想いでの場所3
巫女の女性は響が大きな岩の上に置かれた事を確認すると、黒服の男二人を案内する為、再び歩き出した。
巫女が進む先には滝があり、よく見ると人が一人程通れそうな道が滝の裏側へ続いている。
三人が一列になり、滝の裏側まで来るとそこには小さな洞穴があり、奥のほうまで空間が続いていることが分かる。
少し進むと、祭壇があり中央には祠のような物と、重厚な剣掛の上に置かれた鞘に収まった状態の一振りの剣が見える。
「おーうっ、こいつが天羽々斬か、なんかパッとしねぇ剣だな」
そういってトウマは祭壇を上り天羽々斬に手を掛けた。
鞘から剣を抜くと、片刃直刀の剣が姿を現した。
白銀が美しく、見る者を魅了するような刃だがトウマはある事に気付く。
「おい、この剣、一箇所刃が欠けてるじゃねーか。ったく、こんな物本当に必要なのか?」
「つっ、これでいいでしょ。撃たれたあの子は開放して貰っても」
巫女はトウマに向かって叫ぶ、その目は怒りに満ちていてる。
「いいぜ、約束どおり開放してやる、さっさとあの野郎の所へ行ってやれよ。もしかしたらも、もう
死んでるかもしれねーけどな」
巫女が見せる怒りの表情を、何が可笑しいのか愉快そうに笑いトウマは言い放つ。
その言葉を聞くや否、巫女は響の元へと駆け出した。
巫女が響の元へたどり着くや、胸に耳を当て心音を確認する。
「良かった。生きてる」
巫女は響の腕を首に回し抱え上げ歩き出そうとした時だ。
洞穴から出てきたトウマとレイドが巫女の目の前までやってきた。
「どいて、あなた達の目的は達したはずでしょ」
先ほどと同じく、怒りを露にした目線を巫女はトウマに向ける。すると・・・・
「えっ・・・・」
トウマは巫女の目の前で鞘から天羽々斬を抜き放った。
「ここまでやっておいて流石にこのまま返す訳にはいかねーよな。丁度こいつの切れ味も見てみてーし。悪りぃーんだけどここで死んでくれや」
そう言い放ち、振り上げた剣を巫女に向け振り下ろそうとした瞬間
ドン、ドン、ドン
三発の銃弾がトウマへ向かって放たれ、そのうち二発の銃弾が天羽々斬を持っていた右腕に命中した。
撃たれた腕から天羽々斬か落ち、地面に突き刺さる。
「おいおい、誰だよてめぇは。痛ぇーじゃねぇか」
悲鳴を上げる事もなく、トウマは発砲したと思われる人物の方を振り向く。そこには白いロングコートを着込んだ一人の金髪の女性の姿があった。
「そのエンブレム、アヴァロンか」
今まで無言で事の成り行きを見守っていた、レイドが口を開く。
「この状況、見た感じではあなた方に非がありそうですね。手を後ろに組んで地面に伏せなさい」
碧眼で鋭く二人組の男を睨みつけ、銃をトウマに向けたまま女性は響達の方へ近づいてゆく。
「もう少しスマートに進める予定だったのだがな。トウマ、私があの女の相手をする。そのうちにお前はそこの二人を始末しろ。この状況では目撃者は全て始末したほうが懸命だ」
そう語りかけレイドがトウマの方を振り向くと、トウマの瞳が青く光り、先ほど撃たれた腕からの出血は既に止まっていた。
「冗談だろレイド。あの女は俺が殺す。八つ裂きにして殺してやるよ」
そう言った後、トウマは凄まじい勢いで金髪女性へと襲い掛かった。
トウマは懐から軍用ナイフを取り出し女性へと突進する。
瞬く間に女性との距離をつめ、今まさに切り掛かろうとしたその時だ。
トウマの腹部に激しい衝撃が走り、レイドがいる方向へ吹き飛んだ。
「ぐおっ・・・・」
レイドは飛んできたトウマを片腕で受けとめるも、あまりの衝撃に受け止めきれず状態をそらしトウマを後方へ受け流す。そのままトウマは岩壁に激突しようやく停止した。
「失礼、元々青い瞳のせいか気付きませんでしたか?私もエレメントなんですよ」
女性はそう言いながら、先ほどより青さを増した瞳を輝かせながら微笑んで見せた。