第9階層 中途半端な処刑場
1つの階層を進むごとに何かを失っているような気がした。気のせいなのか気のせいなのかは分からないが……いや、さっきから気のせいしかいってないぞ。
「ふんふ~ん♪」
雨宮の足取りの軽さに対して僕の足取りは重く感じた。ちなみにグレンは穴に吸い込まれてからというもの階段にいなかった。雨宮に聞くも
「大丈夫大丈夫キニシナイキニシナイ」
としか言わなかった。アレスは……
――――――
「アレス君? いいよ放っておいて」
「何でですか?」
「グレン君がいない以上運ぶのめんどくさいし」
「袖からデュラハンさんやシャルルさんといった魔物達に手伝ってもらうのは?」
「無力、みんなアレス君嫌いだから」
「えー……」
そう言えば……
「第5階層ではシャルルさんはアレスさん背中に乗せていませんでした?」
「チッ……気づいていたかー」
舌打ちしやがった
「影狼以外はアレス君と特性的に相性が悪いんだよねー」
相性があるのか
「後、みんなに手伝ってもらうのは結構疲れるんだよね……」
「え?」
「魔力食い潰されるのは困るからね」
――――――
って理由でうまく丸め込まれた気がするけど……
「どうしたの?」
不意に雨宮が立ち止まりこちらを向いてきた。顔近い
「なんでもないですよ」
「そうかな? 僕には君が思いつめた表情をしてるなーって思ったよ?」
なんだろう本当に雨宮は心でも読めるのか?
「心が読めるとか! 色々不明とか! そんな事よりも!」
雨宮はくるくると回転しながら階段を一気に飛び降りた。特に派手な音も立てずに残り約20段程あった階段を飛び降りた先には
「ようこそ! 第9階層 中途半端な処刑場へ!!」
茨と竜の装飾が施された巨大な鉄の扉
「じゃあ行こうか」
「雨宮さん」
「なーに?」
「ここは、誰の階層ですか?」
「入れば分かるよ」
雨宮は扉を開ける。その中にいたのは
「やあ、気分はいかがかな?
アレス君」
第8階層の階層で雨宮がわざと置いてきたアレスが真っ白い空間の中に立っていたのだから……




