幼児愛と両性愛
「あら」
艶のある声で誘惑してくる存在がいた。
「幹部様方じゃないの」
「あーもー……まじで?」
雨宮が顔に手を当てる。ついでに顔に張り付いた笑顔も消えた。
「君だけは絶対会いたくなかったよ……幼児愛」
僕達のちょうど前にピンク色のフリフリドレスに同じ色の日傘をさした長い金髪をポニーテールにしている碧眼の20代後半ぐらいの外見の女性が立っていた。後、声が妙に裏声な感じがする。
「あら、酷い、俺だって貴方に会いたくなかったのに」
「そんな事よりそこを退いてくれるかな? こっちは急いでいるんだよね」
笑顔を無くした雨宮に対し女は笑顔を絶やさない。
「それはいけませんわ、俺達の許可もなくここを通れる訳ないのに何を言っているのかしら?」
そう言いながら日傘をくるくると回す女に向って今度はアレスが言葉を発した。
「黙って死ね」
ストレートすぎる。
「まあ、酷い人達」
その言葉の後、女の背中から何かが出てきた。
「遊んでもらいなさい「我が子供達」」
背中から出てきたのは、子ども、子ども、子ども……どうあがいても子ども、しかもなんかどす黒いオーラが出ていて不気味だ。
「マ……マ……ママ……」
「マ……マ……ママ」
「ママ……ママ……」
よし
「SUN値チェックの時間だ!」
「もう遅いです!」
「くたばれ!!」
グシャっと音がした。ついでにグレンの声がした。どうやら子どもを殴り飛ばしていたようだ。
「あら、見た事ある看守の服の色だと思ったら恐怖使い様の看守じゃない」
女はグレンに対してそう言った。
「あ? 誰が犬だって?」
「決まっているでしょ、ア・ナ・タよ貴方」
殺気立ちながら挑発する女
「殺すぞおっさん」
殺気立つグレン
「誰がおっさんだぁ?」
二人の殺気がぶつかる……ってか、あいつ性別「女」じゃないの?! 本当の性別「男」なの?!
「よし」
そんな中、雨宮が不意に僕の襟元を鷲掴み、そしてそのまま
「そーれ受け取ってー」
アレスに向って投げた。
「仕方がない」
と言ってアレスは僕を受け止める。そして
「後、よろしくねー☆」
グレンを置いて全力ダッシュしだした。一気にグレンがいる場所が遠ざかるぐらい早い早い。
「雨宮さん! グレンさんは?!」
「グレン君なら大丈夫大丈夫! 一応看守ごっこしてんだから、仕組みも大体知っているでしょ」
「そういうことじゃなく?!」
先頭を走るアレスが急に止まった。勢い良く急に止まったので僕は地面に転げ落ちた。
「痛い」
「雨宮」
「アレス君? どうかし」
目の前には青いタキシードを着た、さっきの女と同様に長い金髪碧眼の男……いや、正しく言うならば
「お久しぶりですね、幹部殿」
男装をした女性が立っていた。
「両性愛……」
「こんな所で何をしているんだ?」
男口調だが女声である。よかった女だ。
「君に言うほどでは無いよ」
「そうか、ちょうどよかった。一緒にお茶でもどうだ?」
「「断る」」
即答した。
「折角私がお誘いしたのに……断る人は貴方方だけだ」
紳士な口調で話す姿は何というか……って、今オレって言ったよ俺って!
「まあ」
女性はアレスを見た。
「囚人嫌いの復讐使いの貴方が囚人を抱えて幼児愛から逃げるとか、面白い! 実に面白い!」
そういって、口に手を当て笑い出した。その言葉にアレスは
「おい」
「何だ? 幹部殿」
「貴様、今俺の事を「面白い」といったな?」
雨宮と出会った際以上の殺気を纏ったアレスは女性に聞く。
「ええ言いましたよ」
「死ね!」
色々と早い
「それはこちらの台詞ですよ! 遊んでもらえ「我が恋人達」」
あの女と同様に背中からどす黒いオーラを放つ大人の男女がアレスに向って襲い掛かる。そして二人の戦闘が始った。
「よし、囚人君、僕達は先に行こう」
「え?」
雨宮に手を引っ張られたので僕達はその場を後にした。




