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残されたもの

「階段がない?! うそでしょ?!」

雨宮がとびきり驚いた声をあげる。えーっとえーっとどうしようと思っている中

「死ネェ!!!」

真っ黒い生物が僕に襲い掛かってきた。

囚人君(ほるだーくん)!」

雨宮に庇われるように僕は攻撃を回避した。

「大丈夫?」

「一応……あれは一体」

「アレス君……」

真っ黒い生物に成り果てた|そいつ《アレスの背中から、ギョロギョロと蠢く目玉のついた羽、頭には黒い角、そして怪物のような両腕から血のように真っ赤な花が無数咲いていた。

「雨宮さんあれは……」

「まじか……」

雨宮は明らかに動揺している。張り付いた笑顔は消え焦りがみえる。

「雨宮……さ……」

「何故だ! アレス! 君は本当に竜人ドラゴンなのか?! それは……その姿は()()()()()()()()()()じゃないか!」

アレスは顔らしき部位をこちらに向けると、大きな赤い1つ目を開いた。

「我ガ貴様の様ナ半端者ニ、我ノ過去ヲ明カスト思ッテイルノカ?」

片言の言葉を話すその生物は雨宮にそう言った。

「仕方無い……()()を使おう」

雨宮は袖から何かを取り出した。

神の手帳(ゴッド・メモリー)

なんだそれ

「ちょっと昔に()()()()()()()()()()()()()

真っ黒い生物もといいアレスは黙ったまま

「これがあれば死人(だいたい)の人間の人生が分かるんだ」

雨宮は読む中途半端な男の話を……そして、しばらくすると雨宮は紙切れの束を袖にそっと戻すと

「なるほど」

真剣な目つきでアレスを見た。

「君の正体とついでに過去の事もわかったよ」

ビシッとアレスを指差すと

「君は光鳥(ひかりどり)に作られた竜人(ドラゴン)なのは間違いない……でも、竜人(ドラゴン)としての力は本来(オリジナル)の半分以下で」

なんかペラペラと語りだしたぞ

「えーっと……簡単に略したら?」

「アレスは光鳥(ひかりどり)の兵器で最強の動力源」

略しすぎじゃね?

「まさか君が本当にその兵器な存在していただなんて……」

雨宮ががっくりと頭を下げる。しばらくすると


「本当に笑えないよね?」


雨宮が顔を上げた。

「雨宮さん?」

すると、糸のように細い雨宮の瞳が開いた。

「本気出しますか」

雨宮の見開いた目は海より透き通った奇麗な蒼い色をしていた。

「いくよ」

雨宮は袖から長い棒状の物を取り出した。雨宮はそれを軽く振ると


「コリュウカゲミツ」


それは刀に変わっていた。

「さてと、アレス君でいいのか……アレス君、僕が本気を出す以上君も本気でかかってこいよ」

雨宮は刀を構える。

「ア?」

雨宮の口元が大きくにぃーっと笑った。

「僕より弱い君は直ぐに死なないよう頑張れよ」

「……誰ガ貴様ヨリ弱イダト?」

「えー? 君は僕より弱いじゃないか」

「黙レ!!」

アレスの咆哮が空間を満たす。

「わー怖い怖い……あははははは!!」

「何ヲ笑ッテイル?!」

アレスは声高らかに笑う雨宮に向って走り出した。


「死ネェ!」


雨宮の首筋に向かって大きく右腕を振りかざす

「ナッ?!」

「ほら、言ったとおり」

雨宮は一瞬でアレスの右腕を切り飛ばしていた。

「何故?! 何故ダ!」

今度は左手を振るうが雨宮には届くことなく

「言っただろ?」

雨宮のお別れの挨拶の方がずっとアレスより早かった。


「僕は君より強いって!!」


その瞬間何が起きたのかは分からなかったが一言で言うのならば

「一刀両断」

雨宮はその言葉に反応してかこちらを振り向く

「あ、ごめんね思ったより時間がかかっちゃった。本当なら一撃でしとめるはずだったけど……まあ流石アレス君だね、伊達に幹部最高戦力の名があるぐらいに骨があったよ」

雨宮の足元には、アレスだった者が真っ二つに割れて転がっていた。

「あの……雨宮さん」

「なーに? 囚人君ほるだーくん

「動きが早くて見えなかったんですけど」

「君は気にしなくていいよ⭐」

雨宮はそう言うと僕の後ろを1人歩き始めた。しばらく歩いている雨宮の様子を見ていると

「あったー!」

何かを見つけたのか子どものように雨宮は喜びだした。

「まさかとは思ったけど、階段の入り口を壊してたらそりゃ見えないよ」

僕も雨宮のそばに行くと

「わぁ」

そこには大きな黒い穴があった。そりゃ有るものも無いと思うよ

「まあ、次の階層も厄介なんだよなー」

雨宮の表情が鬱っぽくなった。それにしても雨宮が嫌う相手っ……あの蓮の花の妖怪並の奴がこれ以上いるのか……それにしても嫌いな奴多いな雨宮

「それじゃあ……君を突き落とすのもかわいそうだから」

「え?」

雨宮は

「先行くねー! 決心がついたら飛び込んでねー⭐」

黒い穴に飛び降りた。

「えー」

ぽつんと取り残された僕は

「うりゃあああああああああ!」

頑張って飛び出した。

「うわああああああああああ!! いやー!!」

そして中途半端者アレスの階層には


真っ赤な花だけが取り残された。

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