第8階層 恐怖の支配者の砦
目の前には壊れた人形と嘲笑う雨宮の姿
僕はどうしたらいいんだ?
―――――――
市場から抜けると雨宮とアレスの幹部達が倒れていた。ちなみにグレンはピンピンしていた。
「こいつら気絶しているだけみたいだ。おい、囚人、俺がこいつら担ぐから手貸せ」
とグレンは幹部様達2名を僕の手助けありで、背負うと
「流石に重いか……雨宮かアレスの足を持ってくれ」
「はい」
それからしばらく階段を降りていると
「それにしても二人とも動けなくなるとか」
さっきまで気絶していた雨宮がけらけら笑っている。……起きた
「起きたなら降りろ」
「いやー彼が起きてるなんて珍しい事もあるんだね」
スルーされた
「そんなに珍しいんですか?」
「女帝程じゃないけど結構寝ている時間が多いかな」
「へえ……」
「あ、グレン君そろそろ降ろしてくれる?」
「さっき降りろって言っただろうが」
グレンから降りた雨宮は先頭を歩いている。
「そうだ囚人君」
急に振り向いた雨宮が袖から何かを取り出した。
「これ君にあげるよ」
雨宮が差し出してきたのは
「十字架?」
「お守りだよ⭐ 大事にしてね」
雨宮が前を向くと、視線の先には今までと違う雰囲気の扉が見えた。何ともまあ可愛らしい扉だ。
「彼女曰く、お兄ちゃんが作ってくれた人形小屋の扉だって言ってたなー」
……彼女? お兄ちゃん?
「まあとにかく行こう」
階段を全部下りると
「さて」
雨宮が扉に向って
「わん・つー・さん……と居るかな?」
3回リズム良くノックをした。
『誰だ』
扉の先から低い声の女性の返事が返ってきた。
「僕ですよー⭐ みんなの看守雨宮ハルヒ君ですよー⭐ 今なら安売りしていまーす⭐」
何の安売りしてんだ
『新手の詐欺か?』
相手も相手か
「違うって! 僕だよ! 雨宮ハルヒだよ!」
『貴様か雨宮ハルヒ』
「あーけー日向ちゃーん」
『断る』
「えー! それは困るよ!! 扉を開けてよ! こっちは囚人が2人もいるのに!」
『チッ……分かった。出来損ないもいるみたいだしな』
その言葉の次の瞬間ギィと音を立て自動で扉が開いた。ってか今舌打ちしたよねしたよね? 後、クズって言った。
「行こうか」
「はい」
僕達は扉を潜ると。
「おかえりなさーい!」
「おかえりー!」
「おそかったね!」
「……え?」
目の前にはクマやウサギ、ネコなどの無数の動物のヌイグルミが僕達に向って「おかえり!」「おかえりなさい!」と言ってくる空間が広がっている。
「なんだよこれ」
その異形な空間に僕は腰を抜かしてその場に座り込んだ。
「なんだよ……とは、全くもって失礼な囚人だな」
「え?」
僕の後ろ……扉の前に女性の声が空間に響く
「ようこそ……ここは第8階層 恐怖の支配者の砦……あたしの世界さ」
後ろを向くと、赤い看守の服……なんと言うか、花魁な着物にアレンジでも加えたかと言わんばかりの赤い看守の服に薄い紫の煙が出ている煙管を右手に持った女性が立っていた。




