北を目指して(?)森を彷徨う(?)
「北ってどっち?」
「バカだろ」
アレスの厳しいツッコミが入る。
「だって僕これの使いかた知らないもん! ……あ、おはようアレス君」
そういう問題?! 影狼の背中に乗ったアレスは呆れた表情をしていた。
「貸せ」
グレンが雨宮の手から磁石を奪った。
「……グレン君……君に方角が分かるの?」
「雨宮と一緒にするな」
グレンは適当に方位磁石をかざすと
「こっちだ」
指を僕の方に向けてそういった。
「本当にこっちなの?」
雨宮は悔しそうな表情をしているが少し引いている表情も混じっている。
「適当にふざけていってなーい?」
ぺしっ
グレンが雨宮の頭を軽く叩いた。
「いいか、北はこのNって書いてあるやつだ……つまり」
「うん」
なんか方角講座始ったよ?! 一応グレン囚人でしょ?! 雨宮看守の幹部でしょ?! いいのこれ?!
「この赤い針がNではなくEと書かれた方向に向いている」
「うん」
「つまりだ、このEと書いてある方角が今の北ってことだ!」
「おおー!!」
「なるほど」
アレスお前も知らなかったのか
「アレス君知らなかったの? だっさーい」
お前に言われたくないと思うよ雨宮さん
「よし! 行こう!」
「調子いいなぁ……」
僕がそうぼそりと呟いた瞬間
シュルッ
「ん?」
左足が何かに締め付けられている感覚がした。
「え?」
左足を見ると木の根が僕の左足を締め付けている。不意に体が宙に浮いた。
「えっ?」
「囚人君?」
雨宮が振り向くと同時に
「ああああああああああああああああああああああああああ!!」
ぶんっと僕は遠くに投げ飛ばされた。
「ああああああああああああああぁぁぁ!」
しばらく飛ぶと思考が止まった。そして
ぼすり
と音を立てて何かに突っ込んだ。
「痛い! ……あれ? そこまで痛くない?」
どうやら突っ込んだ落ち葉がクッション代わりになったようだ。全くもって痛みを感じない……周囲は相変わらずに森だが
「すー」
「え?」
声が聞こえた。
「……誰かいる?」
僕はその声がした方向に向った。
「すー……すー……んー」
やっぱり誰かいる
「ん……うん」
森の中を歩くたびに声が近づいているのが分かる。
「ん……すー」
そして森を抜けた先には
「え?」
小さな湖の中心に生えた大きな木の根元に誰かが眠っていた。
「女の子?」
僕は周囲を見渡した。後ろの森では木が生えてきているが、この場所だけはどうやら木が生えないようだ。そして
「あ、階段」
湖の横には階段の入り口があった。
「それにしても」
森といっても動物や虫の声も一切聞こえなかったけど……本当にこの場所の構造はどうなっているんだ?
「とりあえず」
僕は女の子の方へ近づくことにした。近づけば近づくほど少女の姿がはっきりと見える。身長より長い茶髪、触ったら折れそうなほど細い体に真っ白い肌の少女が寝息を立てて眠っている。
「入っても大丈夫かな?」
湖の深さがもしも、体がすっぽり入るくらいなら諦めて遠回りしよう
「そぉーっと……」
ぽちゃん
よかった湖の深さは大体僕の膝くらいか、僕はジャブジャブと音を立てながら女の子に近づく
「おぅっ?!」
一瞬何かに躓いて全身湖にダイブした。
「もう! なんだよ!」
あ、木の根か……
「それにしても」
女の子が起きる気配が一切しない
「逆にすごい」
という事が数時間前にあったんだ。
「本当に、何で起きないんだろう?」
寝息を立てて寝ている少女の顔を覗き込んだ瞬間
「あ」
目が合った。
「うわぁ?!」
驚いた僕は、そのまま後ろに倒れこんだ。ザッバーンと音を立て水飛沫があがる。少し乾いていたのにまた濡れた。
「……あははは」
笑い声の主はさっきまで眠っていた少女
「貴方、面白い人ね」
笑顔で笑う少女はとても楽しそうだ。さっきまで閉じていた目を見るといっぺんの曇りのない真っ白い瞳をしていた。
「あの」
「なーに?」
「貴方は……」
「私はここの階層主、スリープ・ノンレム・レムよ。よろしくね」
まさか彼女が……階層主?
「貴方は誰?」




