最終階層 地獄の底
「ここは……」
草原に独り立つ僕は周囲を見渡す。今まで見たことの無い美しい草原には、不自然な大きさ……人1人入っていそうな大きさの氷が無数存在している。
「なんだよこれ」
近くにあった氷に触れる。すると
『よく来たな』
どこかで聴いた覚えのある声が聞こえた。
「誰だ?」
『前を見ろ』
スルーされた。
「は?」
声の通りに前を見ると、岩が削り取られた窓のような場所か見えた。そしてその先には……
「なんだあれ……」
昔誰かに聞かされた御伽噺を思い出した。
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『この世界の果てには、宇宙……まあ、宇宙と呼ばれる誰も見たことがない黒い空間が存在する。その空間には、見事なほどに美しい球体が3つあり、その前に同じく3つの金色に輝く玉座がある。そこには――――――』
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「神様が座っている……」
目の前にちょうど3つの玉座、1番左の1つ目は空席で、真ん中の2つ目は玉座ほどの大きさの少年が座って眠っている。そして最後の1番右の3つ目は……
「破壊を司る神」
黒くて長い髪を逆立て、同じく黒い神秘を纏った衣を身に付けている神様が僕を見ていた。
『そう……お前の生まれた世界の神、破壊神リギアである』
声を聞いたとたん足の力が一気に抜け膝から崩れ落ちる。
「まじで? はは……」
本物の神様が存在するとか意味がわからないよ
『貴様が今いる空間は、最終階層 地獄の底』
おわりのせかい……か……
「あんたは、僕に何をする気だ?」
『……』
なにも答えない? いや、僕に向けて手を伸ばしている?
『今は眠れ』
近づいてくる手は次第に僕と変わらない大きさに変わっている。
『白の箱舟』
その手が僕の頭に触れた瞬間
『愛おしき我が破壊の世界の眷属よ』
意識が途切れた。




