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ワンズロット・フェンリル  作者: 巴詩康杜
6/8

想いでの場所2

「いやー、しんどい。この石段」

 石段を上りきり、境内の方へと進む。

 目的の滝がある場所は、この神社がある裏側から行くと近道になる。

 鳥居の近くまで行くと、なにやらスーツ姿の二人組みがこちらに背を向けて立っているのが見えた。

 反対側には巫女装束の女性がいる。


(なんだか穏やかな感じじゃねーぞ)

 関わりあうと何だか面倒な事に巻き込まれそうだ。

 鳥居の外側を歩いて、彼らの邪魔にならないように神社の裏手に向かおうとした時だった。

「おい、そこのガキ」

 二人いる男のうちどちらかが、響に声を掛ける。

 やばい、これは面倒事に巻き込まれる。

 響がそう思った次の瞬間

「ぐあっ」

 ホスト風の男が、響きの首を左腕で締めあげ、片腕で持ち上げた。

(なんだこいつ、さっきまであそこにいたのに、いつの間に。クソ、息が出来ねえ)


「なっ、その子を話しなさい」

 咄嗟の出来事に巫女は驚愕し、ホスト男に叫ぶ。

「ああっ、てめぇ、自分はこっちの要求に答えねーくせに、俺に命令するのか?へっ、まぁ、いい。下ろしてやるよ」

 そう言ってホスト男は響きを石畳へ放り投げた。

「がぁっ―――――」

 石畳に投げられた響は不幸中の幸いにして、頭をぶつける事は回避した。

「はぁーー、はぁーーー」

 空っぽだった肺に酸素を目一杯取り入れる。


 呼吸が整うにつれ冷静になったが、瞬間的に響の頭に血が上った。

投げ付けられた体の痛みも忘れ立ち上がり、投げつけた相手の方を向く。

「てめぇ、なにしやがっ―――――えっ??」

 ドンッっという音が周囲に木霊する。

その後、響の左肩に物凄い衝撃が走る・・・・

「ああっ―――――――――――――――」

「きゃあああ―――――なんて事を」

 巫女の女性が響に駆け寄ろうとした時、足元に二発の銃弾が打ち込まれ、火花を散らす。


「下ろせとは言われたけど、撃つなとは言われてねぇよな、ハハッ。つーか、お前動くなよ」

「やりすぎだ、トウマ。派手な事はするなと言っている」

 サングラスの男、レイドと呼ばれた男がホスト風の男を咎める。

「てめぇ甘めぇーんだよ、レイド。こんな仕事にいつまで時間を掛けるつもりだ」

 トウマは低い声で問いかける。レイドの答え次第では味方であっても牙を向きそうな声色だ。

「女。てめぇがさっさとつるぎを渡さねーと、こいつ殺すぞ」

 そう言ってトウマは響の元まで歩みより、制服の襟首を掴んで自分の肩の高さまで持ち上げた。

 そして。

 ドォンーン―――――――――――――――

 今度は響の右肩を銃で打ち抜いた。

「ああああっっっっ―――――――――――――――」

 激痛が響の右肩を襲う。

「剣を渡すまで開放しねぇ、早く渡せ」

 巫女の願いは届かず、響は持ち上げたれたままだ。

 その両肩からは鮮血が滴り落ちる。


「やめて、剣はわたすから」

 巫女は響の様子を見て危険な状態と判断する。

 それもその筈だ、二箇所も銃で撃ち抜かれたのだ。

 出血が多い為か、響の息遣いが段々と荒いものへと変わっていく

「ここにはないわ、剣の場所まで案内する。だからその子を開放して。手当てしないと死んでしまうわ」

「剣が先だ」

 会話は平行線のままだ。

 このままでは本当に響が死んでしまう。

 巫女は剣を渡さない限り、響が開放されることはないと判断した。

「付いてきて、剣がある場所へ案内します」

 そう言うと巫女は、踵を返し歩き出した。

 トウマは、最初っからそうすりゃいいんだよと呟く。そして、その場に響を落した。


「おいガキ、歩け」

「ううっ・・・・」

 響は激痛の為、呻き声を上げるのでやっとだ。最早、自力で歩く事も、ままならない。

「歩けって言ってんだよ、ガキ」

 そう言ってトウマが、寝転んでいる響の脇腹に蹴りを入れようとした瞬間、トウマの顔面に裏拳が迫った。

 すかさずトウマは銃を持った右腕で、その裏拳を防いだ。


「おいレイド、こいつは何のマネだ」

「いい加減にしろ貴様。これ以上騒ぎを大きくするなら・・・・」

 レイドと呼ばれた男はサングラスを外す。その瞳はトウマ同様、青く輝いている。

 しばし、無言の睨み合いが続く・・・・・・

「ちっ、分かったよ」

 先に折れたのはトウマの方だった。

「おい女、さっさと案内しろ」

 二人のやり取りに介入する事も出来ず巫女は、その場に立ち尽くしていたが、トウマに声を掛けられた途端、ハッと我に返り再び歩き始めた。

 レイドは再びサングラスを掛けると、地面に転がっている響を左肩へと担ぎ、二人の後を追った・・・・

 

 神社裏手の道を進むこと数分、滝のある広い場所へと辿りついた。

(ううっ、何だここ。滝か・・・・)

 担ぎ運ばれているという認識も出来ず、朦朧とする意識の中、響は意図しない形で、思い出の場所へとやってきた。

 レイドは担いで来た響きを近場の岩の上に仰向けで降ろす。

(ははっ、こんな形でこの場所に来る事になるなんてな。しかもフェンと初めて会った岩の上・・・・はぁ、最近いいことないな。俺、このまま死ぬのかな)

 僅かな思考で最近の出来事を思い返す。

 そして響の意識は深い闇の中へと吸い込まれていった・・・・


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