしめているのがわかる。


「先ほどからのあの男の行動、本当に卑怯ですね。私の大嫌いな分類の人間です」

 コートの女性はそう言って、構えを解いた

「レイド、今だ。さっさとその女を殺しちまぇ」

「死ぬのはあたなの方です」

 トウマの後ろから新に女性が現れた、そして・・・・

「ぎゃあああー」

 細身の剣で銃を持っていたトウマの手の甲をグリップごと貫き、頭上へと切り上げた。

 トウマの手は切り裂け、銃は剣に刺さったままだ。

 

 トウマは切り裂かれた手を押さえ、女性から距離を取る。

 女性は剣を一振りし、突き刺さったままの銃を剣から外すと巫女の女性へ話しかけ、優しく微笑みかける

「大丈夫ですか、静さん」

「ああっ、ミルカさん。良かった、来てくれた」

 静と呼ばれた巫女の女性は、見知った人間の登場により今まで堪えていた物が涙となって溢れ出した。


 ミルカは優しい微笑みから一転、トウマへ鋭い視線を向ける。

「なぜ、ここに響ちゃんがいたのかは今はいい。ただ、これをやったのがあなただとするならば、この子に与えた痛みの数倍の苦痛をあなたに与えることになる」

「ひいっ、なっ、なんなんだよ、てめぇ」

 ミルカの迫力に押され、トウマは震え上がる。レイドに助けを求めようとしたが、レイドの前にも新たな人物がいることに気付いた。


「アヴァロンのお姉さん、悪いんだけど、こいつとの喧嘩譲ってもらってもいいかな」

 レイドとコートの女性の間に割って入った人物はそう話す。

 アヴァロンとは対を成す組織、ヴァルハラの紋章が入った赤いコートを着込む金髪ピアスの少年、柊弥だ。

 その肩には抜き身の剣を担いでいる。


「ヴァルハラの人間が言う事に従うとでも・・・・といいたいところですが、今回は譲ってあげますよ」

 そう言って一歩離れた場所へと移動するコートの女性。

 やけにあっさりとした対応だな、おい。と、呆れる柊弥だったが本題へと移る

「おい、ハゲ野郎。この一件に関しては俺たちに任されている筈だ。誰からの指示だ」

「貴様に答える義務はない」

「そうかよ、じゃあ、意地でも吐かせてやるよ」

 剣を構えると同時に、目が青く輝きだす。柊弥はエレメントとしての力を解放した。

 そして、エレメントの力を持ったもの同士の戦いが始まる。


 最初に仕掛けたのは柊弥だ。レイドに向かって突進し、右上段から剣を振り下ろす。

 レイドはその一撃を体裁きでかわす。

 2撃、3撃と次々に柊弥の剣撃が繰り出されるもその全ての攻撃をかわし、柊弥の攻撃が大降りになったその一瞬をついて、間合いに踏み込みゴウッという音と共に鋭いストレートを柊弥へ叩き込む。

「なっ・・・・」

 柊弥はその一撃を剣の腹に左腕を当てて防いだが、数センチ程後ずさった。

 一旦、相手から距離を取る為、後方へ跳躍。柊弥は拳を受け止めた左腕を軽く振る。剣を通しての衝撃は相当な物で、左腕が痺れている。

「野郎、なんつー力だ。普通の剣なら粉々だぞ。」

 柊弥は再び剣を構え、相手に向かって駆け出した・・・・


 一方で激しい戦闘が行われている中、ミルカは一歩、一歩、確実に相手を追い詰めていた。

 深手を負ったトウマは、何とかこの場から逃げようとするがミルカの斬撃がそれを阻止する。それどころか斬撃に誘導されるが如く、先ほど激突した岩壁の方まで追いやられた。

「もう逃げ場はないわ」

「なんなんだよ、お前ら。ヴァルハラの人間だろう?俺達も同じ仲間じゃねーか」

 既にトウマは戦意を喪失し、エレメントとしての力も今は発揮されていない。

 自分達は同じ組織の仲間だと言い助けを求めるが、それでもミルカの目は虎視眈々と獲物を狙う猛獣のような鋭い眼光を崩そうとはしない。


「調子のいい事をズケズケと。あなたみたいなのがヴァルハラに所属している?笑わせないで。大方、ヴァルハラの誰かに雇われたのでしょ」

「そう、そうだよ、雇われたんだ。俺達は・・・・・・」

「ミルカ、あぶねぇ――――――」

 柊弥の叫びと共にミルカが振り向くと、その脇を凄まじい轟音と共に何かが通り抜けた。

 ドスッ、グシャーー

 不快な音が聞こえる・・・・ミルカが振り返ると、そこにはレイドの手刀により腹部を貫かれたトウマの姿があった。口からは大量の血を吐いている。


「余計な事はするなと、あれほど言っただろう」

グチャリという嫌な音を立てながら、レイドは腕を引き抜いた。

 支えを失ったトウマはその場に倒れこんだ。

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