第11階層 最高権力者の自室
真っ黒い世界を下へ下へ落ちて行く。雨宮に突き落とされてどれくらいの時間がたってのだろうか。僕はそんな事を考えながら下
に……
「え?」
足が床に着いている。
「なんで? さっきまで確かに落ちていたはずなのに……」
床に目を向けていると
「本当に貴方は何もかも忘れたようですね」
不意に聞き覚えのある声が空間に響いた。
「ようこそ……第11階層 最高権力者の自室へ……」
顔を上げる。目の前は真っ黒い空間が広がっている。だけど、そいつは違う。真っ白い看守の服を身につけ僕のアルビノと真逆のメラニズムの外見に、雨宮の青とは違う青い瞳の青年は空間の真ん中で立っていた。……ん? 弟? 今弟って言った? え?
「久しぶりですね……兄さん」
「え、あ、はい」
『地獄の創設者』
弟の二つ名……地獄を作った始まりの存在……何で僕こいつの二つ名知ってるんだ? いや、なんかもうおかしいな
「……」
言葉がでない……正確には何を発言したら良いのだろうか? 分からないまま僕は黙り込んでいた。
「何か言わないの?」
「何を言えば?」
「本当に兄さんは昔から凡骨ですね」
「いやー」
「誉めてないから」
こいつ、ツンデレか
「ツンデレじゃねーよ」
お前も心読めるのか……
「言いたいことがあるなら早く言って……僕には時間が無いんですから」
え、じゃあ
「君は何の為に地獄を創った?」
「何で今更そんな事を聞くのですか?」
「いや、それしか思い浮かばなかったし……後……僕の弟? って聞くぐらいだし」
「昔から兄さんは凡骨でしたけど……記憶をなくしたとたん更に酷くなってしまって……本当に酷いですね」
酷い事を言われた気がする。
「罪を分ける場所でさえ、全てが黒く塗りつぶされた僕の視界に土足で踏み込んでくる人だから仕方ないか……」
酷いな
「この楽園にでさえ愛されることがない地獄と違ってに……箱舟は楽園に愛された」
「どういう……ことだ?」
「箱舟は楽園に帰る資格がある」
弟がそう呟いた瞬間世界が崩壊を始めた。
「なっ?!」
「黒の地獄と白の箱舟どちらが生き残るのかな?」




